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企画
もやの中の永遠(坂田※)

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※イチャイチャやってます。ぬるいエロですが自己責任でお読みくださいませ
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坂田銀時という男はモテる。

自分ではモテないモテないと言っているが、モテる。
彼は、言葉は乱暴なくせに息をするレベルでさり気なくみんなに優しくするものだから、それに心を掴まれる女性達が後を絶たないのだ。

私も、掴まれてしまった女の一人なのだけど。

「いつもすみません、坂田さん」
「いいってことよ。オメーさんも仕事の合間に引越しの準備たァ大変だモンな。買い物くれーだったらいつでも呼べよ」
「ありがとうございます、遠慮なくそうさせてもらいますね」

いや遠慮してください。なんて思う私は心が狭い。
今日はこの人から、銀時とデートに行くって時に電話がかかってきたものだから、
邪魔されたような気持ちになって、ずっともやもやとした気持ちが晴れなかった。

先週、万事屋にやってきたこの人は、転勤が急に決まったため引越しまでの準備を手伝ってもらいたいと銀時達に依頼してきたのだそうだ。
パッと見、結野アナに似ている美人さんだからか、銀時はその依頼を即受けたと神楽が言っていた。
銀ちゃん鼻の下でれんでれんに伸ばしてたアル! って。
それから銀時達はちょくちょくこの依頼主さんに呼び出されたり荷物の梱包を手伝ったりしている。

前なんて、私が泊まりに行った夜に、残業で遅くなってしまったけどこれから梱包を手伝って欲しいと電話がかかってきたこともあった。
いくらなんでも遅い時間だから明日にしてもらってよと、心配する私の手を銀時はいいからいいからと引っ張るようにして、
万事屋の従業員でない私まで一緒に依頼主さんのお家に連れていった。
その時に初めて依頼主さんに会った。新八と神楽が言ってたように、銀時好みの美人さんだった。
彼女の勘。多分、依頼主さんは銀時と二人きりになりたかったんだと思う。
玄関を開けて銀時を見た後、私が横に立ってるのを見てちょっと眉を動かしたから。
ええええ、わかってます。お邪魔ですよね。
でも私は自分から行きたいという前に銀時に連れてこられたのだから、文句は銀時にお願いします。
そう思うと同時に、私が今夜万事屋にきていなかったら銀時はどうしたのだろうかと考えた。
依頼だからと、一人で行ったのかな。胸に灰色のもやがうっすらとかかりだす。
そのもやを手で振り払えればよかった。
けれど、後から後からたゆたうように、このゆっくりとも不安を掻き立てるもやもやとしたものは、私を覆うようにどこからかひっそり流れてくるのだ。

銀時は、自分は頼まれればなんでもやる万事屋だと言っているけれど、
いったいどこまでやるのだろう。



不安定な天気が続いていたが、今日は朝から晴れていた。
本当なら今頃、二人で映画を観てる予定だったのに、
たった一言「お願いしていいですか」という依頼主さんの電話で私達のデートはお流れになってしまった。
荷物持ちで呼び出された銀時は、その両手に荷物を全部持ち、私と依頼主さんは手ぶら状態。
銀時はなんでいつも私を連れてくるんだろう。神楽と新八は今日は元々休みだけど、私は従業員でもないし、何もすることないし居心地悪いから正直帰りたい。
けど、帰ったところで銀時と依頼主さんの距離が近づいてしまったらどうしようとか考えるんだ。

銀時、依頼主さんが並んで歩き、そして私が二人の後ろを歩いている。
あれ、なんか並び順おかしくないですか? なんて言いたくてもいえない。
二人は楽しそうにお喋りしてる。銀時はほんと美人に弱い。特に結野アナに似た人にはめっぽう弱い。

ぷつり、と不意に私の下駄の鼻緒が切れてしまった。
あわててしゃがむ。銀時達に待ってと言おうと前方を向くと、二人は後ろでしゃがんだ私のことなど全く気付いた様子もなく、普通に歩いていく。

私、いない方がいいのかな。

自嘲気味に唇を引きつらせて、どこか座れる場所を探す。少し遅れたところで前の二人はきっと気付かない。
裂いたハンカチと五円玉でできる応急処置で、なんとか鼻緒を繋げて歩けるようにはなった。
見栄えは悪いが帰るまでくらいなら余裕で持つだろう。

数分後、二人に追いつこうと急ぎ足で駆けていくと、依頼主さんのマンションの前で何故か立ち止まって銀時と依頼主さんが見つめ合っていた。

「坂田さんにもっと早く出会っていれば……」

切なげな眼差しで銀時を見つめる依頼主さんは、同性の私から見てもすごく魅力的だった。
銀時は、依頼主さんの気持ちが薄々わかっていたのだろう。
首の後ろに手をやりながら、少しだけ眉を下げ優しく微笑みかける。

