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企画
離れない離さない(長編銀さん)

「手袋に、マフラー、カイロも持って、と」

名前さんは、寒さがどうも苦手なようで、
ちょっと外に買い物に出掛ける時でも物凄い重装備だ。

「新八くん、お留守番よよよろじぐね」

玄関にきただけで、もう語尾が震えだすくらい寒いらしい。
確かに今日の寒さは格別だ。
名前さんほどじゃないけど、廊下の床や空気の冷たさが身に染みる。
そういえば、午後から雪がチラつくと今朝の天気予報で言っていた。

「名前さん、やっぱり僕が買い物行きましょうか?」
「ううん、大丈夫」
「でも寒いの苦手なんでしょ」

そう言った僕に、名前さんはとびきり可憐に微笑みながら、「でもね」と、視線を僕の背中の向こうへ飛ばした。

「銀さんが一緒に行ってくれるから」

鼻の先を赤くして、まるでこれから雪遊びする子供のように、名前さんは嬉しげな顔でそんなことを言う。
銀さんに対する無垢な愛情がひしひしと伝わってくるようだ。
そのあまりにも綺麗な表情に、僕は思わず見惚れてしまった。
そんな時、がし、と僕の頭に大きな手が乗せられる。
いきなりそんなことされて驚いた僕は、ビクッとちょっとみっともないくらい大きく背中を震わせてしまう。
振り返ると、「銀さんが何だって?」と口元にゆるく笑みをたたえた銀さんが居た。

「銀さんが、寒いなか私と一緒にお買い物行ってくれるから嬉しいなって、新八くんに話してたの」
「俺が『名前と離れたくない』っつってついてきちゃうのーなんて話してたんだろー」
「そんな話してないよ、それに私が銀さんと離れたくないから一緒に行こうって誘ったんだから」
「そーだっけ? でも俺の方がオメーさんと離れたくないっつー気持ちは大きいかんね」
「私だって大きいよ」
「俺にゃかなわねーよ」
「どっちでもいいわ!!」

延々と続きそうな会話に、とうとう僕は切れた。
銀さんは、こんな時だけムカつくほど余裕たっぷりの大人の笑みを浮かべ、
僕の頭に乗せたままの手を動かし、雑に頭を撫ぜてくる。
またこの人は、僕を子ども扱いして。

「怒んなよぱっつぁん。名前、雪降ってくる前にとっとと行こうぜ」
「うん」

ブーツを履き終えた銀さんが、自然な動作で名前さんの肩を抱いた。
嬉しそうに銀さんに身を寄せる名前さんの髪の毛がさらりと流れる。
大きくて逞しい、しっかりと筋肉の乗った銀さんの背中に護られるように抱き寄せられている華奢な名前さんの背中が、
どんな防寒グッズより銀さんの腕の中が一番あたたかいと、そう物語っていた。

「いってくるね新八くん!」
「いってらっしゃい、気をつけてくださいね」
「じゃーな」
「銀さんも、名前さんにばかり気を取られて転ばないようにして下さいよ」
「かーちゃんかテメーは」

僕達のやりとりに、名前さんが柔らかく鈴を鳴らすような声で笑う。
そんな名前さんに、銀さんが優しいまなざしを送ると、その額に唇を押し付けた。
その額が相当冷たかったのだろう。
銀さんは唇を離すと、今度は頬ずりするかのように自分の頬を名前さんの額に当てる。

「あったかい、銀さんのほっぺた」
「んー? じゃあしばらくこーやってあっためててやろーか」
「でも銀さんのほっぺが冷たくなっちゃうよ」
「いーのいーの、銀さん今最高に幸せなんだから」

いつまで玄関先でイチャついてるつもりだこのバカップル。

僕の心の声が聞こえたかのように、銀さんが横顔で僕に向かってにやりと笑った。
名前さんの額にまた口付けて、ようやく顔と顔を離す。
重たそうな瞼の下の瞳で僕に行って来ると告げ、二人はようやく買い物へ行ってくれた。
やれやれ。



■長編銀さんとヒロインで寒くて人肌が恋しい季節に離れたくないと言ってベタベタして離れない2人

のリクエストで書かせていただきました!
若干、内容とズレがあるかもしれませんすみません。
日常的なイチャつき話、とっても楽しく書かせていただきました!リクエストどうもありがとうございました!

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