企画 自覚(琉夏・性描写あり) 「うーん。琥一くんに、かも」 頬を染め、内緒話を打ち明けるようにはにかみながら名前は言った。 無言で目を見開く琉夏に首をかしげ、微笑み混じりに「驚いた?」と琉夏の目の前でふるふると手を振る。 クーラーが無いため、窓が大きく開かれた蒸し暑い琉夏の部屋で琉夏と名前は並んでベッドの上に座っていた。 麦茶を入れたグラスの中でカランと氷が溶けて音を立てる。 もうすぐはじまる夏休みのことや学校のこと、ごく普通に言葉を交わす中、 「最近綺麗になったよな、もしかして誰かに恋でもしてたりする?」 “いないよー”なんて返事を期待した琉夏の何気ない軽口に名前が返した冒頭の言葉は、今日一日の楽しかった気分が全て叩き潰される程の威力を持っていた。 「ふうん。それで?コウに告白でもするの?」 「しない…できないよ、まだ。楽しい関係が崩れちゃったら嫌だから」 そうか。名前は告白することで琥一との関係が揺らぐのを恐れている。 だけど、自分に恋心を打ち明けることで、俺とのバランスが崩れても構わないのか。 崩れないとでも思っているのか。 …聞いたのは自分だというのに、苦い気分に打ちのめされる。 琉夏は浮かべていた笑顔を自嘲気味に歪め、名前の腰を引き寄せた。 「琉夏くん、どうしたの…?」 半袖から伸びる白い腕が、琉夏のシャツに当たる。 冗談で抱き寄せたのかと思ったのか、くすくす笑いながら琉夏の胸に頭を寄せて「こんなにくっついたら暑くない?」と顔を上げた。 その無垢な瞳。琉夏を信じきった、この世で一番大事な存在。 視線を逸らした先で、名前の首筋を流れた汗が豊かな胸元を滑り落ちていく。 琥一に恋をしているというだけで、名前が琉夏のことを大事に思っていないわけじゃない。 それはわかっている。この唇に、素肌に触れることができるのは自分ではないとわかった、それだけだ。 …たかが、それだけの。 誰かに奪われる前に奪ってやりたい。 しかしここで自暴自棄になったらそれこそ二度とこんな風に胸の中で笑ってくれやしないだろう。 自分の精神がここまで脆いだなんて。 「さっきの話だけど、まだ自分の気持ちがはっきりしてる訳じゃ…琉夏くん?どうしたの?」 苦痛に耐えるかのような辛い表情を浮かべる琉夏を心配し、名前は琉夏の手を取った。 それだけで簡単に、琉夏が必死に保とうとしてきた理性が崩れ落ちる。 どうして名前は俺の心をかき乱して平気な顔して笑ってるんだと琉夏は心の中で舌打ちした。 もうこれ以上醜い自分を見ないで欲しい。 名前の綺麗な瞳から逃れる為、目を閉じて名前の唇を強引に奪う。 「ん、…んーッ!」 細い手が一生懸命琉夏の胸を押し返そうとするたび、角度を変えて唇を重ねてやった。 舌をねじ込ませ、舌先をいやらしく動かす。 ベッドに組み敷くと、はあはあと息を上げぽろぽろと涙を零す名前の姿に琉夏はごくりと喉を鳴らした。 「俺さ、ずっと名前とこういうことしたくてたまんなかった」 「どうして、こんな、だって私は」 「コウのことが好きだけど今の関係が崩れるのが嫌で何もしないんだろ?俺は違う。もうどうでもいい。どうせ俺には何も残らない」 ブルーのシフォンのブラウスをブラごとたくし上げ、素肌に唇を這わす。 舌で指で胸を愛撫すると、名前が声を殺して身体を震わせた。 感じてるんだ、と意地悪く聞けばふるふると首を振り腕で顔を隠す名前の額にキスをする。優しく優しく。 最初の強引さとは打って変わって、名前の肌をなぞる琉夏の手は優しかった。 抵抗すること自体が間違っているような、そう錯覚してもおかしくないゆるやかな刺激に、名前の唇から甘い喘ぎが漏れ始めた。 混乱する思考を更にかき乱すかのように、スカートの中に手を入れ、一番敏感な部分を攻め立ててきた。 琉夏が下着を取り去り指でぬるぬると強弱付けて滑らせると、面白いように身体が反応する。 「…ひぁ…あ、あ、んっ!」 粘ついた水音は紛れも無く自分から湧いたもので、追い詰められるような快感に名前はただただ喘ぎを上げるだけ。 あっという間に名前は高く声をあげ、達してしまった。 初めての体験にくたりと脱力している名前をの服を琉夏が丁寧に脱がせ、晒した素肌に唇を落とす。 ひょいと名前の両足を持ち上げはっきりと興奮を示した自身を名前のぬるつく箇所にあてがい二、三度擦り付けた。 角度を変えれば簡単に琉夏の先が名前のぬるつきに沈む。 熱い吐息を一度止め、ぐっと腰を推し進めようとした時、はじめて名前がじっと琉夏を見つめていることに気付いた。 無言で見つめる名前の透明な瞳に、琉夏の胸に微かな罪悪感が芽生える。 「今から何するかわかってる?本気で抱くよ、俺」 「………ぅ、るか、くん…」 いま『やめて』と拒絶されたらきっとそれに従ってしまう。 だから名前が何か言葉を発する前に、ぐいと腰を進め、ぬるりとした名前の中へゆっくりと自身を埋めていった。 「あ、…いいね、きもちいい」 恍惚の表情を浮かべる琉夏とは対照的に、名前の方は、未熟な身体を強引に開かれた苦痛に顔を歪め、唇を噛む。 叫ばないのは、唇を噛んでまで苦痛に耐えようと思うのは、一体どうしてなんだろうと、名前は頭の中の冷静な部分で考えた。 身体の内側が割り広げられる痛みは、琉夏が自分の中に侵入してくるものだというのに、心のどこかでそれを喜んでいる自分に、この状況に、眩暈がした。 「名前、いたい…?ごめん、俺ばっか気持ちよくて」 「っ、…ん、は……い…たいよ……るかくん……」 古いベッドが二人の動きにギシギシと揺れる。 時折海風が汗を滲ませた素肌に当たるが、それを心地良いと感じることもできず、名前はひたすら琉夏の身体にしがみついた。 そうしないと振り落とされそうだった。心が、琉夏の中から自分という存在が切り捨てられそうでこわかった。 こんな酷いことをされているにもかかわらず、名前は心のどこかで琉夏のことを信じていた。 耳元で荒く弾む琉夏の吐息に背筋に甘く痺れが走る。 遠慮がちに動いていた腰は、名前の喘ぎに甘さを捉え徐々に激しくなっていった。 引き攣れる痛みの中の、ずんと響くような微かな重い快感だけを意識して、名前はただただ琉夏のことだけを考えた。 「名前、好きだよ…愛してる、…くっ…このまま、いかせて…」 「や、るかくん、まって、ッ…!」 ぐっと中で大きくなっていた琉夏が、一度、二度名前の奥を突き動きを止めた。 初めての体験でも、自分が今何をされたかくらいわかる。 震えが止まらない名前の手を琉夏の手がそっと包んだ。 「許してなんて言わない。酷いことをしたってわかってる」 琉夏の言葉が頭に入ってこず、名前はぼうっと自分の手を握る琉夏の手を見ながら、あったかいな、と思った。 琉夏は達した後もまだ名前の中に居て、もう痛くは無かったが不思議な感覚がした。 ゆっくりと顔を上に向けると、乱れた金髪と、今まで見たことも無いような琉夏の顔。 今にも泣きそうで、ツキリと名前の心が痛む。 「どこか、いたいの?るかくん…」 握られていない方の手で琉夏の頬に触れると、琉夏はビクリと驚いた後ますます目を潤ませる。 「痛いのは名前だろ、俺じゃない」 「でも泣きそうな顔してる」 「今、何されたかわかってるの?俺、名前のこと強姦したんだ。許されることじゃない」 だけど、逃げようと思ったら逃げることができた。 逃げなかったのは自分の意思だ。 琉夏の“俺には何も残らない”という言葉が、自分のことを言っているのかと思うと、こわかった。 琉夏の傍から離れるなんて考えたことも無いし、考えただけで寂しい。 そんなことを思うのは琉夏だけだ。 だから抵抗しなかった。 痛みに引き裂かれた身体で精一杯琉夏にしがみついた。 琥一のことも琉夏のことも、大好きだけど、恋愛するなら琥一くんかななんて恋に恋する幸せな思考でいた自分を笑いたいと名前は乾いた唇を舐めた。 こんなことをされなければ気付かなかった。 琉夏は今まで積み上げてきた自分達の関係全てを捨てることもお構い無しに、衝動的に自分を求め奪っていった。 それを怖いと思うより先に嬉しいと思ってしまった。 心から愛しいと思った。 琉夏だから許せると思った。琉夏への気持ちにやっと気付いた。 「…されてない」 「名前?」 「強姦なんて、されてない。私は望んで琉夏くんに抱かれたの」 「コウが好きなんだろ。安心して、このことはコウには死んでも言わない。約束する」 「違うの!今気付いたの、私は琉夏くんのことが凄く愛しいって。自分でも驚いたけど、でも本当なの」 「……名前」 琉夏にわかって欲しくて、名前は必死になって訴える。 「琥一くんが彼氏になったら素敵だなって、そんな理想を恋してるって勘違いしてた」 「勘違い?」 「そう。はっきりわかった。琉夏くんへの気持ちと全然違う、もちろん好きだけど、こういうことをしたいと思うのは琉夏くんだけ」 琉夏は嬉しいような困ったような複雑な表情を浮かべ、目を細める。 「俺さ、最初がこんなんで信用できないかもしれないけど、これから絶対に名前のこと大事にするから。絶対」 「…うん」 「愛してる」 「私も」 繋がったまま、強く強く抱きしめあう。 躊躇いがちに重ねあった唇が離れると、二人とも泣きそうな顔をしていたが、 それは愛しさゆえにこみ上げる感情からだとお互いわかっていた。 その後交し合った微笑みは、今までの中で一番素直な笑顔だった。 -------------- ヒロ様リクエスト こうちゃんが好きな主人公を無理矢理抱いてしまうルカ。 そして段々ルカのことが気になる主人公!最終的にはルカとハッピーエンドなお話。 でした〜! 段々どころか激しくハイスピードで恋に気付く話になってしまいました本当にごめんなさい。 ここまで濃いものを書いたのは久々で、思わず避妊忘れてしまいました。エヘッ。 ヒロ様、素敵なリクエストどうもありがとうございました! [次へ#] [戻る] |