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企画
恋する女(沖田)

「アンタみてェに綺麗な女、俺みたいな人斬りと一緒にいるべきじゃありやせん」

意を決して告げた気持ちに、総悟くんは静かに首を振る。

「あなたのことが好きなんです」
「わかってた。名前は単純馬鹿でわかりやすいからねィ」

私を綺麗なんて言うけれど、総悟くんの方がよっぽど綺麗だ。
寸部の歪みもなく整った麗しい顔に、困ったような笑みを浮かべて、総悟くんは地面に落としていた視線を私へと持ち上げる。

「私の気持ちは迷惑でしたか?」
「いいや。迷惑ならとっくにアンタの前から消えてらァ」
「総悟くんの気持ちが知りたい」
「知ってどうするんでィ」
「私と同じ気持ちなら、受け入れてくれるまで待ちます」
「残念ながら俺の気持ちは名前と違う」

数ヶ月前、酔っ払いに絡まれた私を助けてくれた真選組の総悟くん。
私より2つ年上なだけなのに、あの真選組の一番隊隊長だと聞いて驚いた。
次の日に屯所までお礼を言いに行って、そこから少しずつ、話すようになった。
見た目と中身のギャップにはびっくりしたけれど、それでも好きになるのに時間はかからなかった。

「昨日、手を握ってくれた」
「……それは、歩くのが呆れるくらいトロかったからでィ」

ズボンのポケットに手を入れて、総悟くんが言葉を濁すように小さくつぶやく。
その言葉が嘘だということは、すぐわかった。
総悟くんも私にその嘘が見抜かれてることに気付いたようで、バツが悪そうに肩をすくめる。
私だって、総悟くんが本気で迷惑がっているなら振られてここまで食い下がったりしない。
総悟くんのまなざしは、態度は、いつだって私だけに特別優しかった。思い上がりなんかじゃない。
だから諦めきれないのだ。

「離したくないって、言ってた」
「離したくないですぜ、今でも」

今度は即答だった。私を真っ直ぐ見つめ、一ミリも視線を逸らさずはっきりと唇を動かして。

「!、なら、」
「あーあ、本当にいいんですかい」

総悟くんはふうと一度溜息を吐き、すっと目元を緩め笑った。

「名前は俺のこと好きだと言いますがね、俺の気持ちはそんなモンじゃねえ。それ以上にアンタのことが好きなんでさァ」
「え、ほ、本当!?」
「一度俺のものにしたら離してなんかやりませんぜ。いいんですかい」
「いい、嬉しい」
「とことん束縛しやすぜ」
「うん」
「……人を殺すこの手でアンタを抱いてもいいんですかい」

じっと表情なく地面を見つめる総悟くんは、きっとこのことを一番聞きたかったに違いない。
私は思わず、その右手を両手で握った。
驚いた顔で、総悟くんが顔を上げる。

「あなたのことなら、そのまま全部受け入れたい」

受け入れきれなくなっても知りやせんぜ、と総悟くんが嬉しそうに笑う。
腕を引き寄せられて、総悟くんの胸の中に閉じ込められた。

「やっぱ名前は綺麗だ。顔も、心も」

総悟くんの首に巻かれたスカーフの、その真っ白さがやけに眩しく見えて思わず目を瞑る。
そっと心の中で総悟くんにごめんねと謝った。私の心はどろどろだよ。
みっともないくらいあなたのことが好きなんです。

綺麗だなんてとんでもない、私は総悟くんに好かれようと必死なだけの、ただの恋する女なんだから。



■沖田さんで、年下ヒロイン

のリクエストで書かせていただきました!
十代のみずみずしくも必死な恋愛は、書いていて新鮮でとてもわくわくいたしました。
リクエストどうもありがとうございました!

2015/05/20 いがぐり

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