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企画
楽しい夏休み(派出須)

養護教諭とはいっても、夏休みは他の教員と同じくらい忙しい。
プールの監視、次の学期の準備や日直や部活動で怪我をした生徒の手当てなど仕事は山のようにあるのだ。
普通の教員ならうんざりするような暑い中での出勤だが、派出須逸人は違った。
毎日張り切って人々を恐怖に凍りつかせるような笑みを浮かべながら学校へ出勤している。
県の方から教員に平等に数日間の休みがもらえるのだが、休みの日にも学校にいくものだから恋人である名前は心底呆れ果てていた。

「派出須先生、夏休みのご予定は?」
「今日はプールの水質検査、明日はプールの監視で、明後日はバスケットチームの練習試合があるから、念のために影からそっと見守って応援しようと思ってるよ……」
「まあそれは素敵な予定ですこと」
「苗字先生は……」
「恋人が仕事に夢中で構ってもらえないみたいだから、友達と遊びに出かけようかなって思ってます」

名前の言葉に驚いたように目を見開くと、派出須は次にふっと優しく目を細めた。

「心配しなくても、大事な人と過ごす時間はちゃんと考えてるよ」
「へえ、大事な人って誰。藤くん? 美作くん? 安田くん? ああわかった明日葉くんかな」
「生徒もとても大事だけど……僕が心から愛する女性、それが誰のことだか君はわかっているだろう?」

派出須の言葉に頬を緩めた名前の前に、派出須がコトリとアイスコーヒーの入ったグラスを置く。
そのグラスに「ありがと」と手を添えた名前のその手に、派出須のひび割れて青白い大きな手が重ねられた。
囁くように、顔が寄せられる。

「来週……海に行かない?」
「海?」
「名前と一緒に行けたら嬉しいなって思ったんだけど……もう予定入っちゃってるなら気にしないでね……」
「行く!」

少し寂しげに見えた表情に、名前は思わず大声で返事してしまった。
その時、派出須が驚いて目を見開いたので、名前は途端に顔を真っ赤に染める。

「よかった、きっと楽しいよ……。皆に苗字先生も誘うようお願いされてたからね……」
「はい?」
「美作くんがね、皆で海に行く計画を立てていて、僕も誘ってくれたんだ。感激だよね……僕なんかをさ……」
「コーヒーご馳走様。私、休み明けのテストの準備があるから職員室戻る!」
「え、名前?」

二人きり。あまーいデート。
そんな時間を夢見た私がバカだったと、名前は思い切り派出須から顔を背けて保健室を出て行った。
明らかにヘソを曲げてしまったらしい名前に、やれやれ、と微笑みつつも、愛する名前と可愛い生徒達と共に行く海のことを想像し、ニタリと笑う派出須だった。



「ハデス先生と楽しく過ごす夏…!」というリクエストで書かせてたいただきました!
書いてみたら楽しく過ごしているのは派出須先生だけだったという(笑)
派出須先生ものすごく久々だったので、イメージと違っていたら本当にごめんなさい。楽しく書かせていただきました。
リクエストありがとうございました!

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