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君が好きだから無敵
過保護

クラリスの体調はすっかりよくなり、ドラコとの不和も無事に解消された。
クリスマス休暇はもっぱら目眩ましの呪文の練習に充てられた。
見つけた呪文の中でも使い勝手が良さそうだったので、2人で協力して習得することにしたのだ。
習ったことのない呪文を使うのは難しく、練習はかなり白熱した。


「・・・・消えた!腕が消えてる!!」


クラリスが目を丸くして言った。
触れればしっかりと触感はある。
ただ視覚で捉えられないだけなのだ。
それもほんの数秒間だけで、ドラコの白い腕はすぐに元通りに現れた。


「すごいよドラコ!!」

「まあ、ようやく成功だな・・・・」


ドラコは喜ぶ気力もない程度には疲労していた。
それでも、はしゃぐクラリスを前に悪い気はしないようだった。


「みんなに自慢できるね」

「よせ。うるさくなるぞ」

「そうだね。じゃあ、僕達だけの秘密!」


指を立てて、楽しそうに言うクラリス。
努力の甲斐あって、呪文の効果時間は段々と延びていった。
ドラコからコツを教わったクラリスも無事に呪文を成功させ、どうにか5分程度効果を保てるようになった。

そうして休暇を終えると、再びいつも通りの学校生活が始まる。
クラリスはシリウスの件をハリーに伝えるべく繰り返し接触を図ったが、そういうときは決まってドラコが現れ有無を言わさずクラリスを引きずって行ってしまった。

ハリーとドラコの確執は日を増すごとに凄まじくなっていった。
先のクリスマス、ハリーは謎の人物からファイアボルトを贈られていた。
スリザリンチームは「乗りこなせるわけが無い」と鷹を括りながらも、やはりそれを脅威とみなしているようだった。
ドラコはハリーを見かけては嫌味を応酬しに行った。
それを止めるために、クラリスはむしろハリーを避けなければならなくなったのだった。

直接の接触は難しくてもふくろうを通じて手紙で話せばよいのでは。
そう思いつき、早速手紙を書こうとしたクラリスだが、目敏いドラコはクラリスの背後にくっついて、その一言一句を見逃さまいと羊皮紙を睨んでいた。


「ドラコ、手紙を覗くのはマナー違反だよ」

「どの道お前がどんなことを書くかなんて想像つくさ。気にするな」


ごく当たり前の事を注意するクラリスだが、ドラコは聞こえていない呈を装い反応を示さなかった。
仕方ないので手紙は家族に宛てて出した。
去年とは違いハリーをはじめとした他寮生との接触はない。
そしてスリザリン寮での出来事は全てドラコに把握されていると言っても過言では無い。
クラリスの手紙はドラコの想像通りの内容となった。

ドラコによる厳しい監視に、クラリスは難しい顔をして首を捻る。
クラリスだって、なるべくドラコと一緒にいたい気持ちはある。
けれども四六時中行動を見張るのはいくらなんでもいきすぎているだろう。

それに、クラリスはシリウスのことが気がかりだった。
あんなことを言ったのに、ハリーにはなにも伝えられていない。
ただでさえやつれているシリウスを待たせるのは酷だ。
いつディメンターがシリウスを見つけるかもわからない。

ドラコと2人でならんで歩きながら、クラリスはチラリと心配そうな視線を暴れ柳の方に向けた。
ドラコはその様子を訝しげに見つめていた。
クラリスは恐る恐る、その疑問をドラコにぶつけた。


「ねえドラコ・・・・?最近なんだか様子が変じゃない・・・・?」


ドラコはクラリスのその言葉にチラッと視線を向けたが、すぐにそ知らぬ顔をした。
返事を寄越さないドラコにクラリスが眉を寄せる。


「ドラコってば」

「様子がおかしいっていうのはお前の方じゃないか?」


ツンとした態度だが、ようやくドラコが返事を返した。
なにやら言いたげな顔でじっとこちらを見つめるドラコに、クラリスは思わず言葉につまった。


「ぼ、僕は別に普段通りだよ・・・・」

「ほう・・・・?」


ドラコが意地の悪い顔をして、ズイと顔を近づける。
近すぎる距離にクラリスの顔に熱が集中する。
なんだか居心地が悪くて、クラリスは思わず視線をそらした。


「な、なに・・・・?」

「お前、ポッターに気があるんじゃないだろうな?」


その言葉にクラリスは目を丸くした。
一体何を言われたのかと目をぱちくりさせたあと、思い切りドラコの身体を突き飛ばした。


「へ、変なこと言うな!!」

「じゃあなんで執拗に奴と馴れ合いにいくんだ」

「それは・・・・」


クラリスを睨み付けるようにドラコが問う。
口ごもるクラリスに、ドラコはふんと鼻をならした。


「まあいい。さすがにあれに惚れる程、お前もバカじゃないだろう。だがあいつにはもう近寄るな」


そう言い捨てると、ドラコは部屋に戻ると言ってクラリスを置いていった。

久々に1人になったというのにクラリスは動けなかった。
この足でハリーに会いに行ったら、ドラコを裏切ることになるような気がしたのだ。

せめてこの事をシリウスに謝らなければと、クラリスは1人で暴れ柳のもとに向かった。
日持ちしそうな食べ物を用意して、こっそりと。
人目を避けて移動し、途中誰もいないことを確認して目眩ましの呪文を唱える。


「パッドフッド・・・・?」


暴れ柳の外から、小さな声でクラリスが呼び掛ける。
シリウスからの応答はなく、クラリスは不安な気持ちになりながらも、食べ物を置いて寮へと戻るしかなかった。

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あきゅろす。
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