私立月見里学園高等部
秘密にしていたこと
結局そのまま伊近の腕も引いて部屋へと上がってきた母さんは俺達をソファセットに並んで座らせると、もう一度呆れたようにため息をついて見せた。
まあ、溜息も吐きたくなるだろうさ。
こんなに伊近がべったり俺に張り付いてたらな・・・。
「全く。仲が良いのは悪いことじゃなけど・・・。いーちーかー?アンタ、子供じゃないんだから外ではそんなことしないでよね。まあせめてもの救いはアンタ達の顔が私に似て綺麗だってことかしら。男同士でくっ付いてても暑苦しくないもの」
しかし常にポジティブシンキングの母さんらしくそう結論付けると、指でカメラの枠のようなものを作って俺達を観察し始めてしまった。
「・・・秋の新作のポスターそっち系のテイストにしようかしら?んーでも絵になりすぎて怖いわ、アンタ達。流石私達の子供!素敵!」
「当たり前だろ、俺はこんなにカッコいいし新名はこんなに可愛いんだから」
って母さんも伊近も自画自賛というかなんというか・・・しかし。
「可愛いって何だよ・・・」
「あら、だって可愛いもの!」
「だって可愛いし」
身内の欲目にしろ俺が可愛くないことは俺自身が1番よく知ってるぞ・・・。
この目つきの悪さで不良さんたちに絡まれた数は両手両足じゃ足りないというに。
「ハイハイ。で、母さん電話の続きだけど・・・」
「えー?新名は可愛いわよ?・・・ああ、そうね。だけどその前にまずは伊近に全部説明しないと」
「俺に?何?それより新名の可愛さについて論議するほうが俺は大事だと思うけど」
全くコイツはしつこい!可愛い可愛い言えば言うほど有り難味がなくなってること分かってんのか?
「あ、その顔も俺好き」
・・・いや、分かってねぇなこれは。
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