企画
音羽慎之介(3Majesty)
味、香り、口に入れた瞬間の舌触り、口の中でのとろけかた。
見た目にこだわる時間は無かったけれど、慎之介さん好みの味になるよう、チョコレートにはとことんこだわった。
そんな私の作ったトリュフを、慎之介さんは慎重に箱の中から一粒取り出し、少し顔を傾げるようにして微笑む。
「ありがとう名前。美味しそうだね」
「慎之介さんのお口にあうといいんだけど」
「うん。でもひとつ、大事なものが足りてないみたい」
「えっ、ごめんね、やっぱりちょっと飾り気が足りなかったかな……」
「ううん。そういうんじゃないんだ」
くすりと、柔らかく笑った慎之介さんは、トリュフを見つめ、そして私をドキリとするくらい深い瞳で見つめてくる。
私の家のテーブルは小さい。一応椅子は二脚あるけれど、向かって座るとすぐ近くに慎之介さんの顔があるから、
こうしてじっと見つめられると、キスされるんじゃないかってどきっとしてしまうのだ。
「このままでもきっと最高の味なんだろうけど、仕上げに魔法をかけてくれなくちゃ」
「まほう?」
「うん、魔法。名前にしかかけられないんだ」
そう言ってお茶目にウインクすると、慎之介さんは、指でつまんだトリュフを私の口元へ寄せてきた。
食べて、ということかと反射的に口をひらいたけど、トリュフは私の上唇にちょんと、軽い口付けのように押しあてられて、
ふわりと微笑む慎之介さんの唇に、ぽんと入っていった。
「すごい。僕、幸せを口の中に放り込んじゃったみたい」
目を閉じて、慎之介さんは口の中のトリュフをゆっくりと味わったあと、本当に嬉しそうに、そっとそう言った。
よかった、と胸を撫で下ろす私にくすりと笑って、慎之介さんは私の唇についたココアパウダーを指で払ってくれる。
本当に美味しい、と次のトリュフをつまみ、再び私の唇に。
「口の中でとろけたチョコが、本当に滑らかなんだ。どうやって作ったの?」
「それは秘密です」
「秘密の多い女の子もミステリアスで可愛いね」
慎之介さんの顔が近づいてきたと思ったら、唇に柔らかな慎之介さんの唇が重ねられた。
鼻に、甘く香り高いカカオと洋酒の香りがすっと抜ける。
うっとりとする香り。まるで慎之介さんの肌の香りのような。
それだけでうっとりと、酔ってしまうような甘やかな気持ちになる。
「大丈夫だよ、君の唇も忘れずに、順番に味わってあげるから」
「全部食べてからでもいいんだよ」
「んー、無理」
どっちも美味しいから、と慎之介さんは明るく笑う。
紅茶に砂糖を入れなくて良かったと思いながら、また重なってきた慎之介さんの唇を舐めた。
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