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雀 前編

 白い頬を転げ落ちた雫が、一つ、二つ、服の上にシミを作る。
ジワリと広がるそれを眺めて、僕は小さく息を吐いた。



【雀】



「ねえ、いつまでそうして泣いているつもり」

 小学四年生になったばかりの妹は、小さな肩を震わせながら、しゃがみ込んで、先程からずっと泣いていた。
その足元には、随分前に冷たくなった茶色い小鳥。雀の死体だ。
そろそろ二人で庭に出てから、一時間近く経とうとしている。

 それが家の窓にぶつかってきたのは、三日前。脳震盪を起こして気絶していたところを保護したのは僕らだ。
 特に妹は、初めて身近に見る小さな生き物に目を輝かせ、手乗り雀にするんだとか、はしゃいでいた。けれど、残念ながらその計画は実現する前に終わりを迎えた。
 今朝、死んでいたのだ。
突然に籠の中で、羽を閉じたまま床に転がって。


 一体何があったのか。動物に詳しい人間のいない僕らの家族は、誰も分からなかった。
 とにかく埋葬だけはしてやる事になって、その役を任されたのは最初に見つけた僕ら兄妹。自分たちが保護したのだから、最後まで責任を持て、ということらしい。筋が通っていると僕は思ったし、だからこうして庭の隅に穴を掘ったのだ。

 けれど、その小さな窪みはいつまでも空のままだった。

 途切れ途切れに泣き声が続く。
硬くなった小鳥を前にして、いつまでも妹が泣きじゃくっている。
どうして、とそればかりを繰り返して。

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あきゅろす。
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