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企画
4,自慢大会(+長編銀さん、土方夫婦)

蒸し暑かった夕方から、ようやく涼しい風が吹いてきた夜にさしかかろうとする時刻。
この流しそうめん大会の一応の主役である本日誕生日を迎えた沖田総悟は、
恋人名前と手を繋ぎ、すでに盛り上がっている会場へのっそりと現れた。
それに気付いた隊士達がおめでとうと口々に言いながら沖田と名前に飲み物を渡し、次々と杯を交わしだす。

「こんばんはー」

真選組の隊士、女中達で盛り上がる中、よく通る声が誰にでもなくかけられた。
それにいち早く反応したのが近藤である。

「お、お、お、お妙さんんん! きてくれたんですか!」
「ええ、流しそうめんってきいたものだから、皆でお邪魔させてもらいました」
「え、みんな!?」

近藤が顔を険しくしながらお妙の後方に目をやると、
「甘いモンもある?」と万事屋の坂田銀時が気だるげに周囲を見回し、
「わっほう! あのそうめん全部食べていいアルか!?」と神楽が飛び上がらんばかりにはしゃぎ、
「へェー、流しそうめんなんて風流だなあ」と眼鏡の志村新八が関心したように笑い、
「すごいねえ、こんな本格的な流しそうめんなんてはじめて」と銀時の妻が目を輝かせ、四人揃って会場に入ってくる。

「なんであいつらまで呼んだんですか!」
「大勢でやったほうが楽しいでしょうから弟達も誘ってきたんです。別に構いませんよね?」

お妙の迫力のある微笑みに近藤は真っ青になりながらコクコクと頷いた。



竹に流れる水に乗って、そうめんがするりするりと移動していく。
それを箸ですくおうとして失敗して笑う隊士、からからと笑う女中。
男達が多いので少々むさ苦しいが、それでもその中で人の合間をひらひらと泳ぐ金魚のように愛らしい浴衣を着た女中達や、
元気よくぴょんぴょんと飛び跳ねている神楽、微笑むお妙がこの会に花を添えていた。

全員、それぞれがこの場を穏やかに楽しんでいた。
近藤はお妙の周囲をうろつき、お妙はそれを完璧に無視して神楽と新八と流しそうめんではしゃいでいる。

「お、旦那じゃねーですかい」
「よー沖田君、誕生日なんだって? おめっとさん」
「どーも」

紙皿に山ほどおにぎりやから揚げをのせた銀時が、沖田の方へ近づいてきた。
それとは逆方向からも、沖田に近づいてくる者が居る。
紙コップに入れた麺つゆの表面がみえなくなるくらいマヨネーズをかけたものを持った土方だ。

「ゲ、万事屋。なんでここに居やがる」
「おたく達の大将に誘われたんだよ」
「近藤さんが誘ったのはテメーんとこの眼鏡の従業員の姉ちゃんだけだろ」
「つーかオメー、なんで気持ち悪ィそうめんの食い方してんだ。それ何。地球上の食いモンとは思えねえんだよどっか他所の星行って食え」
「テメーこそそれ持ってっていいから三秒以内にこの地球から消えうせろこの天パが」
「んだとコラ」

「あー始まっちまった」

鬱陶しいことになる前にこいつらを止めるヤツは……、と沖田が顔を見回すが、
この言い争いを止められそうな女性二人は揃って名前と仲良さそうに話し込んでいた。
こうしてみると、三人ともとても目立つ。恋人の欲目、ではないが、名前をはじめとしてこの三人の周囲だけ、違う空間ができているかのように見える。
姿勢よく、凛とした佇まいでゆるやかに微笑む名前、
周囲を柔らかく優しい空気で包むように穏やかな表情を常に絶やさない銀時の妻、
そして土方の妻はまるでその二人の妹のように、無垢な瞳で真っ白な歯を見せ楽しそうに笑っている。

「その髪飾り、とっても素敵だね。本物のバラだよね」

そう言って銀時の妻が名前の髪に刺したバラの花を見て顔を綻ばせた。

「私もそう思いました!本当によくお似合いです」
「ありがとうございます。でもごめんなさい、総悟にってプレゼントしてくれた花束なのに」
「いえいえ、このバラも美しい方のお役に立ててきっと喜んでます」

土方の妻が本心からの笑顔を浮かべ、うんうん、と銀時も妻も頷いている。
名前は二人に褒められて、恥ずかしくも嬉しそうだ。
それに比べて男共はどうだろう。
いつの間にやらいつものように、話が変な方向へむかっている。

「つーかオメーよォ、ちっと奥さんが可愛いからって調子こいてんじゃねェぞ。俺の奥さんだってめっちゃ可愛いんだかんね」
「確かにな。テメーにゃもったいねェくらいの良い女だよな。だからいつダメ亭主に愛想つかしてどこぞに逃げてってもおかしくねーぞーせいぜい気ィつけろ。
 ま、その点、俺の女房は絶対に俺から離れないから安心だけどな」
「俺の奥さんだって離れませェーんー、俺達永遠に一緒なんですぅー」
「そりゃ相手が気の毒ってなモンだ。こんな腐れ天パと永遠なんて地獄だ地獄」
「んだとニコチンマヨ野郎。マヨネーズの海に溺れて息絶えろ」

スチャ、と、沖田はどこからか出してきたバズーカの照準をピタリと銀時と土方の頭部へと定めた。

「うるせーですぜ、今すぐその口閉じやがれ。ったく。いい歳した大の大人が何バカらしい言い合いしてんでィ」

バズーカを向けられた二人が真っ青になって揃って口を閉じると、沖田は視線を上げ穏やかな声を出す。

「名前達を見なせェ。三人にこにこ楽しそうじゃねーですか。アンタ達もどーでもいい口喧嘩はやめてあの美人達でも見てろィ。
 ……ま、一番美人なのは俺の名前ですけどねィ」

ピキリ、と銀時と土方の誰にも負けないと自負してる愛妻家としての心に勢いよく火のついた音がした。

「そりゃ聞き捨てならねェな総悟」
「あのさあ沖田くん、あの三人は確かに上玉だよ。けどね、誰が一番美人かなんざ、それは人それぞれ違うだろ。まあ俺の奥さんに決まってるけどね」
「俺の妻の可愛さならどこの誰にも負けてねえ」


沖田の最後のついうっかり漏らしてしまった本心による一言により、
今度は沖田、土方、銀時の三人の、自分の連れ合いが一番可愛いという決着のつかない言い争いが始まってしまったという。



■真選組が彼女や奥さん込みで流しそうめん大会するなんて話
■沖田さん、土方さん、銀さんが自分の彼女、夫婦を自慢しあうお話

のリクエストで書かせていただきました!
穏やかな女性陣に比べて男達の大人げのなさ!(笑)
とてもニヤニヤしながら書きました。
嬉しいリクエストどうもありがとうございました!

2015/07/08 いがぐり

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