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企画
一緒にいれば(琉夏)

「名前、夏だ」
「そうだね」
「海に泳ぎに行こう」
「いつかね」
「一度きりしかない高校二年の夏休み、外に出なきゃ駄目だ」
「琉夏くんが一学期にサボってばかりいたからこうしてバツとして補習やらされてるんでしょ」

ここは私立はばたき学園の二年生の教室だ。
外では部活動に励む生徒の声とセミの声が元気にはじけている。
しかし夏休みということもあって、校舎の中はひどく静かだ。
私がちょっと窓の外に目を向けた隙に、琉夏くんが問題用紙のすみっこのほうに、下手な落書きを描き出した。
「もう、真面目にやりなさい」と睨むと、ぺろっと舌を出して琉夏くんが笑う。
明るい笑顔。金髪が綺麗に揺れる。

「俺、成績は悪くないんだけどな」

琉夏くんの頭の中は一体どうなっているんだろう。
学年一位の私でも少し考えないと解けない数学の問題を、琉夏くんはまるで小学生の足し算をしているかのようなスピードで答えを書いていく。

「成績じゃなくて問題なのは出席日数だから」
「俺、そんなにサボってた?」
「うん、夏休みにこうして補習受けなきゃならないくらいにね」
「いい成績を取ってれば大丈夫かと思ってた」
「大丈夫じゃなかったね」
「ほんと。でも、名前と一緒なら俺、冬休みも補習したいくらいだ」
「あのね、普通に登校した方が一緒に居られる時間も長いと思うよ」
「補習の方が二人きりで居られる」
「そんな不真面目なこと考えてたら冬休みの見張り役は氷室先生になるかもよ」
「それは勘弁」

綺麗に微笑みつつ、琉夏くんがシャーペンを置いた。

「できたの?」
「バッチリ」

すごい、と問題用紙に手を伸ばそうとする私の手が琉夏くんの手に握られた。
解き忘れた問題でもあったのかなと琉夏くんの顔を見る。

「俺、真面目にやったよ。だからご褒美ちょうだい」

私のすぐ間近、琉夏くんの綺麗な瞳がふっと緩められる。
そんな顔をされたら何でもあげたくなってしまいそうだ。

「何が欲しいの?」
「名前」
「もっと具体的に」
「唇。それとほっぺたも」

はいはいどうぞどうぞ、と琉夏くんの唇に適当に唇を付ける。
そしてすぐ問題用紙に視線を落とすと「足りない。愛が」と拗ねたような声がした。
そんな琉夏くんの声を聞きながら「そんなことないって」と頭の中で数式をぐるぐるさせる。
するともう少しで問題が解けそうだったというのに、琉夏くんが指で私の顎を掴み、くいと上げられた。
もう、と文句を言う前に琉夏くんの唇が被さってくる。

唇を重ねながら、琉夏くんの手が私の髪を梳く。優しく、そっと。
私は数式を放り出し、その手の動きと柔らかな唇に意識を集中する。

頬に琉夏くんの唇が触れた時、遠くからコツコツと誰かの足音が聞こえてきた。きっと先生だ。
はぁ、と琉夏くんが甘く、そして残念そうな溜息をひとつ吐き出して顔を離す。

「続きはまた明日」
「えっ明日も補習があるの? 私もまた付き合わなきゃいけないの?」
「当然。だって名前が居なきゃ俺は何もできない」

どことなく寂しげな表情で、でも綺麗な笑顔で微笑んでいる琉夏くんに、私はすぐに返事ができなかった。




琉夏くんで甘々、のリクエストでした!
夏が来ると琉夏くんの裸の上半身を思い出しますね!
この後、二人で海に行ってざっぷーんとしてこればいいと思います。
リクエストどうもありがとうございました!

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