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企画
瞳の中、心の中(沖田)

遊び疲れて眠ってしまった我が子の頭を膝に乗せ、名前は穏やかに微笑みながらその髪を撫でてやっていた。
沖田は柱の影から少しの間その光景を穏やかな表情で見守ってから、ゆっくり名前に声をかける。

「こんな時間に昼寝ですかい?」
「あ、おかえり総悟。今日は銀さんとこのお兄ちゃんにたくさん遊んでもらって、この子おおはしゃぎだったから」

沖田は、へえ、と縁側に座る名前の横に腰を下ろした。
ぐっすり眠る、赤ん坊の頃の面影そのままのあどけない寝顔をした息子を見て笑い、頬を指でちょんとつつく。

「こいつ布団に運びやしょうか?」
「ううん、もう起こさなきゃ。夜眠ってくれなくなっちゃう、っ!?」

名前の言葉は、途中で沖田の唇に遮られた。
突然顔をずいと寄せ強引に唇を塞いできた沖田に、名前は最初こそ驚き目を大きく見開いたが、
すぐにふっと肩の力を抜き、目を閉じてその唇を受け入れる。

「……ん……」

たっぷり数十秒、濃い口付けを続けてから、沖田は薄目を開きしっかり名前を見つめたまま顔を離した。

「もう一時間くらい寝せときなせェ」
「……どうして?」

にっと笑って赤い舌で唇を舐める沖田に、名前が頬をうっすら染める。

「夫婦のコミュニケーションも大事だろィ。特に身体と身体を使った」
「あのね。いつ起きるかわからないのにそんなことできません」
「あーあ、名前さんは最近いつもこうだ」

沖田は今度、かぶりと名前の耳たぶに軽く歯を立てた。

「いつだってコイツ優先になっちまって」
「当たり前でしょう」
「俺とこいつとで名前を取り合っても、すぐ名前はこいつの方に行くからなァ」
「さみしい?」
「そう思ってると思うなら俺のことももう少し構ってくだせえよ」

冗談めかして拗ねたように言っているが、沖田の瞳にどこか寂しげな色が浮かんでいるのを名前は見逃さなかった。
馬鹿ね、と名前が朗らかに笑う。

「総悟も大事だよ」
「知ってやす。でも俺ァ欲張りなんでね」

頬をすり寄せ、互いの体温を確かめるように肌を触れ合わせた。

「昔も今も、ずっと総悟を見てるのに。私、何かあなたを不安にさせちゃうようなことした?」
「いや……時々こうやって、あんたの中に俺の居場所がちゃんとあるって安心させて欲しいだけでさァ」

胡坐をかいて座る沖田の肩に、名前が頭を預け、そっと甘えるようにその身を寄せる。
沖田は嬉しそうにゆるく笑みを浮かべ、名前の肩をしっかり抱いた。

「らしくないなあ」
「俺もそう思いやす。……今日は土方さんの命日だから、湿っぽくなっちまってんですかね」
「土方さん死んでないから。元気だから。勝手に殺さない」
「はは、」

からりと笑う沖田の声に反応したのか、んー、と膝の上で寝顔をくしゃりと崩しながら子が身じろぎする。
起きるかと思ったが、反対方向にこてんと顔を倒すと再び気持ちよさそうな寝顔に戻った。
何度見ても、毎日見ても、子供の寝顔というものは飽きない。
沖田と名前は視線を絡ませあい、笑みを浮かべた。
そして同じタイミングで、大事な我が子にあたたかな眼差しを注ぐ。

「かわいいね」
「俺と名前さんの子ですからねィ」

顔を綻ばせながら、名前は子供から沖田へとゆっくり視線を上げた。
それに気付いた沖田も名前の方に視線を向ける。

名前のその美しい光を宿した瞳の中に、しっかりと沖田がいるのが見えた。



□年上女中と沖田で息子と沖田が奥さんを取り合う( お互いにどのくらい好きかアピールなんかしちゃったりして )
 けど、その場では息子優先な奥さんに沖田が拗ねちゃう

匿名さまのリクエストで書かせていただきましたー!
ちょっとリクエスト内容と外れてしまっております!すみません!
夫婦になり、子供もできた二人を書くのはとても楽しかったです。
嬉しいリクエストをどうもありがとうございました!

2015/12/04
いがぐり

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