[携帯モード] [URL送信]
くすりのじかん



 測定。
 採血。
 問診。
 嵌め殺しの窓から見るだけの青空が高くて、秋の色をしている。
 朝食。
 また測定。
 そこでやっと、病的に白い顔の医者が現れる。
「今日は良く眠れたようだ」
 いやに整った顔に色素の薄い麦色の髪が、医者を日本人には見させない。
「夢見は最悪だったけどな」
 青年の皮肉な笑みに医者は答えないまま、聴診器を取り出して、パジャマの前を開けるように言う。
「───心音、肺音、共に異常無し」
 医者はぼそぼそと独り言のように言って、カルテに何か書き込んだ。
「何か必要なものは?」
 青年の足の方から、初老の医者が柔らかな声で訊いた。青年は部屋を見回して、
「ラジオかなんか、欲しいんですけど。クラシックには飽きてきたから」





[≪][≫]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!