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企画
サイレントベルズ(沖田)
外は雪が舞っているというのに、土方さんは障子を開け放ち外を見ながら煙草を吸っていた。
真正面に座る近藤さんは、さっきから蜜柑をおいしそうに食べている。
これがバナナだったらもっと幸せそうに食べていたのかな、なんてちょっと失礼なことを考えていたら、ぴゅうと冷たい風が頬を刺していった。
あたたかなコタツに入っているけれど、開け放たれた障子のおかげで上半身に時折吹き抜ける冬風が身を凍らせる。
無意識に肩の触れ合うか触れ合わないかの位置に座る沖田さんへそっと身体を寄せると、それに気付いた沖田さんが私の肩にぐぐっと体重をかけてきた。
もう、子供みたいなことを。

「沖田さん重い」
「俺ァそんなことありやせんがね」
「そりゃそうでしょう」

沖田さんを押し戻すように動くが、その身体はびくともしない。
そんな時不意に、ぴとっと沖田さんが頬を私の頬に押し当ててきて飛び上がった。

「ひゃあっ!」
「なんでィ名前、頬っぺた氷みてーに冷えてらァ」

キキキキスされるかと思った。
ドギマギする私をよそに、沖田さんは余裕をにじませた笑顔ですっと顔を離す。
それにホッとしたその瞬間、その隙を狙ったのか沖田さんの唇がちゅっと私の耳をかすめていった。

「っ、沖田さんッ!!」
「はは、真っ赤になってら」

その行為に驚いた、というより、真正面に座る近藤さんと土方さんの前でなにするんですかという気持ちの方が大きい。
しかし私の動揺をよそに、近藤さんはにこにこしているし、土方さんはげんなりしつつも何も言うつもりはなさそうだ。
そうよね、言っても無駄だもんね。よくわかりますその気持ち。
こっちが慌てれば慌てるほど沖田さんを大喜びさせるだけなんだよね…。
かといって、不意打ちで色々やられると心臓が本当にもたない。

「土方さーん凍死したいんなら構いませんが、その前に障子閉めて外で一人で死んでくれやせんかね」

土方さんは沖田さんのその物言いにムッとしつつも、私が震えているのに気付き表情を変える。
すぐさま煙草を消し、障子を閉めてくれた。

「悪い、寒かったか苗字」
「いえ大丈夫ですよ。それより非番とはいえ女中の私なんかが皆さんとご一緒しててもいいんですかね」
「何言ってんでィ。俺の女なんだから一緒に居てもいいに決まってらァ」

コタツの中に入れていた手が沖田さんにきゅっと握られた。
手のひらをそっとひらくとすっと指が絡まってくる。
私達はいたずらをする子供のように微笑を交わしあった。

「ハッハッハ、総悟も名前さんにベタ惚れだなぁ!そのうちに人数も増えるだろうしコタツも大きいのに買いかえなきゃならんな!」
「…誰が増えるんですか近藤さん?」
「お妙さんだ!」
「一生このコタツのままでも大丈夫そうですねィ」

沖田さんの言葉に「そんなことないからね!ちょっとお妙さん呼んでくるから!」と凄い勢いで駆け出していってしまった…。

「救急箱用意しておいたほうがいいですね」
「近藤さんも懲りねぇ人だな…」

土方さんがそう言って近藤さんが居た場所へ腰を下ろし点けっぱなしのテレビへと視線を向けた。
沖田さんは「あーねむ」なんて言いながら、こたつの天板に倒れこむように右頬をくっつける。
目をとろんとさせて、今にも眠ってしまいそう。

「こたつで寝たら風邪ひきますよ」
「ひきやせん。そんなヤワじゃねーんで」

私も沖田さんと同じように、ころんと身体を前に倒し、こたつの天板に左頬を預けるような格好になってみた。
ふ、と微笑んだ沖田さんと視線が絡まる。
コタツの中で絡めあっていた指がするりと外され、足を崩して座る私の太ももへ手を這わせてきた。

「さっきの近藤さんの話…」
「コタツを大きいサイズに買い換えるって話ですか?」
「そうそれ。人数増やす方法思いつきやした」
「近藤さんの恋が成就する方法ですか!?それはすごい!!」
「…そっちじゃねぇ。人数っつーのは…名前が俺のガキを産んでくれたらこのコタツも賑やかにならァと思って」
「あのさー総悟、そういう話は二人きりの時にしろって俺何度も何度も言ってるよね!?」

土方さんの静かに怒りを滲ませた低い声が聞こえたものの、沖田さんの真摯な表情から目が離せない。
私達は天板に頬をくっつけたまま、土方さんの存在を見ないように顔の角度を変える。
「おい!聞いてンのか!」という土方さんの言葉も、前髪同士がさらりと触れ合うその心地良い感触の方が気になって返事をする気にもなれない。

「あの邪魔なマヨラーを排除したら、副長夫人にしてあげまさァ」

沖田さんの手が太ももから離れ、その手でそっと私の髪を梳き、引き寄せるように後頭部へと回る。

「副長夫人じゃなくてもいい。沖田さんとずっと一緒に居られるならそれで」
「…俺をこれ以上惚れさせてどうするんでィ」

顔と顔の距離が縮まっていき、唇が重なり合う寸前、土方さんは小さく舌打ちして出て行った。
もう突っ込むこともできなくなったらしい。
本当にごめんなさい土方さん。

部屋に二人きりになると同時に沖田さんとの距離はゼロになった。




里桜様よりいただきましたリクエスト
「あの邪魔なマヨラーを排除したら、副長夫人にしてあげまさァ」
でした!
沖田さんこれ本気で言ってますよね絶対フフフ。
アニメの銀魂のコタツでくつろいでいるシーンを見ていたら一気に話が思い浮かびました。
書くのがとても楽しかったです!
素敵なセリフをどうもありがとうございました!!!

(タイトル/遊佐未森+古賀森男のクリスマスソングより)

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