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企画
積み重なる(長編銀さん番外編)


※銀さん長編「EDGE OF THIS WORLD」番外編です。
※二人の子供が出てきます。
名前変換はお手数ですが息子の名前を「登場人物1」娘の名前を「登場人物3」で入力お願いいたします。




学期末、長期の休み前になると、子供達がわさわさと寺子屋で書いた絵や作った作品、植木鉢や工作箱などを持って帰って来る。
中でも名前が一番楽しみにしているのは、子供達が書いた絵だ。
明日から冬休みに入るため、今回は夏休みがあけた頃からつい最近までの楽しかった出来事を書いた絵を持って帰ってきた。
子供達が様々なことをぎゅっと詰めこんでくれた絵を一枚手に取り、名前はワクワクとした気持ちですみずみにまで目を落とす。

「わ、懐かしいね。焼き芋パーティー」

ふふ、と予備の絵を手に取り、名前は顔を綻ばせた。
拙いが力強いタッチでダイナミックに描かれた、湯気のあがるサツマイモ。
大好きなみんなと食べて嬉しかったのだろう。美味しかったのだろう。
新八、神楽、夫婦、子供達、定春、お登勢、キャサリン、
もちろん銀時と名前、苗字に予備、ほうきを持って落ち葉を集めているたままで、絵の中で全員にっこりとそれは楽しそうに笑っている。

「特に銀さんがそっくり」
「え、この頭が爆発してんのひょっとして俺? マジで? 通りがかったアフロヘアかと思ってたんですけど」
「ほら腰に木刀あるし、私の横にいるよ」

髪の毛はもーちっと抑え目に書いてくれよ、と唇を尖らせながらも、
名前の横に座り一緒に絵を眺める銀時の表情は柔らかかった。

「これは……あっ、わかった金木犀だね」

今度は苗字の絵を手に取る。丁寧に書こうとしているのが見て取れた。
絵の中のオレンジ色した小さな花々を見ていると、あの甘く懐かしい濃厚な香りを思い出す。
そんな名前のこめかみに、ふと銀時の唇が触れてきた。
同時に肩もぐいっと銀時の方へと抱き寄せられる。

「どうしたの、銀さん」
「あーいや、なんとなく」

匂いは記憶を蘇らせることがある。
金木犀が咲きはじめた頃、窓を開けて風で流れ込んできた金木犀の甘い香りをかいだ途端
名前は何年も帰っていない、もう帰ることもできない実家のことをふいに思い出し、
胸が締め付けられるような郷愁に襲われたことがあった。

名前はあまり悲しい気持ちや不満、そういったことを口に出さず内に溜め込んでしまうところがある。
それは相手に負担をかけまいとする心からなのだが、
彼女の夫である銀時は、いつもどんな時もおちゃらけてるように見えるが、物事の深い部分まで見通す眼差しを持っていて、
それは特に最愛の妻である名前に特に発揮されるようだ。
その時も名前がなにか深い寂しさを抱えているのがわかったのだろう、
黙ってその広い胸に名前を抱き寄せてきたのだ。
名前も銀時がなぜ今自分を抱きしめてくれるか聞かなくてもわかっていて、
二人はしばらくそよ風に乗ってくる金木犀の香りの中、しばらく抱きしめあった。
銀時の愛情をひしひしと感じながら、名前はさみしさを無理に我慢しなくてもいいんだと、
名前の身体と心をしっかり支えてくれる夫に感謝した。

「銀さん、ありがとう」
「何が。俺ァただかわいい奥さん抱きしめたかっただけだかんね」
「ふふ、お好きなだけどうぞ」
「んなこと言うと常に離さねぇぞ」
「それは困っちゃうかも」

銀時に肩を抱かれたまま、名前は重なっている画用紙を一枚横へずらす。
次に出てきたのは、大きなケーキを作っている絵だった。
すぐにわかる。10月10日、銀時の誕生日に皆でいちごのケーキを作った時のものだ。
あの時は大変だった。
子供達は銀時に内緒にしたいと言って、秘密保持の為にかたくなに父親である銀時と口を利こうとしないし、
銀時は銀時で、自分の誕生日だからと名前にここぞとばかりに甘えてくるわで、一日てんてこまいだった。
が、今では楽しかったことしか思い出せない。
俺の誕生日にガキ共が冷たいんだけどー、と甘えた口調で言葉をこぼす銀時の手を握ったら、
きゅっと握り返してくれたその手の強さ。悪戯っぽい瞳。
薄々気付いてただろうに、ケーキを持って登場した子供達の得意げな笑顔に満面の笑みを浮かべたあの嬉しそうな顔。
全て、絵の中に描かれてる。書かれていない部分まではっきり思い出せる。幸せな時間だったからだ。

「また来年も俺の誕生日にでっけーケーキ頼まァ」
「うん!」

鮮やかなクレヨンの色を目に焼き付けるように、名前はやさしい瞳で絵を一枚一枚丁寧に箱の中へ入れていった。

「大事にしまっておかなくちゃ」

箱の中には思い出と幸せが詰まっている。
ありのままを写す写真とはまたちがい、子供達の素直な気持ちまで余すことなくありありと描かれているように思うのだ。

「これはさすがに捨ててもいいんじゃね?」

箱の底の方からぺらりと銀時が引き出したのは、ただの広告で、
その隅っこに、まだ予備が幼児だった頃、赤ちゃん用のクレヨンで書いた丸や線が強い筆圧で描かれている。

「だあめ。これも大事な思い出なんだから」

同じようなのが何枚もあるんですけど、という銀時の言葉を頬への口付けで黙らせて、
名前はゆっくりとした動作で子供達の絵を入れてある箱に蓋をした。






□・みんな(新八、神楽、夫婦、子供達、定春、お登勢さんやたま、キャサリン)で
 どこかでわちゃわちゃと焚き火で焼き芋パーティー
 ・空気の入れ替えの為に窓を開けると金木犀の甘い香りがして、
 もうこんな季節かぁ、なんて考えてちょっぴり切ない気持ちになった奥さんと、
 何かぼんやり考えてる奥さんを見つけた銀さん
 ・銀さんのお誕生日にサプライズのお祝いをしようと頑張る子供達と、それを微笑ましそうに見守ってフォローする奥さん
□銀さんの子供達がお誕生日サプライズに奮闘する話
 銀さんの大好きなイチゴケーキを作ろうと、毎日こそこそ練習する子供達。
 ばれない様にするあまり、銀さんに素っ気ない態度をとる。
 事情を知らない銀さんは寂しさのあまり奥さんにグチる(と言うかどさくさ紛れに甘える)。
 10月10日は「手と手の日」や「萌の日」らしいので、それを口実に銀さんが手を繋なごうとしたり、
 メイド服を奥さんに強引に着てもらおうとする



黎さま、masakiさまのリクエストで書かせていただきました!
遅くなりまして申し訳ございません!
長編銀さんは空気が安定しているのでとっても書きやすくて、書いているとほっといたします。
リクエスト本当にありがとうございました!!

2017/12/23 いがぐり

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