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短編小説
6:午前一時の約束 ※
“今日、夜電話するから起きてろよ”

帰り際、そう遥から告げられた言葉に、翔太は素直にこくんと頷いた。

 塾があるという遥と駅前で別れた翔太は、その時は何とも思わなかったのだ。

むしろ嬉しいなどと思っていたのだが、しかし。

家に帰ってほっと息を吐いて、自分の部屋で学ランを脱いだところではっとした。

どうして遥はわざわざ“電話をする”と自分に言ったのだろうかと。

 付き合い始めてから今までも何回か・・・いや何十回も電話をしたというのに、そんなことは一度も言われたことはなかったのだ。

もしかしてもの凄く大事な話をされる、とか。

ああ、きっとそうに違いない。

そして別れを切り出されるんだ。

 どこか思考が極端な傾向にある翔太はそう自己完結すると、ばふんとベッドにダイブする。

その衝撃に枕が跳ねて下に落ちるが、それに構っている余裕は今の翔太にはなかった。

「(どうしよう・・・俺。何した?遥に嫌われるようなこと・・・)」

 ぐるぐると今日の出来事を思い出してみるが、遥はいつもの翔太をドキドキさせる笑顔で笑っていたし、それに。

「キスもした」

のだ。

それはもちろん翔太からではなく、遥からで。

「(はっ!もしかして俺の口が臭かったとか!?)」

 もしかして、と顔を上げた翔太は手で自分の口と鼻を覆うようにすると、はぁっと息を吐いてみる。

しかし特にニンニク臭いだとか、そういうことはなく、さっきまで噛んでいたミントのガムの匂いに混じって遥の吸っている煙草の匂いが仄かにしただけだった。

それにキスをしたからだ、と気付いた翔太の顔はみるみる内に赤くなり、慌てて周りを見回すが、そこは自分の部屋。

よく姉がズカズカと入り込んでくるが、今日はまだ大学から帰ってきていない。

「でも、だったら・・・」

 他に思い当たることのなかった翔太は首を傾げるが、キス・・・のあとに何があっただろうということを思い出して、またボッと顔を赤くした。

そうだ、そのままキスが深くなって、気付いたら屋上のコンクリートの床の上に押し付けられていて・・・。

体に触れてくる遥に1度だけ小さく身じろいだが、その欲に濡れた目で見つめられたら何も出来なくなってしまった。

 翔太と違って器用に動く遥の指は簡単にベルトをズボンから抜いてしまうと、ボタンとファスナーなんてものともせずに翔太の下着越しにオスに触れてきて。

しかし小さく声を上げたところで予鈴が鳴ってしまい、どうするのかと下から見つめていれば、ガシガシと頭を撫でられてにっこりと笑みを向けられた。

「授業サボりたくないんだろ?」そう優しく尋ねてくれる遥に、憧れていた大人っぽく優等生な彼とは違う・・・でもそれよりも好きになっている“素”の遥が嬉しくて、自分のことを思ってくれる遥の気持ちが嬉しくて頷いたのだが。

「(もしかしてそれがダメだったのか・・・?)」

 遥はそういう気分だったのに、自分は遥より授業を優先するような奴だから・・・。

と、完全に自己嫌悪に陥ってしまった翔太はうんうんと唸りながら・・・しかしそれはいつしか寝息へと変わっていっていた。



「ん・・・っ」

 翔太の目が覚めたときには既に日はとっぷりと落ち、それどころか家中が寝静まっているかのように静かで。

はっとしてベッドから飛び起き、部屋の電気を点けて壁にかかった時計で時刻を確認すれば日付はもうとうに変わってしまっている時間だった。

どうして誰も起こしてくれなかったんだろうと夕飯も食べていない翔太は、しかし寝起きのせいで食欲はなかったので、文句を言うのは止めようと思いとどまる。

 とりあえず風呂に入って寝ようと思い、しかし家族全員が寝てしまっているなら翔太にそれは不可能だ。

なぜなら制服のズボンのベルトと、ボタンを外してくれる人がいないから。

やっぱり何で起こしてくれなかったんだ!と、もう既に夢の中の彼らに怒りをぶつけるが・・・何か忘れているような。

 うーんと首を傾げて、寝てしまう前のことを思い出して・・・さぁっと顔が青くなっていくのが分かる。

「で、電話!!」

遥は夜に電話するから、と時間は告げられていなかったが、この時間ならもう掛かってきていてもおかしくない。というかそれで普通だ。

遥の塾が何時に終わるのかは知らなかったが、多分自分は遥の電話に出れなかったんだろうと溜め息を吐いて、とりあえずメールで謝罪しようと学ランのポケットに入れっぱなしだった携帯を取り出した。

