藍染の記憶 ◆第2話 私はもともと、宮廷に仕えている人間じゃない。 だからといって何もしていないわけじゃない。先程のように白雄皇子に依頼を頼まれたりしているわけだが、彼らは私のことを使用人として扱っているわけではないのだ。 言わば宮廷の専属魔導師…そんなところか。何かと慕われているけど、私自身、あまりそういうのには興味がない。 …で、先程白蓮皇子を拒否していた理由についてだが。 正直人とベタベタするのは、あまり好きじゃない。私の性格上の話だけど、人と関わるのが苦手なのだ。 白蓮皇子は一言で言うと人懐っこい。私が苦手なタイプだ。 「湟〜」 今のように後ろから抱きつかれるなんて論外なわけで。 「白蓮皇子、離れてください。離さないと氷付けにしますよ」 「…相変わらず冷てぇな」 渋々、といった感じで、白蓮皇子は私から体を離す。 「仮にも貴方は皇子なんですから。あまり私とベタベタしてると勘違いされますよ」 「勘違い?だって俺湟のこと好きなんだもん」 「あーはいはい」 これもいつものやり取りだ。 ふと思い出したように、白蓮皇子が話を切り出す。 「そういやさ、今度俺迷宮攻略に行くって聞いた?」 「ああ、はい。白雄皇子から聞きました」 「それでさ、俺の付き添いとして――」 「…それについては今考えている最中です」 相手が言い終わる前に、私は口を挟んだ。それを聞いた白蓮皇子は、「そうか」と笑顔を見せ、私の頭をくしゃっと撫でてから何処かへと去っていった。 悔しいけど、白蓮皇子のほうが背が高い。子供扱いされることもしばしばあるが、私だってもう大人だ。 私はくしゃくしゃにされた髪を手で直しながら、自室へと向かった。 [*前へ][次へ#] |