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トランス

「私を侮辱するのか!」
 激昂して、女将軍は立ち上がった。
「第二隊が第一隊に生意気な口を───!」
 高間原は唇を歪めて笑った。



「やめないか、若都」
 国王が、柳眉を寄せてそう言った事で、女将軍 若都は大きく息をして、席に戻った。
「私の前では、争ってくれるな。私はお前たちに同じように、平等に期待しているのだ」
 凛とした声と深い黒の瞳。若都はぐっと言葉を詰まらせて、高間原を睨み付ける。
 主戦力部隊の暁国軍は第一隊と呼ばれ、他隊はその人数に応じて第二、第三と呼び分けられている。
 そして、第二隊、陸軍特殊部隊司令官の高間原は、少数精鋭、皇宮警護隊の一員でもあった。
 若都は貴族の出身で第一隊の最高司令官だが、非嫡子で尚且つ出自の知れない高間原を毛嫌いしている。
「閣議は終了だ。若都」
「はッ」
「…お前の働きには期待しているよ」
「ありがとうございます。御為に、必ずや白国を打ち破るとお約束致します」
「ああ」
 若都が下がったその後に、すう、と影の様に高間原が現れる。王はその鋭い銀の瞳を見上げて、ただ一言。
「離宮へ行く」
 かしずく高間原は薄く笑んで、はい、と答えた。





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あきゅろす。
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