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ごみが無造作に散乱する高架線の下で、僕は一枚の地図を拾った。

薄汚れたそれは、元は白紙のノートに書かれた、小学生の落書きのようだった。

 『××小学校』

そこは、僕の母校だった。





午後三時過ぎ。
頭上を電車が通過した。轟音の先には、コンクリートの物影と空が見える。
それは、薄汚れた、辺りに散らばる新聞紙のような曇り空だ。

 
何と無く憂鬱で、急ぐ用事がある訳でもない。

拾ったしわくちゃな地図は、小学校の見取り図と、そこまでの行き方で、校庭らしき茶色の囲みの隅には、赤いペンで塗りつぶした丸が書いてあった。

暇つぶしには丁度いいだろう。

 僕は小学校を卒業と同時に、家を越していた。
 思いついて、久しぶりに歩く通学路は、青色のランドセルを背負った少年が、歩いていた。


確かに記憶と同じ場所に、僕の母校は在った。

ただし、かなり変わったようだ。
正門の前には警備員が二人立ち、次々と下校する生徒たちを見送っていた。
校舎も塗り替えられ、体育館の位置も違う。



どうせなら、校舎内も見て回るつもりだった。
が、なんとなく、正面からは入りにくく、裏口はどうかと、道なりに沿って行けば、しかし、そこにも遠目に警備員の姿を発見する。

なぜか物陰に隠れながら、僕はこれでは、不審者になってしまう、と焦った。

堂々と卒業生と名乗って、入ればよいのだ。

しかし、気持ちは萎えていた。
第一、顔見知りの先生など、一人も残っていないだろう。

ただ、この地図に書かれた、赤い印のある場所が気になった。それだけだ。どうせ子どもの遊びだ。

自分を納得させ、僕は小学校に背を向けた。




いつの間にか、背後には先程すれ違った、青いランドセルの少年が立っていた。

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あきゅろす。
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