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企画
濡れた髪(坂田)

推測の域を出ないが、名前はかなりの割合で夜兎の血が入っていると思う。

神楽と並ぶとよくわかる。
地球人には見られない透き通るような色白さが、二人並ぶとより際立つ。
まるでどこぞの令嬢のように可憐な容姿であるにも関わらず、それに似合わぬでたらめな強さを誇っている。
そのくせ照りつける太陽には滅法弱い。

ずっと一緒に居た。
松陽先生が孤児だった名前のことを、俺を拾ってくれた時のように、
あの、どこまでも穏やかな笑みを浮かべながら連れて帰ってきたその日から今日までずっと。

初めて会った日。
彼女が落ち着くまでしばらく待ってくださいねと松陽に言われていたが、
どうしても新参者に興味と、そしてほんの少しの嫉妬心が押さえ切れず、名前のいる部屋に一人忍び込んだ。
驚いた。名前が、信じられないほど可愛かったからだ。
怯えるような瞳は飴玉のように美しく、櫛を随分と入れていないであろうもつれ汚れた髪でさえ、
そのかわいらしさを一欠けらも損なわせていなかった。
布団で身体を包み、背中を壁におしつけるようにして全てを警戒している名前は、
俺を見て気の毒になるくらい動揺していた。

「……こないで……」
「お前、名前なんてーの? 俺は坂田銀時」
「……苗字、名前」

布団から出た細い素足は着物がめくれ腿まで見えていた。
幼い俺は、それで欲情という衝動を知った。
思わず手を伸ばすと、ビクッと身体を震わせて逃げようとする。
だから布団の間から一筋垂れていた長い髪を手ですくい上げるだけで我慢した。

いつも笠で綺麗な顔を隠し、自分達と共に暴れまわっていた。
いつだって名前の背中を護り、同時に護られていた。
こんなちゃらんぽらんな男に惚れられちまったのが名前の運のつき。
戦のドサクサに紛れ身体の関係を持った。自分だけのものにしたかったからだ。
誰よりも名前の幸せを願ってるくせに手放すこともできず、俺達は今も一緒に暮らしている。



「どうして私がいるのにキャバクラ行くの? 嫌だって言ったよね」
「るせーな、男には付き合いってモンがあんだよ」
「それならそれで、もっと申し訳無さそうにすればいいのに。私といる時間も大事にして欲しい……」
「俺にゃ名前が一番ってわかってんだろ。名前が世界一可愛いし世界一愛してるって」
「むう……信じないもん。今の銀時は可愛い女の子に会える嬉しさにウキウキしてる変態おじさんにしか見えない」

ぷうっと頬を膨らませて俺を見上げる名前の可愛いこと。
俺はキャバ嬢に会えんのが楽しみってわけじゃねえ。
たまに妙にこの顔がみたくてたまらなくなる日があるだけだ。
でなけりゃこんな大雨の日に長谷川さんからの誘いに乗んねーよ。

「あんまりうるせーこと言うと朝帰りすんぞ。俺意外とモテんだかんな」
「それって浮気宣言なの?」
「だったらどうすんだよ」

ただの他愛ない言葉のじゃれあいのつもりだった。
何を言っても、名前は俺の傍にいると。
そう信じ切っちまって、俺は時々最悪のヘマをやらかす。

「私しか見てくれないならもう無理だよ……」

名前の顔が陰りを帯びる。
俺のことでこれほど落ち込んでくれる様が愛しい。喜びにも似た感情が俺の腰を痺れさせる。

「ハッ、笑えるね。こんだけ長いこと一緒にいて、そうすんなり別れられたら苦労しねぇだろ」
「その言い方、まるでずっと一緒だったから私と仕方なくいるだけで、別れることができるならそうしたいみたい」
「んなこた言ってねぇだろ。あー、でもあんま鬱陶しいこと言ってっとその内そーなっちまうかもな」

俺の言葉にびくっと肩を震わせると、ふいっと名前は勢い良く顔を逸らした。
ちょといじめすぎたか。こんな時に限って場を和ませてくれる新八も神楽も定春もいねぇ。
今の全部嘘でしたと、言おうかと口を開きかけたが、名前の方が数秒早かった。

「銀時なんてキャバクラでもSMクラブでもどこへでもいけばいい。私も出てく」
「どこ行く気だよ」
「行こうと思えばどこにだって行けるよ」

名前がいない万事屋を想像して背筋がぞっとした。
思わず名前の腕を掴む。しかし俺の指先は空を掴んだだけだった。
すばしこい。こいつの一番の武器はその素早さだ。
逃げようと思えば俺からだって逃げられる。

