片恋●夢で会えた
ベッドの端が軋む。薄い重みが、ぼんやりした影を連れて現れる。
白が幾筋も混じりだした黒髪。目尻の優しげで、けれど厳しく彼を見せる皺。乾き気味の薄い唇。
まぶたの下の、瞳。
低い温度の指先が俺の髪を、猫でも撫でるようにそっと撫でる。
手を伸ばしたいのに伸ばせない。
動けない俺の代わりに、彼はゆっくり動き出す。やわらかく、ほんの一瞬触れるだけのキスを、俺の頬にするために。
タイマーをセットしたコンポから、『運命』が流れ出して、俺は自分で自分に殺意を覚える。
悪い目覚めではないけれど、良い一日になるとは思えなかった。
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