「あー、まァ、なんつーか、またこっち来て困ったことがあったら呼んでくれや」

銀時はいつもこう。優しいのだ。恋心を受け入れることは出来なくとも、決して突き放したりしない。
それは昔付き合っていた銀時の元彼女だって同じだ。
もし彼女たちが困った時、辛い時、銀時に助けを求めてきたら、きっと銀時は当然のように助けに行くだろう。
そのことと私への気持ちはきっと違う。わかってる。銀時は私のことをちゃんと好きでいてくれている。
だけど、時々苦しくなるのだ。銀時がみんなにかける優しさに、嫉妬している。
こんなことで嫉妬する私は、銀時にふさわしい女なのだろうか。
みんなにとって大きな存在である銀時の横の、小さな小さな、見えないくらい小さな存在。それが私なのだ。

「明日、発ちます。今夜だけ……一緒に居てもらえませんか?」
「悪ィが、そいつはできない相談だ」

即答してくれた銀時にほっとする。

「名前さんがいるからですか?」
「つーか、どんな絶世の美女が誘ってこようが結野アナが誘ってこようが、俺が抱きてぇのは名前だけですからねー」
「……あら、のろけられちゃいましたね」
「すんませんね」
「いえ、ではこれで依頼したお仕事は終わりにさせていただきます。今までありがとうございました」

少し離れた場所にいたというのに、寂しげに笑う依頼主さんと目が合った。
依頼料が入ってるのだろう。厚みのある封筒を銀時に渡し、重そうな荷物を両手に持つと、依頼主さんはぺこりと頭を下げてマンションへ消えていった。
それを見送りながらがりがりと頭をかく銀時。断らなけりゃ良かったな、なんて思ってたらどうしよう。

「で、名前はそこでコソコソと何してんですかー」

びっくりした。
振り返った銀時は、まるで私が最初からそこに居たことを知っていたかのように、にいっと笑っていたからだ。

「二人で、何か話してるみたいだったから……」

そのつもりはなくても立ち聞きしてしまっていたのだ。気まずくて視線を地面へ落とす。
すると「どうしたんだソレ」と、こちらへ歩いてきた銀時が私の足元にひょいとしゃがんだ。

「あ、さっき鼻緒が切れて」
「なんだこれ、んな適当に結んだら指の間切れんぞ。ちょっと貸せ」

言うなり銀時に片足から下駄を抜かれ、私はよろけそうになって銀時の肩に手を置く。
がっしりとした肩は、私なんかが寄りかかってもびくともしない。
銀時は器用にちょいちょいと、私が適当に応急処置したハンカチの結び目を綺麗に結び直すと、
すごく丁寧な手つきで私の足に下駄を履かせてくれた。
その何ともいえない柔らかな表情に、私の胸は痛いほど熱くなる。

「……ありがとう、さっきより痛くない」
「だろ」

するりと、銀時の手が着物の裾から入り込み、私のふくらはぎを撫ぜていった。
誰も通っていないのをいいことに、銀時は私の着物の上から腿の部分に唇を当ててくる。
そして伏せていた瞼をゆっくりと開くと、穏やかな瞳で私を見上げた。
その前髪を指に絡めると、更に嬉しそうに笑う。気を抜くと泣きそうになる私の手をしっかりと握ってきた。
今この瞬間、銀時の持つ優しいところ、素敵なところ、かっこいいところ、全てをひとつにして、全部私へ注いでくれている。
そんな風に思えてしまうような素敵なひとときだった。私の嫉妬なんて、綺麗に吹き飛ばされてしまう。

「うし、デートの続きといきますか。時間は遅れちまったけど次の上映時間には間に合うだろ」

手を繋いだまま銀時は、よっこいせ、と立ち上がった。
私は銀時の唇から目が離せなかった。着物越しでなく、肌に直接その唇で触れてほしい。

「映画はまた今度でいい。二人きりになれる場所に行きたい」

その手をぎゅっと握り、銀時に甘えるようにもたれかかった。



「……ぅあ、ふ、……っ、あ、あ、ぎんとき……!」

銀時は、普段あれだけお喋りなのに、行為中は色っぽい吐息を聞かせてくれるだけで、言葉はほとんど紡がない。
だらしのない私の喘ぎにニッと笑うと、ぐぐっと上半身を近づけて、唇を重ねながら奥を丹念に突いてくる。
まだ陽のある内からの、カーテンを閉めたセックスに、私も銀時も興奮していた。
自分の家なのに自分の家ではないような淫靡な空気が漂う薄暗い部屋で、男女の理想をそのまま現したような銀時の肉体が、私と重なり合っている。

