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企画
沖田総悟(年上女中)

「名前さんからもらったチョコ、朝飯の時にどう足掻いてもチョコもらえそうになくて目ェ死んでる野郎共に見せつけてやりながら食いやした」

すげー美味かったですぜ、と目の前でにっこり笑う上機嫌な様子の沖田に、
名前は複雑な笑みを浮かべ「それはよかった……」としか返事できなかった。

日曜日とはいえ朝から仕事だった名前は、
バレンタイン当日である今朝、身支度を済ませるなり沖田にチョコを渡し風のように仕事へ向かったのだ。
自分の作ったチョコを食べる姿を見たいなと少し思っていたが、
沖田の話が本当なら食堂はさぞ微妙な空気に包まれていただろうと想像すると、
どうやら見なくて正解だったかもしれない。

「どうしたんでィ、どっか痛みやす?」
「いや、全然元気」

沖田は名前の両肩に手を置くと、真剣な顔で名前の顔を見つめてくる。

「部屋で横になってなせェ。俺がすぐ襲いにいきやすから」
「あのね、いま仕事中!」
「全部は脱がなくてもいいんですぜ。下だけ脱げば」
「さーて、次はお洗濯干さなきゃ」
「おっと待ちな」

くるっと背を向けて歩き出そうとする名前を、沖田は背後から抱きしめてきた。
力強い腕に閉じ込められた名前は、ここが屯所の廊下だということに、いつ誰が通りかかるかひやひやしながらも、
胸の前でしっかり組まれた沖田の手にそっと、自分の手で触れる。

「……ちゃんと礼を言ってなかったと思いやして」
「いいんだよ。だって私の気持ちを受け取ってもらっただけなんだから」
「名前が好きだ。チョコ、嬉しかったですぜ」

唇を名前の耳朶に付け、沖田は抑え目な声で名前にそう囁く。

「それはこっちの言葉でしょ。今日は女の子が好きな人に気持ちを伝える日だよ」
「……名前さんひょっとして自分のことまだ女の子って思ってるんですかい。年齢考えてくだせえよ」
「うるさいっ! そういうのに突っ込まないで!」
「はは、」

沖田が名前を抱きしめていた腕をパッと離す。
凛として、背筋を伸ばしどんな仕事もテキパキこなし、
迫力ある見た目の隊士達にも落ち着いて堂々と接する名前が、沖田の前では表情豊かだ。
包み隠さず素の表情で、沖田の言葉に拗ねている。

「どうせ総悟より年上ですよ」
「そりゃ事実じゃないですか」
「可愛くないし」
「つーかアンタは美人なんで」
「っ!」

かあっと頬を染める名前は可愛い。
沖田は微笑み名前の頬に手を滑らせる。

「俺のこと、どう思ってるか言って下せェよ。今日はそういう日なんでしょ」
「……いま、ここで?」
「ここで」

もうわかってるくせに、という名前の言葉はにこりと笑って無視された。
名前は困った人、と顔を緩ませながら、ゆっくり沖田に自分の気持ちを唇に乗せる。

「好きだよ、総悟」
「80点ってとこだな」
「100点でしょ! 満点でしょ! あと20点、何が足りてないわけ?」
「キス」
「ここではできません」
「だから20点マイナスなんでィ」

そう言って極上の微笑を浮かべた沖田は、ちゅ、と不意打ちで名前の唇を掠め取っていった。





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