風邪の功名
「、っくしゅ!!」
本日何度目かのくしゃみを聞いて、俺の右目はため息とともに仕事の手を止めた。バレたかな。
「政宗様」
「…What?小十郎」
気付かないふりで誤魔化すと、少し怒ったような視線を向けてきた。
「分かっていらっしゃるくせに…」
何故無理をなさるのかと、小十郎は俺の額に手をあてる。微かに冷たくて気持ちいいとおもったのは多分勘違い、俺が熱いだけ。
「この小十郎の目を欺けるとお思いか?侮られては困りますな」
「Ah…このくらい平気だ」
嘘だけど。
虚勢を張るのもこの機会を逃さないため。本当は普段じゃ考えられないくらい体が熱かったし、座ってるのも結構辛かった。
風邪をひいた時のこういう症状はもちろん嫌いだ、でも、風邪をひくのは嫌いじゃない。だって――。
「あまり無茶をなされるな」
――貴方の体は貴方一人のものではないのですから。
心地よい声と鍛えられた腕に包み込まれる。体が浮いて、ふわり、と小十郎の匂いがする。全部を小十郎に包まれてるみたいでひどく安心した。
「なにしてんだ…降ろせよ」
「無茶をなされるな、と申し上げたはずです」
「humm…勝手にしろよ」
「では勝手にさせて頂きます」
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