膨張しきった銀時のそれが私のぬるつきで滑る様に繋がったままなかをいったりきたりする内に、
快楽はどんどん深まり、熱が溶け合い、頭が真っ白なもやに包まれていく。
それはとても気持ちいいもので、灰色のもやなんかとはぜんぜん違うものだ。
きっとこの先何度でも、銀時のことで気持ちが灰色のもやに包まれることがあるだろう。
けれどこうして身体を繋げ合っている時は、銀時の無言の愛情にしっかりと包まれて、そんなものは何もこわくなくなる。

仲の良い老夫婦のように、身体の交わりを必要としないくらいの安定した信頼関係にあこがれていた。
銀時となら、二人でゆっくり時間を積み重ねて、そうなっていけるのではないかと思う。
いつまでも、ずっと。寄り添いながら。
頭の中の白いもやの中に銀時との永遠を願いながら、私は泣き声のような喘ぎを上げた。

「銀時……すき、……、っ、」
「………っ、ああ、」

銀時の、限界が近い。ぽたりと汗が私の首筋に落ち、腰の動きが早くなる。
ぐ、と銀時が唇を噛んだ。私が下半身を締めながら銀時に抱きつくと同時に、銀時の小さな呻きが耳に響く。
一瞬で弾ける快感、開放感、それらを含んだ色っぽい銀時の吐息に、私も果ててしまった。
身体はもうじゅうぶん快楽に昇りつめていていつ絶頂に達してもおかしくはなかった状態だったけれど、
銀時の達した時の声で私もいってしまったってことは内緒にしておこう。



「銀時は、私のことで嫉妬することなんてある?」
「あるんじゃねえの? いや銀さん名前と違って大人だし、顔には出さないけどね」
「大人って、私と銀時同い年だったような」

タオルケットで情事後の素肌を隠しながら、足先に手を伸ばす。
銀時が結びなおしてくれたおかげで、足の親指と人差し指の間の皮膚は少し赤くなっただけですんだ。
もしあのままだったら、きっとここは皮膚が擦れ、血が滲んでいたに違いない。
そんな私の足先に、銀時がそっと触れてきた。

「名前の昔の彼氏はサ、金持ってたじゃん」
「へ、突然どうしたの?」
「だからよ、鼻緒が切れた時なんかもさっと新しいのプレゼントしてたんだろーなーとか考えてだな、ってこれ嫉妬じゃねぇな、ただの貧乏人の僻みか」
「私は! 銀時に直してもらえて嬉しかったし、幸せな気持ちになったよ。だからお金とか関係ない」
「名前ちゃんは可愛いよなーそういうとこ」

銀時の手が私の頭にのせられる。
撫ぜられるかと思ったら、後頭部を引き寄せられ深いキスをされた。

「可愛くないよ。心の中はいつも、もやもやウジウジしてるもん」
「自信持ってろ。俺ぁ名前のこと一時でも離したくねぇほど惚れてんだ」
「………だから私を連れていったの?」
「ん? どこに」
「ほら、今日の依頼主さんのとこ。夜も、今日も、一緒に行くぞー、って」
「ああ。それもあっけどよ、新八神楽がいねぇ時に他の女と一緒にいたくねぇんだ。オメーを誤解させることだけはしたくねえ」
「銀時……」
「銀さん、テメーの彼女にゃ誠実ですからねー」
「うん、ほんと。そういうところも含めて大好き」

銀時はどこまでも優しい。自分以外の人みんなに、分け隔てなく親切だ。
だから少し、嫉妬してしまうこともある。心配になることも。

だけど、銀時にこうして言葉をもらうだけで私は心から安心できるんだ。



□銀さんで昔の女性関係のお話で、ヒロインが気にしてしまい嫉妬して銀さんもヒロインの昔の彼氏を気にしてお互いモヤモヤしてしまう、R18なお話
□銀さんに告白してくる女の子にヒロインが嫉妬してしまうお話

森さまのリクエストで書かせていただきましたー!
シリアス気味なお話は、自分からは滅多にかかないのでリクエストいただけるとつい張り切りまくり、
どうしても長めになってしまう傾向にあるのですが、最後まで読んでくださってありがとうございました!
とっても楽しく書かせていただきました。
森さま、素敵なリクエストをどうもありがとうございました!

2015/11/03
いがぐり

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