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じれったいのよ。

 そこに、愛があるような気分になるのがおかしくて、雨池は自嘲じみた笑みを浮かべる。
 余裕ですね、と黒岩が少しだけ笑った。
「俺は、余裕なんて無いのに」
 膨れあがった熱を握り込んだ手が一旦離れて、硬くなった黒岩自身を、着替えずに眠ったスーツのパンツから引きずり出した。
 その光景に、腰が引けた雨池に黒岩は小さく笑う。
「無理矢理突っ込んだりしませんよ。言ったでしょう。
───優しくするって」
 腰を近付けて、二つの性器を擦りあわせる。
「あ…っ」
 熱い、と感じる。無意識に身体が逃げようとするのを押さえられて、貪るようなキスを受ける。
 一緒くたに握り込まれた互いの熱が、ただそこで溶け合う。
 ベッドのスプリングが、二人分の重さに抗議するように軋んでいる。
「あ、っや、…っ」
 まとわりつく。渦を巻く。
 二人を取り巻く空気が、重く、熱く、甘い。
「だめだ、…黒……っ」
 快感が滲む抗議の声は、ことごとく口づけに吸い取られてしまう。
 濡れた音が耳につく。
「や、あ、あぁ…っ」
 口をふさぐ間も、唇を噛み締める余裕もない。耐えようとする唇から、それでも甘い声が零れ、すがりつくつもりはないのに、黒岩の背中に回された手に力が入る。
 新しい快楽を覚えさせられた胸を大きな手が撫でて、雨池は震えて背中を反らせた。
 全身に渦巻く熱が高まって、出口を探している。
 朦朧とした表情の雨池が、おかしくなる、と悲鳴のように口にする。黒岩は、腰の辺りにわだかまる暗い欲望に顔を歪めた。
「ひ、あ…っ、あ…」
「───修司」
 低く囁いた瞬間、びくびくと震えて雨池が白濁を吐き出した。
 追いかけるように黒岩も達する。余韻に波打つ雨池の腹に、二人分の精が零れた。
「…くそ……」
 小さく呟いて、はぁはぁと忙しく息をしながら雨池は目を瞑る。同じように荒い呼吸が、耳元からゆっくり離れる。
 達した後の顔に黒岩の視線を感じて、雨池はうっすらと目を開けた。黒岩は目をすがめるように細めて、微笑を浮かべる。
「───収まりませんね」
 言いながらまた、甘ったるいキスをするために顔を寄せる。
 長い指が、まだ芯を残している雨池に絡みついて撫で上げた。ひくりと震えた雨池に、黒岩は低く囁く。
「…続けますか?」
 雨池はほんの一瞬躊躇し、熾火(おきび)の残った広い背中に、かすかに爪を立てて、自ら口づけをねだった。







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