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君が好きだから無敵
女の子



「あ、あれ?」

「どうしたんだ?クラリス」


箒の訓練を終え次の授業に向かう途中、クラリスはあたふたと服を弄った。


「杖がない……落としたんだ!
取って来るから先に行ってて!」


クラリスは慌てて校庭へ戻って行く。


「クラリスは一体どうしたんだ?」


血相を変えて駆けていくクラリスとすれ違ったジャックがアギに尋ねた。


「杖を箒の授業のときに落としたらしくて……」

「別にそこまで心配することじゃないだろ」


クラリスが去った方を心配そうに見つめ続けるアギにアカネが呆れたように言う。


「それより、早く教室に行って事情を説明してやらないと」










クラリスは校庭に向かう途中でマダム・フーチに呼び止められた。


「ひょっとして杖を落としましたか?」

「はいっそうなんです!」


慌ただしく言うクラリスに、フーチはスッとクラリスの杖を差し出した。


「杖は魔法使いにとって何よりも大切なもの。
もうなくさないように」

「はい、ごめんなさい……」


厳しい表情で言いつけるマダム・フーチにクラリスは眉を下げて杖を受け取った。


「わかればよろしい。
さあ早く教室に戻りなさい!」

「はい!ありがとうございました!」


ぺこりと頭を下げてクラリスはマダム・フーチに背を向ける。

階段に嫌われなければ遅刻はしなくても大丈夫そうだ。

クラリスは杖を握りしめ教室へ駆けた。




「……ねえ、君?」


通り過ぎた女の子から声をかけられ、クラリスは慌てて足を止めた。


「なに?」


振り向いたクラリスに女の子達がキャッキャと声を上げる。


「かーわいーい!」

「やっぱり一年生って小さいわね」

「……あの、急ぐから」


はしゃぐ彼女達から何か不穏なものを感じてクラリスは直ぐに前に向き直る。


「待って!私マリアって言うの。仲良くしましょ?」

「うん。じゃあまた今度……」


マリアに手を掴まれて、クラリスはとにかくその場を切り抜けようと適当に返事をした。

それに気をよくした彼女達がクラリスを取り囲んだ。


「あなたの瞳って透き通っていて綺麗ね……」


マリアがそっとクラリスの頬に触れる。
クラリスはびっくりして身をこわばらせた。



「あなた達、何してるの?」


その声にマリアがパッとクラリスから身を引く。


「!みんなして下級生を取り囲んで……怖がってるじゃない!」

「怖がってるなんて……疑りすぎよハーマイオニー」


ハーマイオニーは女子達の輪にいたクラリスを見てマリア達を睨みつけた。
マリアはそんなハーマイオニーからフイっと顔を逸らす。


「私たち友達になっただけだもの。
ね?クラリス、また会いましょう」


クラリスに手を振ってマリアがその場を離れる。
クラリスを取り囲んでいた女の子もマリアを追いかけていった。


「えっと……大丈夫?
何か変なことをされたりとかは……?」

「大丈夫、ありがとう……」


おずおずと聞いてくるハーマイオニーに、クラリスはホッと胸をなでおろし微笑んだ。

ハーマイオニーは一瞬面を食らったような顔をしたが、優しく笑い返すとポンポンとクラリスの頭をなでる。


「気をつけてね。ああいう子達にはハッキリ言わないと、おもちゃにされちゃうわよ」

「クラリスっ!」


クラリスが振り向けば、そこには慌てたように駆けてくるアギがいた。

一緒にいるハーマイオニーを見て軽く頭を下げると、素早くクラリスの手を引きその場を離れる。


「っアギ?」

「いいから走れ、振り返るな」


何事かとアギを窺うクラリスにアギは難しい顔をして答えた。




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あきゅろす。
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