平凡と俺様
掌で熱をはかる(虎+龍)[2周年]
【Attention!!】
2周年記念!ということで日頃の感謝の印といってはなんですが「キュンとくる10のお題」に沿って記念小説を書かせて頂きました。
少しでも皆様に楽しんで頂ければ光栄です。
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01 掌で熱をはかる(一虎+双龍)
日頃からおかしいおかしいと思っていたが、今日はいつにも増して…。
「キモい」
「…っ!ふえぇぇんっ!」
…弟がキモい。
思えば先程生徒会室に来たときから奴はおかしかった。
◇
「兄ちゃあん…っ!」
高校生にもなって情けない。
泣き声と共に現れた弟に呆れながらも律義にドアの方を向けば、馴染みのある子供っぽい甘い香りと重みに俺は膝に乗り上げられたことを瞬時に悟った。
「っ!?痛いよぉ!」
と、同時に当然突き落としたわけだが。
「双龍…何だ。小さい子供じゃあるまいし、高校生にもなって子供みたいなことしてんじゃねえ。ったく、たまたま俺しかいなかったからよかったものの…今度やってみろ、どうなるかその足りない脳みそでも分かるだろ、ん?」
「…ん」
「………………で?どうした」
何だかんだ言いながら俺も甘い。
「あのね、寂しくて、それでね」
話してみろと仕事の手を一旦止め、きちんと向き合ってやれば何てバカバカしい内容だろうか。
その歳でホームシックかよ、と大きく溜め息を吐いてやれば、大袈裟なほど弟の小さな肩が揺れる。
「にぃたん!そうちゃんね!だからね!」
は?コイツ馬鹿じゃねえか?
小さい時のように俺を呼び、更には確か小学校に上がる前に直した一人称で自分を呼ぶもんだから、鳥肌が立ったのは仕方のないことだろう。
何だコイツ、変なもんでも食ったか。…馬鹿だからな。
「拾い食いをするなと小さい頃散々言って聞かせたよな?ん?」
さて、この大馬鹿者をどんな風に懲らしめてやろうか。
自然と浮かぶ笑顔のまま顔を近付けてやれば…珍しい。
いつもは恐怖で引きつるはずの弟の顔は先程までの情けないものから一転、みるみる笑顔になって、逆に
「キモい」
ものすごく気持ち悪い。
と、冒頭へと繋がるわけだ。
その俺の言葉を受けて子供のようにぴいぴい泣き出した弟は正直面倒臭いの一言に限る。
しかも昔から俺があやさないと泣きやまないのだから、本当に手の掛かる弟だ。
高校生にもなって、本当に…。
「…まったく」
「にぃちゃ…っ!うえっ、ふぇえっ」
泣かされた原因が俺でもやっぱり縋るような甘えた目を向ける弟に、もう溜め息さえ出ない。
「…ぶっさいくな顔」
涙でぐしゃぐしゃになった顔に思わず笑ってしまって、掌で引っ付いた前髪をかき上げてやれば、すぐに泣きやんだ弟よりもその額の熱さに驚いた。
「双龍!?」
「なぁに?」
ぽやんとした普段の機関銃のような喋り方とは正反対のそれと、トロンとした目。
よくよく見れば顔は真っ赤で…。
「お前!…バカか!熱があるなら初めからそう言え!」
「んう?」
髪をかき上げた手はそのまま、異常に熱い額は自分のそれを確かめるまでもないが、思わずやってしまうのは15年の兄スキルの賜物だろう。
「ふぅうっ!にぃたん、しゃむいっ…」
ああ!もう!本当に手が掛かる…!
熱が上がっているせいで寒いのだろう。
暖を求めるように首に手を回してきた弟をそのまま抱き上げ、これから来るであろう他の生徒会役員達に置き手紙を書くためにペンを走らせた。
fin
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●おまけ●
「おつかれー」
「おつかー。弟くんもう来てる〜?今日はぁついにラスボス…ってあれえ?」
「あ、葉山先輩に美作先輩。お疲れ様です。ちょうどよかった」
「うん?今日は鈴木兄弟仲良しさんだねえ」
「…びっくりしたー。どうした?双龍くん、寝てる?」
「ああ…このバカ熱が高くて、寒いみたいで」
「って!ええ!?何をそんな悠長に!早く保健室に連れて行ってあげなよ…!」
「そうだぞぉ!早く治してもらわないと、ラスボスが倒せな…あいたっ!」
「ヒナ!」
「また治ったら好きなだけこき使ってやって下さい」
「もう、鈴木も!早く行く行く!会長達には俺から言っておくし」
「すみません。では…双龍、ほら、降りろ」
「ふううっ!しゃ、しゃむいぃ〜だっこぉ」
「「…………」」
「まったく…よいしょ、ほらこれでいいだろ」
「ん」
「…じゃあ申し訳ないですが、今日はこれで失礼します」
「う、うん。お大事にな」
「お大事にぃ」
―――ピシャン
「ユウゥ〜!鈴木がぁ!」
「う、うん。鈴木がちゃんとお兄ちゃんだった」
「あの顔!逆に怖えぇよぉ!」
「俺、夢に見そう。……鈴木の優しい顔なんてっ!」
「ヒィィイッ!」
●おまけおしまい●
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お題配布元:配布元
「キュンとくる10のお題」
2010.03.21
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