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企画
最後までじっくりと味わってね


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※長編の「EDGE OF THIS WORLD」の設定ですが、読んでいなくても大体のところは大丈夫だと思います。
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銀時の誕生日が近くなり、今までの依頼人や近所の人達から、これ銀さんにプレゼント、と最近よく菓子をもらうようになってから、銀時の機嫌がとても良い。
今日も沖田の恋人から、丁寧に包装された近所で話題の洋菓子屋の焼き菓子をもらったと、銀時はニヤニヤと締りの無い顔をして万事屋に帰ってきた。

「はい、銀さん」
「お、悪ィな」

お盆で飲み物を運んできた名前は、銀時の前にイチゴ牛乳を、自分の為のココアをテーブルへ置き、マドレーヌを頬張っている銀時の横へ腰を下ろす。
そして目の前の光景を見るなりくすくすと楽しそうに笑い出した。
フィナンシェとマドレーヌが行儀よく並んでいたはずの箱の中がもうすでに空っぽになっていたからだ。
名前が飲み物をいれに行っていたほんの数分の間に、その全てが銀時の胃袋の中へと消えていったようだ。

「銀さん、美味しい?」
「うめーぜ。あ、やっぱ欲しくなったんだろ名前。遠慮せず食えつったのによォ。しゃーねーなァ銀さんの一口やっから口あけろ」
「ううん、いいの。銀さんのなんだから最後までじっくりと味わってね」

名前はのんびりとそう言うと、微笑みながらゆるやかな動作でココアを飲んだ。
そしてマグカップをテーブルへそうっと置くと、ん? といった具合にちょっと首を傾げ銀時へ顔を寄せてくんくんとにおいをかぐ。

「すごーくいい香りがすると思ったらバターだよね、これ。幸せなにおい」
「味も格別だぜ」

銀時がそう言ってニッと笑ったかと思うと、名前の唇にバターと砂糖の香りを纏った唇がちょんとくっつけられる。
軽く重ねられた唇が離れる瞬間、ふわりと鼻腔に甘い香りが染みた。
ほんとに格別かも。そう言って名前が微笑み、銀時が目元を緩める。

「でもそんなに一気に食べて胸焼けしない? 大丈夫?」

手がべとつくのを防ぐため袋を持ったまま齧りついていたマドレーヌの最後の一口を、銀時は指でひょいとつまみ名前の口元へ持っていく。

「そこまでどっしりしてないぜ」

確かめてみ、と名前のふっくらした唇にマドレーヌの欠片を押し当てると、いいよと首を振っていた名前も観念したようにそっと口を開きそのマドレーヌを受け入れた。
口に入った瞬間、ん〜、と何とも幸せそうな顔になり、両頬に手を当ててマドレーヌの贅沢な味を堪能する。

「これすごく美味しいね。さすが沖田くんの彼女さん、センスが良い!」
「町中の甘味所食べ歩きしてっからなアイツは」

テーブルの上に散らばったマドレーヌやフィナンシェを食べた後のゴミをさり気なくまとめつつ、名前が少しだけ声のトーンを落として言った。

「銀さんも一緒に食べたりするんだよね」
「たまたま会った時くらいだけどな、なになに名前ちゃん、焼きもちですか?」

銀時の言葉を、名前はゆっくりと噛み砕いて理解するかのように一呼吸分黙った後、

「ううん」

にっこり笑って首を振った。
そんな名前に銀時が何か言いたげな表情を見せたものの、唇を舐めるだけで終わる。

「……ま、いいけどよ」

マドレーヌから滲んだバターがついた指先を行儀悪くも自らの着物の裾で拭おうとする。
名前が「染みになるよ!」と慌てて銀時の腕を両手で握ってその動きを阻止した。

「銀さん、手、洗ってきたら?」
「歩いてくの面倒なんだよな」
「じゃあせめてちゃんとティッシュで拭いてね」
「ティッシュまでどんだけ距離あると思ってんの」
「ほんの数歩だよ?」
「遠いじゃねぇか」

銀時のしれっとした言葉に、えええー、と名前が力なく肩を落とし困ったように眉を寄せる。

「持ってきてあげるから待ってて」

と言って手を離そうとした時「どうしよっかなー」なんて銀時がニヤニヤと名前をからかうように笑う。

「名前ちゃんが手ぇ離した瞬間に着物で拭いちまおっかなー」
「だーめ」
「なぁ名前、舐めて」

男の色気を滲ませた低く艶のある声で、銀時が甘えるように囁いてくる。
視線を絡ませあうと、これまで誰にでも開かれていたような空気が、一瞬にしてまるで二人きりの世界になったかのようにぐっと狭まった。
名前の唇が、マドレーヌを迎え入れた時のように薄く開かれ、銀時の人差し指を口に含む。

「……っ、」

目を伏せるようにして、熱い舌でねっとりとバターを舐め取るその艶かしい表情に煽られ、銀時の背筋を甘い熱情が走る。
名前の口の中から素早く自分の指を引き抜くと、その興奮に突き動かされるまま名前の唇を奪った。
名前も自らの行為に少なからず高揚していたらしく、銀時の背中にぎゅっと自分の腕を回し銀時の口付けに応える。

「……新八と神楽、買い物行ったのいつだ?」
「かれこれ30分くらい前かな」
「もう思いっきり発射準備完了してんだけどコレ、発射台に乗せてくんない?」
「わ、銀さん大き……で、でも、途中で帰ってきちゃったら?」
「プロレスごっこしてんだって言えば信じるだろ」
「信じない信じない…、ひゃ、銀さん!?」

ギラギラと雄の顔をした銀時に突然横抱きされ、名前が目を見開く。

「心配すんなって、イク時は名前も一緒だから」
「その心配じゃないよ銀さん、降ろして、ねえ、もう、銀さ〜〜〜ん!」

盛った銀時によって和室へと連れ込まれた名前の弱々しく抵抗する声は、ぴしゃりと閉められた襖の向こうへ消えた。




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