君が好きだから無敵 平和な入学式 「ふむふむ、なかなか難しい。 好奇心が強く、未知を求める勇気もある。だがしかし無鉄砲ではなく賢明だ。 グリフィンドールかレイブンクローか……」 「いやいやいや、そこじゃだめっ……!」 「ふむ、保守を望むか……。まあ君がそう言うのだから…… スリザリンッ!」 「ドラコっ」 上級生の歓声の中、クラリスはドラコを見つけていそいそと彼のもとへと駆け寄った。 ドラコが隣の席を空けクラリスを招く。 「おめでとうクラリス! これでお前も立派な魔法使いになれるぞ」 「うん!」 座りながらクラリスは心から喜び安堵した。 小さい頃から仲良しのドラコと無事に一緒の寮になれたからだ。 ドラコとクラリスは家族ぐるみの交流がある。 クラリスの母とドラコの母であるナルシッサが幼い頃からの親友なのだ。 クラリスはドラコを兄のように慕っていて、去年も彼が1人ホグワーツに行ってしまったのを仕方なく思いながら、やはり寂しく味気のない日々を過ごしていた。 「えへへ……!」 「こんな所で甘えるな」 今年は一緒にいられるんだ! クラリスははしゃいでドラコにもたれかかる。 うんざりとクラリスをたしなめながらも、ドラコも満更でもない笑みを浮かべていた。 組み分けの儀式が終わり料理がテーブルに現れる。 他の上級生に声をかけられても物怖じしないクラリスを意外に思いながら、ドラコはその姿を見守っていた。 「なあ」 横から声をかけられてクラリスはパンを持ったままそちらを向いた。 「俺、アギ。そっちは?」 「クラリス。よろしくねアギ」 にこやかなアギにクラリスも嬉々として笑いかける。 「よろしく。なんか周りはみんな知り合いらしくて戸惑ってたんだよ」 「誇り高き純潔の血は数少ない。だからこそ僕らの結束は固い」 苦笑いしてそう語るアギにドラコが横から口を出す。 「お前にはその繋がりがないみたいだが……汚れた血じゃないだろうな」 キッとアギを睨んだドラコをクラリスが慌てて窘める。 「嫌な言い方しないでよドラコ」 「構わないよクラリス。それより、この人上級生?」 「うん……僕の親友のドラコ・マルフォイ。二年生だよ」 それを聞いてアギはヒュ〜ッと唇を尖らせた。 「あのマルフォイの。そりゃあ血にこだわるわな。 俺はアギ・スレイダ。聞いたことあるか?一応純血の一族だけど」 苦笑いして答えたアギにドラコは少しムスッとした顔で頷いた。 「もうドラコ、なにがそんなに不満なの?」 釈然としない態度にクラリスが尋ねる。 ドラコは眉をしかめたまま何か思い悩んでいたがやがてまっすぐアギに向き直った。 「クラリスも同級生に知り合いはいない。変なのがつかないようにしっかり面倒見るんだぞ」 「ちょっ……何言ってるんだよっ」 小さな子を任せるかのようなドラコの物言いにクラリスは赤面して食いかかる。 「ははは、いいよ任せとけ」 偉そうなドラコの言葉にもアギは明るく笑って答えた。 食事を終え、ダンブルドアの話も終わる。 あまりにもゆるい歓迎会を終えるとクラリスは名残惜しくドラコに手を振った。 「また明日。一緒にご飯食べようね」 「待て、クラリス」 監督生について歩きだそうとしたクラリスを険しい顔でドラコが止める。 「いいか、他の寮の奴らには関わるなよ。ろくな奴がいないからな」 「そんなに心配しないでよ、過保護だなあ……」 まるでパパやママみたい、とドラコに自らの親を重ねて苦笑いするクラリス。 「クラリス、そろそろ行かないと」 「うん、ごめんねアギ。 おやすみなさいドラコ!」 アギに急かされ慌ててクラリスが去っていく。 無茶なことをしなければいいが……とドラコは自分を棚に上げてクラリスの小さな背中を見送った。 [次へ#] [戻る] |