[携帯モード] [URL送信]
片恋●笑顔は伝染る


 笑う事を彼は知らないように思えた。
 白っぽい金髪。尖った黒の視線。その唇が吐くのはぶっきらぼうな言葉。服はいつも黒を好んで着て、他人を拒むような雰囲気を常にまとっていた。
 学生とは思えない位に音を操る彼を、どれだけ褒めてもにこりともしない。平坦な声で
「ありがとうございます」
 と言うだけだった。

 今、堂々と一曲を振り終えた彼はステージを降りて花束を受け取ると、不遜で、けれども猛々しく鮮やかな笑みで応える。
 そして老いた私の手を、彼は取る。
 私はただ彼を独占したいが為に、微笑みながらその手を振り解く。
 彼はその瞬間、私の為だけに微笑する。



[♭][♯]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!