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King of Hearts

 街は朝の静寂に沈んでいる。
 どこかで、白々と明ける空に鳥が鳴いている。
「リタ、今日も毟り取られたの?」
 間延びした声に顔を上げると、褐色の肌に黒々としたアーモンド型の瞳。ベージュの唇が笑う。
「まりあ、おはよう。今何時?」
「七時すぎ。朝ご飯食べる?」
「食べる食べる」
 目玉がふたつと、ベーコンと、千切ったレタス。オーブンレンジからバターロールが出てきて、まりあがバターを塗りたくる。
「コーヒーはいかが?」
「ミルクだけちょうだい」
「リタ、昨晩は?」
「別に毟られて無いよ。五万の勝ちだもの」
 フォークの先から、ベーコンが消える。
「まりあ」
「リータ、そんなに勝ったんなら着飾って三ツ星レストランにでも行けるじゃないの」
「まりあ、まりあのご飯が一番おいしいんだよ。ベーコンちょうだい」
 笑いながらまりあがベーコンを噛み千切る。
 古い煉瓦の町並みに、高層ビルの窓が反射する太陽の光が降り注ぐのが、まりあの部屋の窓からは見える。
「リタ、花に水をやってよ」
 まりあは歌う様に言う。




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