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私立月見里学園高等部
A
「えーと、校門を出てずっと真っ直ぐだよな?」

 と思わず独り言を呟いてしまったのには訳がある。

あのセキュリティの甘そうな校門からかれこれ10分はまっすぐ歩いているのに、待てど暮らせど寮らしきものは見えず、それどころか人っ子一人見当たらないのだ。

 祖父さんから渡された手描きの見取り図によれば、すでに校舎が見えてきてもいいはずなのにな。

おかしい…。

いや、でも一本道なのに…。

「そこの君!勝手に敷地内に入って来られちゃ困るんだがな」

 ってびっくりした!

いきなりデカい声で怒鳴られて、思わず地図を落としそうになってしまう。

まったく。校門にしろ、デカければいいってもんじゃないけどな。

この声の主もさぞかし背がデカいのだろうと、振り向けば、予想に反してそこにいたのは小さなおじさんだった。

 あー、えっと。

自分より遥か下にいるおじさんに視線をやれば、態度はデカいようで、ふんっと顎を突き出される。

なんか感じ悪いな…。

「ここが天下の月見里(ヤマナシ)グループが運営する、月見里(ツキミサト)学園の敷地内だと知って入ってきたのか?どうせお坊ちゃま方のファンかなんなんだろうが…。ん?もしかして泥棒か?いや、どっちにせよお前みたいな庶民がくるような場所じゃないんだよ。さあ、帰った帰った」

 そう感じた通り、彼はまるで人を見下したような態度で、畳み掛けるように怒鳴りつけて来て、最後にはついでとばかりにしっしっと手を振られてしまう。

俺が口を挟む隙さえ与えてくれない…って元々話すのは苦手なんだが。

…とりあえず俺だったら何回も舌を噛みそうなほどのテンポで言われたそれの殆どは聞き取れなかったが、どちらにしろ何か暴言を吐かれていることは確かだ。

それにむっとしながら、しかし他に誰もいないので、仕方がない。

「今日からこちらに編入することになった月見里新名です。少しお尋ねしたいんですが、寮への道はここであっていますか?」

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あきゅろす。
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