企画 ボルテージ(琉夏) 「琉夏くんなら絶対に来ると思ってお菓子用意して待ってたのに…」 「ごめん、ほんっと悪かった、だから許して?名前」 琉夏はひたすらこの調子で謝り続けているのだが、そもそも琉夏が名前との約束を破ったとかそういうわけではないのだ。 ハロウィンの夜、琉夏なら約束していなくても自分の元にやってくるはずと名前が勝手に思い込んで待っていただけなのだ。 そして次の日盛大に拗ねたものだからたまらない。 琉夏にとってはこういうところも可愛くて仕方がないのだけれども。 「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ、ってお菓子が無かったら琉夏くん本当にいたずらしてきそうだからと思ってたくさんお菓子作ったの」 「俺の場合、お菓子くれてもいたずらしちゃうぞ、だけどね」 「ネコ耳のカチューシャとか用意してたんだから」 「見たい。いや、見せてください。今夜行くから、それ付けて俺を待ってて」 「でもハロウィン終わっちゃったもん」 「いいの。名前のネコミミ見なきゃ俺のハロウィンは終わらない。いや、終われないね」 ここまで言って、やっと名前の機嫌が直ってきた。 瞳にいつもの輝きが戻り、はにかみつつ琉夏を見上げる。 「あのね、琉夏くんの衣装も用意してるんだよ、着てくれる?」 「もちろん。で、どんな?」 「あのね、シンデレラ!」 「………ん?」 「琉夏くんの綺麗な金髪に映えるかなってキラキラしたティアラも買ったんだ、写真とろうねっ」 「ははは、すげーたのしみだー」 くらりと立ちくらみがした琉夏は、その元凶である名前に向かって倒れこんだ。 とはいっても、力を加減してそっともたれかかったような格好だったので、名前はびくともしない。 「琉夏くんどうしたの?」 少し心配げに肩口に顔を埋める琉夏の頭を優しく撫ぜてくれる名前に、さて今夜どんないたずらをしてやろうかと考えるだけでボルテージが上がる琉夏だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |