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企画
★計画 (桜井琉夏)
「名前、一緒に帰ろう」
「うんいいよー!琥一くんバイク乗ってっちゃったんだ。帰りは徒歩なんだね、琉夏くん」
「そう。でもバイクがない分名前とゆっくり一緒に歩ける」

名前の歩調に合わせて帰り道を歩きながら、琉夏はそっと名前の指を取ってみた。
わあ、冷たい指!と驚いた後、名前はほわりと笑いながら、琉夏の手をきゅっと握る。
しっかりと繋がった手にじんわりと込み上げる幸せを感じながら、名前が居れば真冬の寒さも忘れそうになるな、と琉夏は思った。

「ねえ、商店街寄りたいんだけど、付き合ってもらってもいいかなあ?」
「喜んで。放課後デートだ」
「デートだ!」

鼻の頭を赤くした名前が可愛い。
白い息を吐きながら、二人は商店街へと足を進めた。
クリスマスシーズンの商店街は、大きなツリーやカラフルなイルミネーションの光で溢れ、普段とはまるで活気が違う。
名前はそのひとつひとつに無邪気に「きれい!」と目を輝かせるので、琉夏も自然と頬が緩んだ。
すれ違う中学生らしき男女が互いに意識しつつぎこちない距離で歩いていく微笑ましい姿や、落ち着いた大人の恋人達、みんな幸せそうに見える。
きっと自分もしまりの無い顔をしてるんだろうと琉夏は思った。

「で、何を買うの?」
「サンタさんとトナカイの衣装!」
「…なんでそんなもの」
「琉夏サンタさんと琥一トナカイくんに変身してもらいます」
「いやミニスカサンタ衣装を名前が着るならアリだと思う。うん、それに決定だ」
「勝手に決定しない。琉夏くん、サンタ衣装はイヤ?」
「ずるいな、そんな風に聞かれたらイヤなんて言えない。でもコウはどうかな…」
「いいって言ってたよ」
「…コウが?」
「うん」
「どうやって釣った?」
「えっとねえ、サンタさんとトナカイさんが私にプレゼント届けてくれたらお礼にほっぺにチューしてあげるって」
「そりゃ即答だ」
「でしょ?」

ふふ、と名前は悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
そんな名前の耳元へ少しかがんで顔を寄せ、そっと琉夏が囁いた。

「俺にもほっぺにチューしてくれるの?」
「するよー、それプラス夜になったら私が琉夏くんのサンタの衣装を脱がせてあげる」

琉夏より小さな囁き声で大胆なことを言ってのけた名前に、琉夏は思わずたじろいだ。
ベッドの上で名前が頬を染めながら、白く長い指で琉夏の着るサンタ衣装のボタンをひとつひとつゆっくり外していくところを想像し、琉夏は思わずごくりと喉を鳴らす。

「あのさ、それってつまり…」
「それで私がサンタになって、トナカイ琥一くんと一緒に写真撮るの!あ、琉夏くんも後でトナカイになるんだよ?」
「あ…そう……」

この天然相手に色っぽい期待を一瞬でもしてしまった俺がバカだった。
琉夏がガックリうなだれているのにも気付かず、名前は琥一くんのサンタも楽しみー、なんて無邪気に笑っていた。




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あきゅろす。
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