 が、恐る恐る開いた携帯には不在着信1件どころかメールの着信さえない。

あれ?と思い、ああ・・・でももう電話もしたくない程なんだと勝手に解釈した翔太はそれをすぐに閉じて。

しかし次の瞬間震えだした携帯に、翔太は慌ててそれをもう一度開いた。

「遥・・・」

 ディスプレイに表示された“高遠遥”の文字に、知らず携帯を握る手に力が籠る。

しかし、このままそれを見つめ続けていても通話が出来る筈もなく、翔太は渋々通話ボタンを押した。

「・・・もしもし」

『あ、翔太?よかった!思ったより塾の時間が長引いてさ、終電ぎりぎり。今家帰ってきて即効翔太に電話したんだぜ』

 電話越しに聞こえてくる遥の声は明るいもので、変に緊張していた翔太は拍子抜けしてしまう。

「俺も・・・さっきまで寝てたし」

でも、きっとこの前振りのあと言われるのだ。

遥は見かけ通り優しいから、別れるときまで俺に気を使って・・・とネガティブ思考真っ最中の翔太は固い口調でそう返す。

『ああ、じゃあ調度よかったんだ。でも、俺電話するから起きててって言ったのに・・・』

だがそれを失言だったようで・・・翔太は続けられる言葉の衝撃に耐えるように目を瞑った。

『って嘘だよ。もう1時だろ?普段こんなに遅くまで起きてないだろ?』

 ・・・あれ?

続けられた遥の言葉は翔太を気遣うもので、その言葉にぶんぶんと首を振ってみせるが、生憎これは電話だ。

「だ、大丈夫・・・だ!」

『フフ、声が眠そうだけど。寝起きだからかな?・・・翔太はさ、今どこにいるの?部屋?』

慌てて返事を返せば、電話越しに笑い声が聞こえてくすぐったい。

 遥からの話はどうやら翔太が危惧していたようなものではなかったようだが、結局用件は何だったのだろうか。

わざわざ言うくらいだから・・・と気にしていたのだが、本当にただいつものように取り留めもない話をするためだったのか?

