ロスト・チャイルド
愚かな子。
愚かな子。
抱き締める術も知らぬとは。
だって力を込めたら壊れてしまうよ。
だってこの手は大き過ぎて、あの子の体は小さ過ぎるんだ。
街に陽が落ちる。
小さな格子窓の影が空ろな灰色の瞳に映る。
町バトが軒下や家々の隙間の我が家に帰って行く。
「ローチ」
黒々とした長い睫毛がぱちぱちと動いて、灰色の瞳がドアに向く。
「アレクセイ・ジュダス」
「そうだよ、ローチ。アレクが晩飯を持って来た」
「晩飯」
「そうだよ」
街に陽が落ちる。
[≪][≫]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!