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企画
ばかにあまい(沖田)
「何か企ん…いえ、楽しみなことでもあるんですか?」

隊士達の大量の洗濯物を次々畳みながら、傍に寝転び鼻歌を歌ってる沖田さんに話しかけた。

「そーですねィ、柄にも無く浮かれてやす」

年相応の素直な笑顔が珍しい。

「へえ、何があるんですか?」

沖田さんは私の問いにどこか遠くを見るように視線を浮かし、そしてすっと私へと視線を戻した。
しばし無言で見つめあう。

「明日は誕生日なんでさァ」
「そうだったんですか、知らなかった」
「あんたここに勤めてまだ半年だから知らなくて当たり前だろィ」

手持ち無沙汰な様子で、沖田さんは私が畳んで積んだ洗濯物を手で払いのけて崩す。
子供の悪戯か。
静かに崩れた洗濯物に、もう、と頬を膨らませた私を見て心底楽しげに沖田さんは笑う。

「すいやせん」
「なんでこういう意味も無いイタズラをするんですかまったくもう」
「名前さんの膨れっ面が可愛いからに決まってらァ」

(…年上をからかって)

「からかってなんかないですぜ」
「心を読まない!」
「名前さんはすぐ顔に出る」

優しく微笑んだ沖田さんの真っ直ぐな視線が胸にとすんと突き刺さり、注ぎ込まれる甘い気持ちに息が苦しくなった。

「で、明日の誕生日に話を戻しやすが」
「あ、うん、誕生日」

中途半端に崩れた洗濯物を二人で直していく。
視線を交えず、お互いに洗濯物に視線を注いだまま。

「プレゼントはあるものしか欲しくないんで、先にリクエストしておきやす」
「えーっ、私沖田さんにプレゼントあげなきゃいけないんですか?」
「どーしてもってんならもらってやりまさァ」
「会話が成り立ってないような気がします」

最後の洗濯物に同時に手が伸びる。
けど、その洗濯物を掴んだのは私だけで、沖田さんのては私の腕を掴んでいた。

「俺の女になって下せェ。名前さんが欲しい」

視線を上げると、沖田さんは見たことも無いような情熱的な眼差しで私を見つめている。
ずっと仕舞い込んでいた気持ちが、その熱で溶かされていくようだ。

はい、とそのたった一言が出てこなくて、私は小さく頷き沖田さんの気持ちを受け入れるよと示す。
きっと顔は真っ赤だ。

(からかってるだけだったらどうしよう)

「本気ですぜ。なんなら明日婚姻届でも出しやすか」
「だから心を読まないで!」

ははは、と爽快に笑った沖田さんが私の腕を引っ張りその胸に抱き寄せてくる。
その際にせっかく畳みなおした洗濯物がまた崩れたが、それを口にするより先に沖田さんに唇を塞がれたので私の頭の中は甘さ一色になってしまった。





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