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企画
星の光もかすむ程(高杉)

宇宙というものを宇宙船の中から分厚いガラス越しに見ると、いつも地上から見上げる星空よりも濃く深い闇と、鋭いまでの星々の煌めきに圧倒される。

最近、高杉は片目でぼんやりと宙に視線をさまよわせ、深く思案に暮れていることが多くなった。
きっと、鬼兵隊の未来を真剣に考えてるんっスね……!!
と、物陰から高杉の物憂げな横顔を覗き見しながら、来島また子は金色の髪を揺らしつつ目をハートにする。

しかし、また子の推測は大きく外れていた。



「えーっ、高杉さん!? 本物? それにしても久しぶり」

生きている場所も見ている先も違う相手だというのに、それでも自分のものにしたいと高杉が願ってやまない名前が、
今日もあっけらかんとした笑顔で高杉を迎えた。
高杉は地上に降りると忙しい時間を割いては名前の家へ足を運んでいたが、
会えるのは数週間、または数か月に一度、なんてことも珍しくない。
けれど名前はいつでも嬉しそうに高杉を受け入れてくれる。重罪人だとわかっていても。

「嬉しいな、まさか今日きてくれるなんて。ねえ、今日は何の日か知ってた?」
「……さあ。知らねーな」

本当は知っていた。けれど、わかってて訪ねてきたと素直に言えば、
名前は今夜中ずっとはしゃぎっぱなしでうるさいだろう。
まあ、すでに高杉に会えたというだけではしゃいでいるのだが。

「だと思った。今日はクリスマスだよー。サンタさんがいい子にクリスマスプレゼントくれる日。私ももらっちゃった気分」
「オメーは子供か」
「若く見えるってこと? まだ二十歳くらいで通じちゃう感じ?」
「言ってろ」

寒い廊下をスキップするように歩きながら、名前は嬉しそうに高杉を見上げてきた。
薄い着物とそれほど変わらない厚さの羽織一枚上に纏っただけで、今にも雪が降りそうな気温の中を歩いてきた高杉は、
その笑顔に心があたためられているかのように感じ、惹かれるようにその手で名前の手を握る。

「うわっつっめた! 凍ってるんじゃないの!?」

手を動かされたのでてっきり振り払われるかと思ったが、違った。
名前は握られている方ではないもう片方の手で、高杉の手を包み込むように被せてくる。
その手は熱い位あたたかかった。

「早くコタツ入って、何かあったかいもの飲んで。何がいい? インスタントでよければ味噌汁あるし、昨日の残りのカレーもあるけど」

その言葉を聞いた瞬間、高杉の右目が困惑したかのように動き、続いてぷっと吹き出した。

「何で笑うの」
「なんで飲み物っつってカレーが出てくんだ」
「ああ、なんかついうっかり」

名前は相当テンションが上がっているらしい。
コタツに座らされストーブを向けられ、その上「あったかいから!」と帽子まで被らされた。
しかもそれはクリスマスパーティーでよく被られるような赤い三角の帽子である。
高杉はすぐさま頭から剥ぎ取り、床へ投げた。

「もー! 投げること無いでしょ」

熱々の湯気を立てたお茶を持ってきた名前が、投げ捨てられた帽子を見てぶーと唇を尖らせる。
お茶を高杉の前に出した名前に右目を細めながら、
高杉は「名前、落とすなよ」と、懐からずっと大事に持ってきていた箱をさっと取り出し宙へ放る。

「えっ!?」

咄嗟に構えた両手のひらの中に、ぽんとそれは落ちてきた。
手のひらに乗るくらいの大きさの、四角いしっかりした箱だ。
名前は胸が一杯、といった表情で潤んだ瞳を高杉に向ける。

「もしかして、クリスマスプレゼント……?」
「開けてみろ」
「……香水だ!」

すっきりとした美しい形のガラスの瓶の中で薄紫の香水が揺れる。
名前は目を輝かせながらそれを見ていた。
宇宙で見る星々の光より柔らかで、それでいて目を惹く光だ。

「つけてみていい?」
「好きにしろ」
「ん、すっとしてる。でもほのかに甘い香り。私、こういう香り好き」

ありがとう! と高杉に抱きついてくる名前をしっかり受け止める。

「高杉さんにこんな素敵なプレゼントもらっちゃったのに、私何のプレゼントも用意してない。ごめん」
「いらねェよ。これは俺がただ惚れた女に贈りたかったってだけのモンだ」
「でも…………あっそうだ! いいものが!」

高杉の腰に跨る名前が、横へちらっと視線を投げる。

「その帽子はいらねェ」
「バレた?」

あはは、と子供のように明るく笑う名前につられ、高杉も表情を崩した。
ふわりと自分の贈った香水が鼻をくすぐる。
恋人同士で過ごす静かな夜を思わせる官能的な香りだ。
悪くない、そう思っていると名前にゆっくりと口付けられる。
軽い重なりではない。深くて、情熱的で、高杉の欲望を煽るかのような、大人の口付けだった。

「何か欲しい? ケーキ? カレー? それとも」
「いい。俺ァ名前をもらうさ。それも香水だけ身に付けたオメーをな」

そんなものでいいの? と、名前は高杉の心を惑わしてならない鈴の鳴るような声を出し、
胸をときめかせてならない可愛らしい顔と仕草で、花のように微笑んだ。





■夢主にとても甘甘な高杉晋助が、クリスマスサプライズ頑張っちゃうお話

のリクエストで書かせていただきました!
高杉さん、きっと香水買うときとか頑張ったと思います!
素敵なリクエスト、どうもありがとうございました!

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