語り語り 語り語り【5】 マソン「もしもし?エナか?歯の治療は終わったのか?」 エナ『……うん。』 「じゃあ、今から迎えに行くからな。」 『うん。』 電話の向こうのエナの元気の無さに違和感を感じたが、歯医者の治療後なんて、みんな、その治療と称した拷問の後で、放心状態になるもんだ。そう、思っていた。…そう、思ってしまっていた。 「寒っ…本格的に冬、だな。」 数週間前、そこまで気温が低くなかった時から着ていたダウンジャケットも、今ではこの寒さをしのぐには必要不可欠となっていた。 早く、エナを迎えに行ってやろう。多分、あいつも寒さで震えているだろう。 そう、心配しながら、自転車のペダルを強く強く、踏み込んでいた。 「お、エナ。治療お疲れ様……??」 エナの様子がおかしい。うつむいたまま、道路の真ん中で立ち尽くしている。 手袋で包まれた彼女の右手は、その見慣れた顔の頬を押さえていた。 「エ…ナ…?」 俺は、この後、衝撃的な話を聞いてしまう。 〜〜〜語り終わり〜〜〜 [*前へ][次へ#] |