私立月見里学園高等部
A
とりあえずそのおじさん(寮の副管理人の磯村さんというらしい)が寮まで案内してくれるということで、その件については安心だ。
あとで伊近に会っても、まさか迷っただなんてことは言わないでおこう。
ものすごく心配されるか、バカにされるか・・・多分両方だな。
何だか突然俺の扱いが丁寧になった磯村さんに一方的に話しかけられながら(話すテンポが早すぎて頷くことしかできない)、さらに10分ほど歩いて、丘を下って・・・やっと寮へと辿り着くことができたのだが・・・。
一体これは・・・っ!
学校案内のパンフレットでは小さな写真しか載っていなかったので、アパートのようなイメージだったのだが、これじゃあまるで・・・ホテルだ。
しかもかなりグレードの高いホテル。
あの裏門がただの鉄の門に見えてしまうほど豪華なこの寮に、俺は唖然とするばかり。
しばらく見上げた後、磯村さんから向けられるやけに愛想のいい笑顔に気づいて、慌ててそちらへと駆け寄った。
「こちらが、今日から新名様がお住まいになる寮になります。私も初めてここに来たときはびっくりしたものですよ」
目尻に寄る笑い皺に、すっかり最初の失礼な態度を忘れていた俺は、俺の気持ちに同意するような言葉に、うんうんと頷いてしまう。
なんだ、いい人じゃないか。
そんな磯村さんに部屋の鍵の受け渡しとと簡単な説明をするからと、連れられたのは自動ドアの入り口すぐ脇にある管理人室だった。
ちなみにそこに入る前にチラっと見た感じでも、寮の玄関ホール?はフロントこそないにしろ、ホテルと言っても通るくらいのレベルだろう。
それに天井がやたら高くて、そこにはシャンデリアが吊るされていたような気がする。
さすがお金持ちの学校って感じだな。
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