「外は雨だ。行くな、風邪ひいちまうだろ」

俺の言葉にこたえず、目に涙を浮かべた名前は背中をくるりと見せて駆け出した。
追いつけないのはわかっていたが、俺も雨の中名前の背中を追いかける。

名前が時折俺をちらりと振り返る。
その隙に差を詰める。息が上がる。俺ももう若くねぇんだ、勘弁してくれよ。
そう思うが、足は全力で名前のことを追いかけている。

毎日、俺が昔買ってやった安物の櫛で一生懸命手入れしてる髪が、雨に濡れちまってるじゃねぇか。
雨粒で身体に服が貼り付いてんぞ。その綺麗な尻の形を俺以外の男が見たらどーすんだ。
クソ、と悲鳴を上げる足を死ぬ気で動かし今度こそ、名前の手首を掴んだ。

はあはあと、さすがの名前も荒く息を紡ぎ、辛そうに呼吸を繰り返している。
俺は笑いながら名前の身体を抱き寄せた。抵抗されたが、離してやらなかった。

「浮気なんざできねぇ。キャバ嬢なんて興味ねぇよ。名前の嫉妬してる可愛い顔が見たかっただけだ。悪かった」
「………ばか、っ!」
「はいはい大馬鹿野郎ですよ」
「ばかばかばかばか!」
「どんだけでも言ってくれていいから、ほら帰るぞ。マジで身体冷えてんじゃねえか」
「銀時のせいだもん……!」

名前がぴょんと両足を腰に絡みつけるように飛びついてきた。ガキか。
俺はそのまま名前を抱きしめ家に帰った。
玄関に着くなり名前の唇を奪う。肌が白いから唇に何も塗ってなくても赤くふっくらとしている。
その唇をぺろりと舐め、また深く唇を重ねた。

濡れた服は脱がしにくい。ボタンひとつひとつ取る余裕も無く、名前の身体から服を剥ぎ取る。
廊下に重い服を放り投げ、名前の胸に顔を埋めた。

「心臓、ドキドキしてる。久々に全力疾走したからかな」
「もしかして緊張してんの? 優しくすっから全てを俺に任せとけ」
「あはは、銀時とはじめてした時、全然優しくなかったこと思い出した」
「そういうことは思い出さなくてよろしい」
「すごくガツガツしてたよね」
「腹へってたんだろ」

柔らかく笑う名前の額に唇を落とした。
他愛ない会話の間にも隙のない愛撫を受け、名前の表情は次第に笑みではなく切なげに眉を下げ艶めいたものへと変わっていく。
甘ったるい吐息を唇から漏らしはじめ、身体が火照ってくる。
俺達は、さっき喧嘩してたのが嘘のように、互いに強く抱きしめあった。

「どこにも行くなよ」
「………ん」

ゆっくりと自身を名前に埋めていく。
生暖かいそこは、いつだって俺を隙間無く包んでくれて、心を満たしてくれる。
根元まで埋め、しばらく動かず名前に口付けたり、頭を撫でてやったりしていると、
焦れたのか、名前の腰が微かに揺らめいた。

「ん、ぎ、……とき」

ああ、こいつの肌は白いな。
細い腰に手を添えて奥をつくと、短い喘ぎを上げしなやかな喉が目の前にさらされる。
雨音を聞きながら、薄暗い玄関の廊下で交わりあう。
外に音や声が漏れたって構やしねえ。この雨音が消してくれんだろ。
衝動のまま激しく互いを求め合う。

「……なあ、中に出していいか」
「で、でも、きょう、は、あんまり、安全な日じゃ……、ん、んっ、っ!」
「俺、お前とのガキが欲しい」
「っ、!」
「結婚しようぜ名前、そんでじーさんばーさんになるまでずーっと隣にいようぜ、なあ、」
「……ぅ、うん、うん、銀時、!」

昔から名前しか見てなかった。
それはこれからだって変わらない。

全てを名前の中へ出してからも身体を離さず重なったまま、
俺はとろんと瞳をぼんやりとさせて息を紡ぐ名前の濡れた髪を一筋すくい上げ、
目を閉じてゆっくりとそれに口付けた。




□夢主ちゃんが大好きで堪らない坂田さん
 夢主ちゃんは夜兎族或いはアルビニズムの女の子で、ふんわりと砂糖菓子みたいに可愛らしい子
 ちょっぴり不思議ちゃんで、坂田さんと同い年なら、攘夷時代、彼の背中をずうっと護ってきた戦える夢主ちゃん
 土砂降りの雨の中、ぐっしょりずぶ濡れで万事屋に帰った夢主ちゃんがあまりにも扇情的で、
 坂田さんががっつり欲情しちゃいましたなぬる〜いR18。ほのぼのとしているけれどとびっきり甘い雰囲気

□銀さん ヒロインちゃんは幼なじみ 切→甘 エロ入っても

□銀時相手で切甘
 些細なことで喧嘩して夢主ちゃん泣いちゃって銀さんがごめんね?みたいな感じ



電波。様、メク様、るりい様のリクエストで書かせていただきました!
全然切なくなくてごめんなさい〜〜!
幼馴染設定ってあまり書くことが無いので、とても楽しくて
あれもこれもと欲張ってしまってちょっとダラダラしてしまってすみません。
リクエストどうもありがとうございました!

2016/10/24 いがぐり

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あきゅろす。
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