しかし翔太は考えることを放棄すると、電話越しに聞こえる遥の声に耳を傾けることに集中した。

「・・・うん、そう」

『そっか。確かひとり部屋だったよね?あ、さっきまで寝てたって言ってたけどもうお風呂には入った?』

「あ・・・帰ってからずっと寝てた、から・・・まだだ」

『え!?そうなの?じゃあご飯も食べてないよね?だったら今日はもう止めにしようか』

 最近はずっと砕けた調子で話してくれてたというのに、また以前の丁寧な言葉遣いに戻ってしまった遥に疑問を感じながら、しかし告げられた言葉に慌てて声を上げた。

「だ、大丈夫!だって」

『本当に大丈夫?無理してない?』

「俺・・・遥ともっと話したい」

『僕もだよ、翔太。やっぱり可愛いくて堪らないよ・・・。会って、抱き締めて、キスしたい』

「は、る・・・っ!」

スピーカーを通して聞こえてくる遥の声はいつにも増して色っぽく聞こえ、翔太の顔は真っ赤だ。

『翔太は僕とキスしたくない?それから・・・もっと先のこと』

「・・・!?」

『フフ、多分翔太は今すっごく真っ赤な顔で俯いてるんだろうね。耳まで真っ赤で・・・今すぐしゃぶりつきたいよ』

 ちゅくっという濡れた音が携帯を通して翔太の耳に聞こえ、実際に舐められたわけでもないのに背中がぞくぞくとしてしまう。

「・・・っ、ぁ!」

思わず小さく漏らしてしまった声は遥にも聞こえたのか、クスクスと笑われて、翔太は恥ずかしさに増々俯いてしまった。

『翔太はどこもかしも敏感だから・・・。もしかして僕の声だけで勃起しちゃった?』

 そしてあからさまな台詞を吐く遥に、言われた瞬間オスがぴくっと反応したのが分かった翔太は、それに何も返すことが出来ない。

「・・・」

『あれ?もしかして・・・』

「う、うるせ・・・っ」

心底驚いたような遥に翔太は悪態を吐くと、きゅうっと片手で反応しかかっているオスを握りしめた。

『そっか。じゃあ一緒だね。僕も・・・翔太の声聞いてるだけで勃起しちゃった』

「!?」

しかし思いもしなかった返答をされ、翔太は驚きに思わず携帯を落としてしまう。

慌ててそれを拾い上げると、音で分かったのか、遥はクスクスと楽しそうに笑っていた。

『驚いた?でも、いつだって僕は翔太のことばっかり考えて、頭の中で翔太を犯して、それをおかずにしてるんだよ』

 その熱を帯びた声は翔太の鼓膜から入り込み、脳内をまるで愛撫されたかのような錯覚を催す。

そして初めて聞く秘められた劣情に、知らず体が熱くなっていくのを感じていた。

「・・・っ」

『そうだね、まずシャツを脱がした後、それで抵抗できないように両手を縛って・・・翔太の筋肉質の胸が柔らかくなるくらいまで揉んであげる』

「遥・・・っ、やめ・・・」

『そう、そうやって君は嫌がるんだけど、本当は嫌じゃない』

「ぁ・・・、んっ」

『一緒に小さな乳首が痛くなるほど摘んで、指で潰して、引っ張って・・・』

「い・・・っ!」

 電話越しに言葉だけだというのに遥に犯されているような気分に陥った翔太は、知らずシャツの中に入れた手で自ら乳首に触れ、しかしそれは翔太の手ではなく彼の中ではそれは遥のもので。

「くぅ・・・んっ」

子犬が鳴くような声を上げる翔太に、遥は笑みを深くする。

『気持ちいい・・・?』

「ぁ・・・、遥」

『ん?』

「触って・・・くれ」

『どこに?僕は今翔太の胸に触れてるでしょう?』

「違・・・、そこ、じゃない」

『翔太は欲張りだね。じゃあ、ズボンを下ろしてみようか』

そしてそう提案したところで、翔太の困ったような声が返された。

「ダメ・・・だ、俺・・・」

『触って欲しいって言ったのは翔太だよ?』

「違・・・くて。俺、制服のズボン履いたまま、だから・・・」

 遥が下ろしてくれ。という翔太のお願いに、今すぐ彼の家まで走っていって、非常に色っぽいことになっているだろう翔太のズボンを乱暴に脱がして・・・と思考が危ないところにいったところで、どうにか現実世界に戻ってきた遥は今度はどうしたもんかと首を傾げる。

