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企画
桜と唇(沖田と年上女中)

暦の上は冬を過ぎたとはいえ、吹く風はまだ冷たい。
けれども木々はきちんと春の訪れを感じ取り、見事な花々を咲かせる。
二人の休日があい、丁度桜も満開の時期ということで、沖田と名前は近所の桜並木にのんびりと花見に来ていた。

「今日はちょっと寒いね」

そう言った名前の手を沖田は少し強く握り「もっとこっちに寄ってなせェ」と、自分の方へと引き寄せた。
腕同士が触れるくらい身体同士を密着させる。

「お、見て下せェ。あっち、屋台まで出てらァ。名前さん、甘酒でも飲みますかィ」
「いいねいいね、飲みたい」
「じゃあちょっと待ってな。手ェ離しやすが迷子にならねーでくだせえよ」
「あのね、人をいくつだと思ってるの」

その言葉にはこたえずに、沖田はただ極上の笑みを浮かべつつ自分より年上の恋人の頭をぽんぽんと撫ぜた。
くっきりとした青空に、桜の花が綺麗に映る。
名前は甘酒の屋台に向かって歩いていく和服姿の沖田の背中を、見失わないようじっと見つめていた。
すぐにこちらへ振り返り、ゆるく微笑む。まるで一枚の絵のように綺麗な笑顔だ。

「あっちーですぜ」
「ありがとう」

沖田が買ってくれた甘酒の入った紙コップを、嬉しそうに両手で受け取った名前は、いただきます、と口をつける。
一口飲んで、その熱さにふうふうと息を吹きかけ、また一口。
幸せそうに味わっているその様を、沖田は満足そうに見つめていた。

「甘くて美味しいよ。総悟もどうぞ」
「いただきやす」

ふっと瞳を和らげた沖田が素早く口をつけたのは、甘酒ではなく甘酒で温まった名前の唇だった。
目を閉じる余裕も無く、唇が触れ合ったまま至近距離で見つめ合う。
名前の目は驚きに見開かれていて、沖田の目はこの状況を楽しんでいるかのように余裕げだ。

「……甘ェ。俺ァいらねェ。名前、甘酒は全部アンタが飲みなせェ」
「外でいきなりするなんてほんとどうかしてる」
「どうぞ、って名前が言ったんじゃねーか」
「甘酒をどうぞって言ったの!」
「そりゃーすいやせんでした」

紙コップの甘酒は、半分ほどの量しか入っておらずすぐに冷めてしまう。
甘ったるいそれを名前は一息でぐいと飲み干した。

「ごちそうさまでした。おいしかったーあったまったー」
「名前の唇、風呂上りみてーな柔らかさでしたぜ」
「そういう感想はいいから」
「ここも、俺を誘ってんですかい。いい具合に色っぽく染めちまって」

そう言って、沖田は名前の頬を指で軽くつつく。
甘酒を飲んで血の巡りがよくなり、頬がほんのり赤くなっていた。

「桜みてェだ」

そう言って、桜を愛でるように名前にやわらかな眼差しを送ってくる沖田に、
名前はますます頬を染めた。




■沖田か土方の短編設定!
■沖田さんと女中さんのシリーズのその2人でお花見に行くお話
■沖田さんと年上女中さんの二人の甘いお話

のリクエストで書かせていただきました!
甘酒以上に甘いお話、楽しんでいただけたら嬉しいです。
沖田さんと女中さんを気に入って下さって、そしてリクエストいただけてすごーーーく嬉しかったです!!
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
リクエストどうもありがとうございました!


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あきゅろす。
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