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愛のために
青春のイコーナ


レイナスはいつも通り、授業には耳もやらず、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
ちょうどそのときはツナのクラスの体育の時間だった。

打ち上がった打球を取ろうとしたツナは、タイミングを誤って思い切りボールを頭に直撃させた。
周りがツナを茶化すように笑い、ツナはワタワタと転がったボールを取りに消える。
レイナスはいつもと違わないツナのだめだめっぷりを遠目にみて、おかしそうにほほえんだ。
ご機嫌そうなレイナスの様子にクラスメイトもほっこりだ。
そして放課後。


「ツナ。見てたよ。お前は本当に運動音痴なんだねえ」


レイナスは早速ツナをからかった。
ツナはぎょっとして顔を赤らめる。

「え!?み、見てたって、今日の体育…!?」

「あんなフワッとした球、小学生でも捕球できるよ?」

「ほ、ほっといてよ!」


茶化されてムッとするツナに、レイナスはキッと眉をあげた。


「ほっとけないよ。ツナには早く一人前のボスになってもらわないと!わかったら特訓だ!」

「マフィアのボスになんてならないって言ってるだろ!?」

「あっこらツナ!逃げるな〜!」


ツナは居たたまれなくなったのと、レイナスの特訓がろくなものではないことを察してそそくさと教室から出ていった。
レイナスもすぐさまツナを追おうとするが…


「まって!ダメツナなんかほっといて、私たちとお話しませんか!?」

「3年のレイナス先輩ですよね!?近くで見ると本当にイケメーン!!」

「あ、いや、ちょっと…!今取り込み中なんだけど…!?」


隙アリ!とばかりに人だかりにあい、レイナスはしばらく教室に足留めを食うはめになった。


「10代目〜!!ってあれ?なんで人だかりの中心が10代目じゃなくてお前なんだよ」

「ここにツナがいると思ってた獄寺の思考も謎だけどね」


レイナスは勢いよく人をかき分けてきた獄寺に向かって冷静に突っ込む。


「まあ出口作ってくれたことには感謝するよ。
じゃあみんな、今日はこれでね」


チャオ、とレイナスは軽く挨拶してそそくさと教室から脱出した。
獄寺も、不服ながらもレイナスに着いていくような形で教室を出る。


「お前十代目の居場所知らねえのか?」

「ツナなら僕を置いて1人で帰っちゃったよ。あーあ、今日はとことんしばいてやろうと思ったのに」

「てめー十代目に失礼な事しでかしたらただじゃ済まさねえぞ!?」


レイナスの言い草に獄寺が掴みかかる。
そこにキュッと足跡が響いた。
特に大きな音ではないのにそれはやたらと耳についた。
2人がそちらに顔を向けると、そこには恐怖の風紀委員長が仁王立ちしていた。


「…え?なんで今日はそんなに不機嫌なわけ!?」


あわわ、とレイナスが縮みあがる。
獄寺は舌打ちして素早く臨戦態勢をとった。


「別に。君達、僕の前で群れるなんていい度胸だね」

「いやいや群れ判定厳しくない?2人っきりだけど!?」

「ごちゃごちゃとうるさいよ」


ツナも山本もいないのに!と弁解するレイナスだが、雲雀はますます苛立ちを募らせ凄む。


「くそっ今の雲雀じゃ話にならない!僕は逃げる!しっかり足留めするんだよ、獄寺!」


雲雀の沈静化に早々に見きりをつけ、レイナスは逃走手段であるルンバを起動した。
獄寺もサッとダイナマイトに火をつけレイナスに言い返す。


「うるせー誰がてめーの話なんか聞くか!!
俺はコイツを仕留める!その後はてめーだカマ野郎!」

「その意気その意気!」


レイナスはルンバEXに乗って浮上した。
そして獄寺の放ったダイナマイトの爆風に紛れ、速やかにその場から逃走をはかる。
背後から獄寺の悲鳴が聞こえたような気がするが、まあしょうがない。立ち向かったのは獄寺だ。

尊い犠牲を払いつつ雲雀を撒いたレイナスは、無事に下駄箱にたどり着いた。
が、外を見て青ざめる。


「嘘、雨……。今日は傘持ってきてないのに…」


レイナスが困って立往生していると、丁度いいところに助っ人が現れた。


「おっすレイナス!どうしたんだ?そんな泣きそうな顔して」

「や、山本…!」


レイナスは天の助けとばかりに山本に泣きつく。


「山本、今日、傘持ってきた?」

「持ってるぜ!今日じゃなくて、ずっと置きっぱなしのやつだけどな!
なんだ、傘なくて困ってたのか?いいぜ、入ってけよ!」

「や、山本ー!お前はいい奴だなー!
僕、今度雲雀に遭遇しても、山本だけは囮にしないよ!」


山本の爽やかな笑顔をみて、レイナスは感涙しながらそう宣言した。
そうして2人は相合傘で下校する。
山本の神対応のおかげでレイナスの機嫌も上々だ。
和気あいあいと話ながら歩いていると…


「…ん?」


山本がちらりと上を見上げた。
レイナスがどうしたのか尋ねる前に、山本はレイナスに傘を押し付け、その体を押し退けた。


「うわっ」


危うく泥だらけの地面に尻餅をつく所だったが、危機を察したルンバがレイナスの体を支えてくれて難を逃れた。
レイナスが文句を言おうと山本の方へ目を向け…絶句した。


レイナスの目の前では、空から降ってきた獄寺が山本にナイスキャッチでお姫様だっこされるという事態が繰り広げられていた。


「うわっ!?」

「あはは〜、雨時々獄寺ってか!やばいな!」

「ぐっ…!くそ、雲雀の野郎…」

「嘘、雲雀の仕業なんだ…」


一体どう戦えばこうも見事に打ち上げられるのだろうか。
痛みに喘いで悪態をつく獄寺は、腹をやられたのかパッと見では目立つ外傷はないようだった。


「大丈夫?獄寺。惨敗だったね」

「バカ抜かせ。この通りピンピンしてんだ。引き分けだ引き分け」

「喧嘩はほどほどにな〜」


そんなこんなで、3人は雨の中、ツナの家まで一緒に帰ることとなった。


「僕絶対濡れたくないから真ん中ね」

「別に濡れたって気にしねーっつてんだろ!放せや!!」

「まあそう言うなって!せっかく傘があるんだし使えよ」

「3人に対して1本じゃ使いたくても使えねーわ!!
つーかこれ山本の傘なんじゃねえか!どんだけ厚かましいんだよカマ野郎!」

「山本、本人もこう言ってるし獄寺は追い出そう」

「まあまあ!こうやってバカやりながら帰るのも青春ってやつだぜ!」

「ほんとにバカなんだよ野球バカ!右肩びしょ濡れだし暑苦しいし地獄か!?」


3人の奇妙な帰宅風景は大層目立ったと言う。


「つーかお前こう言うときのために使えるメカあるだろ絶対」

「あ…」


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あきゅろす。
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