[携帯モード] [URL送信]
ダイヤモンド

「命、起きろ。いつまでも寝てんじゃねえ」
 午前八時。
 容赦なく蹴り起こされて、命は不満そうに呻いた。
「うぅ…朝からなに?その愛のない台詞は…」
「黙れ。優しい俺に感謝しろ。ったく、夜遅くまでSMのAV見やがって」
「見てないよ!名誉毀損で訴えるよ!」
「あーもう、うるせえな朝から。響くんだよ、お前の声は」
「飲み過ぎじゃないの」
「いいかげん黙らせるぞ」
 第一番都市中央軍事高等学校、学生寮の朝はいつも騒々しい。
 特に、暁と命の部屋は、寝起きの悪い暁と寝汚い命の言いあいから、さわやかとは程遠く一日が始まる。
「おはよ、討」
 人の少なくなった食堂で、腐れ縁の友人に声を掛ける。
 ひどく薄い青の視線をちらりと投げただけで、黒々としたコーヒーを啜る。いかにも不機嫌そうな討の隣りに座り、遠慮なく言う。
「なに朝から仏頂面してんの」
 見ているだけで胃にきそうな黒いコーヒーから目を反らし、命は朝食を平らげにかかる。
「…別に」
 低い声が短く答える。
「相っ変わらず反応鈍いよね。まだアタマ寝てんの?」
 早口で言いながら、食事を運ぶ手は止めない。討が眉間に皺を寄せて立ち上がった。
「ちょっと、討。置いてかないでよ、寂しいじゃん」
「……命」
 サラダを一気に口にした命が、キャベツの千切りを口から少しはみ出させながら、ん?と答えた。
 討は腕時計を見ながら溜息を吐いた。
「八時四十分だ。お前を待ってたら遅刻する」






[≪][≫]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!