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企画
乙女の悩み(藤)

この常中で一番のイケメンであり、ほとんどの女子から絶大な人気を集めている藤と付き合いだして一ヶ月ほどになる苗字名前が、
下校時刻が近付くにつれ小さなため息をもらすようになったのはここ最近のことだった。

B組の鏑木真哉が、放課後A組にひょっこり顔を出した時、
教室にはただ一人、自分の席にぽつりと座り、シャーペン片手にノートを広げているにもかかわらず何かを考え込んでいる名前が居た。
名前は藤と付き合いだしてから、名前はよくここで授業中居眠りしたことへの説教を受けている藤を、宿題などをして待っていることが多いのだ。

「名前!」
「あ、シンヤ。どしたの、またハデス先生のお手伝いでもしてたの?」

名前が明るい笑顔の真哉につられるように笑顔を見せる。

「ううん、名前に聞きたいことがあって。ねえ単刀直入に聞くけど藤くんと喧嘩でもした?」
「シンヤ、私と藤くん、喧嘩なんてしてないよ」
「でもここ最近元気なくない? 名前がおかしいってアシタバくんも言ってたし」

真哉の言葉に、名前は「そんな顔に出てた?」と両頬に手を添えて恥ずかしそうに微笑んだ。
その仕草に鏑木は、同じ女子だというのに思わずきゅんとしてしまう。
女の子らしさに憧れを持つ真哉にとって、名前は友達でありそしてこうありたいと思うような女の子なのだ。

「あのね、藤くんってモテるでしょう」
「凄まじくモテまくってるよね、けど本人はそのことにうんざりしてるみたいだし、名前が心配することないよ」
「でも、視線が気になっちゃって」
「視線?」
「藤くんってほら、マイペースじゃない」
「うん知ってる。知りたくも無かったけどよーく知ってる」
「誰に見られてようと構わないって、皆が居る前で手を繋いできたりするの」
「へえあの藤くんがねえ」
「一昨日なんて、すごい悲鳴が聞こえて……後で聞いたんだけど、何人かが気絶してたらしいの」
「あ、それ知ってる。私、保健室に運ぶの手伝った」
「藤くんは、自分がどれだけ人に影響を与えるかわかってないんだよね」
「そういうこと考えるのも面倒くさいって思ってそう」
「こまったなあ……」
「名前が本気で嫌なら私が止めたげよっか?」

爽やかに笑いながら右手で拳を作る真哉に、名前があわてて頭をぶんぶんとふる。

「だ、だいじょうぶ! 嫌ってわけじゃなくて、誰かが怪我したりしたら大変だなって思ってるだけだから! 私からももっと言ってみようと思ってるし!」
「そお? いつでも遠慮なく言ってね」
「ありがと、シンヤ」

小さな花がふわりと花開くように、名前は心配して訪ねてきてくれた友達に笑顔を向ける。

「名前、悪い先生の説教なっかなか終わんなくてよ」

そんな時、がらりと教室の戸が開き、頭をぼりぼりとかきながら藤麓介が入って来た。
名前を見て、普段の彼とは人が違ったかのような優しい笑みを見せる。
そして名前の横にいた真哉の存在に数秒遅れて気付き、「鏑木じゃん」と興味なさそうな声で言う。

「話は済んだし、私はもう帰るわよ」
「あ、せっかくだからシンヤも一緒に帰ろ、藤くんも、いいよね」
「えー俺はヤダ」
「私だってイヤよ!」
「ど、どして?」
「俺、名前と二人きりで帰りてーもん。鏑木いたら邪魔じゃん」

耳に指を入れながら堂々とそんなことを言い放つ藤に、この男、と真哉は藤を睨むが、睨まれた本人はそんな視線もどこ吹く風だ。

「カップルのお邪魔なんてしたくないからもう帰るわ、名前、じゃね!」
「うん、ごめんね」

申し訳なさそうな名前に、気にしてないよと元気に笑うと、真哉はA組を出た。
歩き出そうとすると、ドアの向こうから二人の話し声が聞こえてくる。

「なんで名前が謝んだよ」
「だって藤くん、シンヤに失礼だよ」
「アイツいたらキスもできねーだろ」
「しーっ! 聞こえちゃう!」

これは名前も大変だわ。
名前にとことん惚れているといった藤の様子に、真哉は冗談交じりにそんなことを考える。

「そうだ、名前が藤くんのことで困ってるってハデス先生に相談してみよっかな!」

想い人に話しかけるいいきっかけを思いついた真哉は、元気良く廊下を蹴って派出須の元へと走って行った。
そして翌日、保健室の藤のお気に入りのベッドの上に、『中学生向け☆正しい男女交際について(イラスト入り)』という本がそっと置かれていたらしい。



■シンヤとガールズトーク。いつの間にか藤くんへのノロケに

のリクエストで書かせていただきましたー!
のろけというより、本気の相談事になってしまいましたすみません!!
久々に保健室のお話がかけて嬉しかったです!
リクエスト、どうもありがとうございました♪

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あきゅろす。
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