しかしそこは頭脳明晰な遥のこと。

こと、それが翔太のこととなれば更に回転速度が増す頭脳に遥は我ながら感心していた。

『翔太、ちょっとだけ待てるかな?』

「・・・無理」

『お願い。ほんの数秒だけだから、ね?』

「・・・分かっ、た」

 遥にお願いと言われれば断れる筈もなく。

ありがとう、と遥が告げた瞬間通話が切られ、翔太は体に熱を持て余したまま変に頭が冷えてくるのを感じる。

しかしこちらも通話を切ったところで再び携帯が震え、今度は相手を確認しないまま電話に出た。

「遥・・・っ」

『あ、翔太真っ暗。携帯耳から離して画面見てみて』

 名前を呼ぶ翔太に、いくらか砕けた調子の遥からそんな風に言われ、首を傾げながらも携帯を耳から離す。

そういえば先ほどよりも音が大きいような気がする。

「あ・・・」

半信半疑ながらも言われたとおり携帯のディスプレイを見れば、そこに映る遥の顔に翔太は目を見開いた。

『それじゃドアップすぎて翔太の顔、見れないじゃん』

 ビックリする翔太に遥は笑うと、携帯を床に置くように翔太に指示を出す。

それに慌てて携帯を床に置けばキチンと映ったのか、遥からはOKサインが出された。

「遥」

『ん、そこからでも聞こえる?ちょっと画質が荒くて見え難いけど。翔太・・・やっぱり凄く色っぽい顔してる』

 初めてするTV電話というものに戸惑いながらも、声だけよりやはり顔が見える方がいい。

微笑む遥に翔太はかぁっと顔を赤くすると、それを反らしながらもチラリと視線だけで遥を見ることは忘れなかった。

『何、可愛いね。それに・・・僕に触られているの想像して自分で触ってたの?シャツがめくれ上がって赤い乳首が丸見えだよ』

 そんな遥の指摘に翔太は慌てて服を元に戻そうとが、遥はそれが不満らしい。

『翔太、全部見せて』

「・・・遥っ」

中途半端な状態で手を止めてしまった翔太は、上げることも下げることも出来ず、困ったように眉はハの字だ。

『翔太』

促すように甘い声で名前を呼ばれ、でもやっぱり・・・と暫く逡巡した結果、羞恥に震える手で捲り上げられるシャツ。

そんな翔太に遥は満足そうに微笑むと、突然画面の中からいなくなってしまった。

「遥!?」

 慌てて身を乗り出す翔太に、遥はまるで見えているかのように笑うと、少しだけ顔を見せる。

『僕がちゃんと翔太のズボン、脱がせてあげるからね』

そうしてにっこり笑った後、映ったのは遥の股間部と細長い指をした手。

『見えてる?』

アングルからして携帯で上から映しているのだろう。

なんだか遥の視線でそこを見ているような気分になって、翔太は更に心拍数が上がるのが分かった。

「ん・・・」

『ほら、ズボン越しでも分かるでしょう?翔太のここも僕と同じようになってるんだよね。苦しい?』

「う、ん」

『僕もだよ。ほら、じゃあ一緒にベルトを外してしまおう』


 まるで勉強を教わってるときのような口調で話す遥に、翔太も素直に従うと、なんだか頼りない手付きでベルトに手を掛ける。

『まずズボンのこの穴みたいなところに入ってるのは取れる?』

「ん、出来る」

『それが終わったら右手でこの垂れてる部分を持って、そう。そのまま右側に引っ張るんだ。そしたら金属の針みたいなのがちょうど外れるから左手でそれを左側に倒して・・・あとはこのバックルに通ってる右側のベルトをそこから抜けばOK』

実際に遥目線でベルトを外しながら教えてくれるので、翔太は今まで出来なかったのが嘘のようにするりとベルトが抜くことが出来たのだ。

「・・・取れた!」

 感激しながら声を上げれば、電話の向こう側からも嬉しそうな声が聞こえてくる。

『本当?じゃあ今度から1人で出来るね』

「遥、が一緒じゃないと・・・無理、だ」

しかし返す翔太の言葉は弱気そのもので、しかし遥はそんな翔太がいじらしくて可愛い。

自分がいないと何も出来ないと言う翔太に密かに悦びを感じている遥は、見えないことをいいことに人の悪い笑みを浮かべると、すっと自分のオスに触れてみせた。

『ふ・・・、翔太がそんな可愛いこと言うから、ここがもうはち切れそうだよ』

 そのまま指で形をなぞる様にする遥に、翔太は自分も触られているような感覚を覚え、ぶるぶるっと体を震わせる。

「は、遥・・・っ!俺、もう・・・っ」

ズボンの前を押さえたまま前屈みになった翔太は、でも快感に潤んだ目を携帯から逸らすことは出来ない。

携帯の画面の中では遥がズボン越しに自分のものを撫でていて、しかしついにはその指はボタンを弾き、ファスナーを下ろして、下着を下ろせば既に猛ったオスが画面に大写しになった。

『はぁ・・・、翔太・・・この音聞こえる?』

 えらの張った遥のオスは体に見合う大きさ、太さを持ってして、何の支えもなく天を向いている。

先端は既に先走りで濡れ、遥が指先で触れるたびくちゅっという濡れた音と、離すたびにそれが糸を引くように伸びて凄くいやらしい。

「あ、あ・・・あっ」

『翔太?』

それを目の当たりにした翔太は半開きの口の端から涎が垂れるのも気にならないほど興奮してしまい、布越しの窮屈な状態のままオスを両手に擦り付けていた。

 自分のオスを映していたせいで翔太がどんなことになっているのかが音声のみでしか分からなかった遥は、切羽詰った様子の彼に携帯の画面が自分から見えるように持ち直す。

『・・・っ!』

そこに見えたのは前屈み・・・というより四つん這いの状態を両手の代わりに肩で自分の体を支え、床に置いた携帯に潤んだ目を向ける翔太の姿で。

遥は思わず携帯に顔を近づけると、もっと細部まで見ようと目をめいいっぱいに広げている。

「遥・・遥・・・ぁ」

限界を訴えるように自分の名前を呼ぶ翔太に遥はごくりと唾を飲み込むと、今までの冷静な声が嘘のように上ずった声を上げた。

『翔太・・・っ、そこのベッドに凭れて携帯に向かって足広げて・・・そう!』

 と必死な遥はもう、ただの変態だ。

「も、俺・・・出る・・・っ」

『す、ストップ!!!!』

「無理・・・っ、く・・・あっ!!」

 ベッドに凭れた状態でぶるぶるっと体を震わせ射精したらしい翔太に、携帯の向こう側で大声を上げた遥はガックリと肩を落とす。

―――翔太が精液飛ばすところ見たかったのに。

という遥は、しかしすぐに何かをひらめいたらしい。

『翔太!今からボタンの外し方教えるからパンツ下ろすところカメラで大写しにしてくれ!』

 パンツとオスの間で吐き出した精液がねっとりと糸を引くところが見たいんだ!と力説する遥に、翔太は健気にも手を動かそうとするが、気持ちとは裏腹に体はついていかず・・・。

『その後は下半身裸で、シャツはそのままもっかい俺の言葉攻めでオナニーして・・・って翔太!?翔太〜!?』

「ん・・・んー」

そのままスースーと寝息を立て始めた翔太に、遥は携帯に向かって声を上げるが目が覚める気配がなく。

しかしそれ以上の大声を翔太が上げるのは、夜が明けてからのことだった。

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