君が好きだから無敵 2 ニュースでは凶悪犯のシリウス・ブラックが難攻不落のアズカバンから脱獄したことが大きく騒がれていたが、子供達はさして気にせず・・・・ドラコは「またポッターがでしゃばる」と眉をしかめていたが・・・・夏休みを満喫していた。 ホグワーツから手紙を受けとると、ドラコとクラリスは共に買い物に出ることにした。 教科書や教材をあらかた買い終えると、両親はクラリスを高級箒用具店へと引っ張って行った。 「ねえ、どの箒が欲しいの?私もこの人もクィディッチに詳しくないから、全然わからないのよね」 「うーん、僕もよくわからないや。でも、ドラコと一緒のがいいな」 「ニンバス2001か?」 クラリスの言葉を聞いてドラコがふむ、と考え込む。 「あれはかなり速度が出る。初心者には向いてないと思うぞ」 「やっぱり難しいかな・・・・」 ドラコの言葉を受け、クラリスはそっか、と小さく笑いつつ少し寂しげに眉尻を下げた。 ドラコはそんなクラリスを見てコホン、と咳払いした。 「・・・・お前にやる気があるなら、僕がついてみててやる」 「ほんと!?」 クラリスの顔がパアッと輝く。 「もともとそのつもりだったしな。でも、初心者向けのよりも難しいんだからな。覚悟しておけよ」 「うん!僕、頑張るね!ありがとうドラコ!」 クラリスは満面の笑みでドラコに礼を言うと、ニンバス2001を持って両親にねだりに行った。 そのおねだりはごく当たり前のように快諾され、クラリスの手には無事にニンバス2001が握られた。 それ以降、魔法の勉強に費やしていた時間は全部箒の訓練に向けられることとなった。 持ち方、乗り方など、授業で習ったことは一通り身に付けたが、やはり速度の調整などの細かい制御は難しい課題であった。 「あっ駄目!止まらないっ」 着陸しようと高度を下げたクラリスだが、スピードが落ちずこのままでは地面に突っ込む勢いであった。 ドラコは杖を構えて叫んだ。 「飛び降りろ!スポンジファイ!」 クラリスはどうにか箒を捨て地面へ跳んだ。 制御を失った箒はそのまま大きな音を立てて草根を割った。 軟らかい地面を跳ねたクラリスは、その場で何回かバウンドしたあと、待ち構えていたドラコのもとへと飛び込んだ。 ドラコに支えられて地面に足をつけると、クラリス大きくため息をついた。 「クラリス、怪我は?」 「ドラコのおかげでなんともないよ。ありがとう」 疲れた様子ではあったがにこりと笑うクラリス。 ドラコもようやく安堵し、放り出されたニンバス2001を拾ってきてクラリスに手渡した。 クラリスはそれを受け取りながら困ったように言った。 「スピードの方を何とかしないと、このままじゃ着地もできないや」 「まだ箒に乗るのを怖がってるぞ、クラリス」 ドラコはコーチよろしく腕を組んでクラリスに告げた。 「逆に限界まで速度をあげてみろ。振り落とされることを考えるな。箒と一体になる感覚が掴めれば制御はグッと簡単になる」 ドラコのその言葉にクラリスは力強く頷いた。 「うん、やってみる・・・・!」 クラリスはキッとした顔で箒にまたがりもう一度地面を蹴った。 箒はやはりクラリスの意図しないスピードで飛んでいく。 それでもクラリスはドラコの言葉を信じ、無理に制御しようとするのを止めた。 固く目を閉じ、ただ身を切る風を受け止めていた。 「クラリス!目を開けろ!」 地上から聞こえるドラコの呼び掛けに、強張っていた瞼からゆっくり力を抜く。 そうして次々に通りすぎていく景色に思わず目が奪われた。 「クラリス」 思いがけず近くから聞こえた声に、クラリスはびくりとはねあがった。 ドラコはそ知らぬ顔でクラリスに並走していた。 「え!?ドラコ!いつの間に!」 「そのまま僕のあとに続け」 驚くクラリスをよそにドラコはそのままスイと先を行った。 クラリスは慌ててその背中を追いかける。 ある程度の距離を飛んだところで、ドラコは箒の速度を緩め再びクラリスの横に並んだ。 「どうだ、自分の箒に乗った感想は」 「最高!!今まで乗れなかったのが嘘みたいに自由だよ!」 キラキラと目を輝かせ伝えてくるクラリスにドラコは満足そうに微笑んだ。 よくやった、とばかりにワシワシとクラリスの頭を撫でる。 クラリスは心から嬉しそうに笑った。 「ママに言ってくる!」 箒から降りるなりそう告げ、クラリスは慌ただしく駆けていった。 ドラコが見守るなか、クラリスは身ぶり手振りで母に上手く飛行できたことを伝えた。 クラリスの母はクラリスを褒めるように頭を撫でるとチュッとその頬に口づけた。 嬉しそうに笑っていたクラリスだが、やがてドラコの視線に気づいて駆け寄ってきた。 「ママ、褒めてくれたよ!」 「よかったな」 「うん!ドラコのおかげ!」 満面の笑みでクラリスがドラコに飛び付いた。 ドラコも慣れたようにそれを受けとめる。 「ありがとう、ドラコ。大好き!」 屈託のない笑顔でそう言われ、ドラコも優しく笑い返した。 クラリスの前髪を払い、額にキスを落とす。 クラリスは照れたように笑った。 赤い顔を隠すようにドラコの胸に顔を埋め、その体をぎゅうっと抱き締める。 「ねえ、また一緒に箒で飛ぼうね」 ドラコの腕の中でクラリスがそう言った。 ドラコは返事の代わりに優しい手つきでクラリスの背中を撫でた。 クラリスはただ幸せそうにドラコに体を預けていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |