[携帯モード] [URL送信]

企画
痛いの痛いの飛んでいけ(沖田)

「痛いの痛いの、土方さんに飛んでいけー」

淡々とした声と共に放たれたバズーカが、庭石に当たり大きな爆発音を立てた。

「……っぶねーな総悟、何しやがるんだコラ」

間一髪でそれを避けた土方が、爆発音で痛む耳に顔を歪めつつ沖田に詰め寄る。
しかし他の隊士達には鬼のように見えるその形相も、沖田にとっては屁でもないらしい。
ははは、これぐらいでビビってやがる、と完全に馬鹿にした態度で眉を上げ愉快そうに唇の端をつり上げている。

「いやー、名前が朝から腹痛いって呻いてるもんですから、土方さんにその痛みを移せば楽になるんじゃないかと思いやしてね」
「意味わかんねーよ! 俺の腹に穴開けてどーすんだ」
「さあ」
「さあじゃねーよ!」

そう突っ込みながら、土方はバズーカを肩に担ぐ沖田の手に、コンビニのビニールがぶら下がっていることに気付く。

「オイ、見回りサボって買い物か」
「……ああ、これは俺のじゃねーですぜ。名前の為に買ってきたものでさァ」
「腹痛とか言ってたな。薬か?」
「いや、朝から何も食ってないみたいなんで」
「腹痛めてるヤツに食い物持ってくのはどうかと思うぞ」
「腹痛くて食えない名前の横で美味そうにもの食ってりゃ悔しさで身体が早く腹痛を治そうとして治癒力が格段に早まるかと」
「恋人にそんなドSな方法とんなァァァ!!!」
「これも愛情の内なんで」
「苗字が気の毒になってきた」
「そんな気の毒な名前についててやりてーんで、今日は仕事休むことにしやした」
「……おい、今サラッとなんか言わなかったか」
「じゃ、後はよろしく」

言うだけ言うと、沖田は土方の返事も聞かずくるりと背中を向けて行ってしまった。
ったく、と土方は懐から煙草を取り出し火をつける。
口ではああ言ってたが、名前を心底愛する沖田だ、そういったドSな振る舞いは名前に対しては絶対にしないだろうなと思うと、少し笑えた。
仕事をサボるのは笑えないのだが。



部屋の外に立ち、そっと耳を澄ませばやっと拾える小さく苦しげなうめき声を聞き、沖田はふうと細く息を吐いた。

薬、飲んだから。後は効くまで耐えるだけ

だからお仕事してきて。名前はそう言って、月経痛に苦しむ名前のことを心配し傍についていようとした沖田を三十分ほど前に部屋から追い出した。
しかし薬は一向に効いていないようだ。
治っていたら渡そうと思って買ったプリンに視線を落とし、どーするかねえと沖田は腕を組む。

「……総悟?」

部屋の中から聞こえた弱々しい声。
どうやら自分がすぐ外に居るのはバレバレだったらしい。
自分の気配に気付いてくれた嬉しさに、沖田は自然と表情を緩ませながら部屋の中に入る。
そこには沖田が部屋を出てきた時と全く同じく毛布に包まったままの名前が居て、横たわったまま申し訳無さそうな笑みを浮かべていた。

「具合はどーですかい?」
「ん、痛みは少しだけ収まってきた、かな?」

名前の返事に沖田は笑みを深めると、枕元にどっかりと腰を下した。
プリンの入ったビニール袋を傍に置き、名前の髪をゆっくり撫ぜる。

「心配してくれるのは嬉しいけど、サボっちゃ駄目だよ」
「土方さんが休みくれたんで大丈夫でィ」
「くれた? 強引に休んだんじゃなくて?」

沖田の嘘など名前には何もかもお見通しのようだ。
けれどもそのことを追求することもなく、ただくすくすと笑った。
そして「ありがとう」と小さな声で、嬉しそうな笑顔で、沖田の心をあっさりと射抜いてくる。
しかしその直後、身体を丸め苦しげに眉を寄せた。

「どうしてこんなに痛いんだろう……」

どう返事していいのかわからず、沖田は曖昧に微笑み名前の頭を撫ぜていた手を、頬へと移動させる。
そしておもむろに自分もごろりと横になり、顔を至近距離まで持っていく。
しばし無言で見つめあう。名前は痛みに顔をしかめつつも、ほんのりと表情を柔らかくしてくれた。
そんな名前の額に唇を押し当てながら、沖田は痛みにぐったりとするその身体を抱きしめる。
手を背中に当て、そっと動かす。
あったかい、名前の唇から零れた小さな声が、沖田の胸に当たって溶けた。



沖田の買ってきたプリンが、ビニール袋の中でゆっくりとぬるくなっていった。





12、33番の方のリクエストで「生理痛でうなるレベルで苦しむ彼女をべったべたに甘やかす、とっても甘い沖田」でした!
かなりどうもでいい話なのですが、元の題名は冒頭で沖田さんが言っていた「痛いの痛いの土方さんに飛んでいけ」ですハハハ。
長いので短くしました。いやしかしバズーカに当たったら痛いどころじゃないですよね。
楽しいリクエストをどうもありがとうございました!!

[*前へ][次へ#]

18/26ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!