私立月見里学園高等部
迷子
月日が経つのは早い。
あの両親の復縁話から早数ヶ月。
季節は冬から春へと移り変わり、桜の舞い散るそんな暖かな午後の昼下がり。
無事、難関と言われている月見里学園の編入試験を突破することのできた俺は、今日から晴れてこの学園の一員となることが決まっている。
伊近の説明によれば、この学園は中等部から全寮制が義務つけられているらしく、今日がその入寮日だ。
持ち上がり組は半日早くに招集が掛かっていて、今朝渋々寮へと戻って行った伊近の姿を思い出して笑ってしまう。
あれからすぐに月見里の本宅へ越してからというもの、伊近は離れていた15年の溝を埋めるかのように、始終俺に付いてまわり、それは両親だけでなく、祖父さんと祖母さんを呆れさせてしまう程の徹底ぶりだったのだ。
その祖父さんと祖母さんというのがまた気さくな人で、出戻り嫁の母さんはもちろん、孫の俺にもとても優しくしてくれている。
それどころか離れ離れになってしまっていた俺達双子のことを気に掛けてくれていたようで、今回の月見里学園への入学も手放しで喜んでくれた程だ。
そんなまだまだ60代前半という若さの祖父さんは、今日もここまで連れていってやると申し出てくれたのだが、それじゃあ示しがつかないと、本宅からそう離れていないここまで一人で来たのはよかったのだが…。
デカい…。
ものすごくデカい。
自宅のそれにも驚いたというのに、目の前にそびえ立つ学園の門は 公立の学校の比にならないほどデカい。
そりゃもう見上げる程にデカい。
しかもたくさんの監視カメラがついていて、たかが校門に金を掛けすぎなんじゃないかと思う。
だかそんな重装備の割に、…いやむしろ重装備だからか?
意外にも取っ手を90度回す式の鍵を開錠するだけで開いてしまったのだが、これ、セキュリティ的に大丈夫なんだろうか?
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