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企画
大人の愉しみ(長編銀さん)

昼過ぎにどこかへ出掛けた銀時が夕方にふらりと帰ってきた時、
出掛けるときは手ぶらだったその両腕に、大きなダンボール箱を抱えていた。

「何ですかそダンボール」

神楽と名前は定春の散歩へ行っていたため、玄関で銀時を迎えたのは新八ただ一人だった。
銀時は新八に、男同士の秘密事でも交わすかのように意味深にニイッと笑うと、新八の腕にダンボール箱を押し付ける。

「長谷川さんが就職したんだよ。しかも店一軒任されたっつー話でさ」
「凄いじゃないですか店長なんて。一体何の店なんです?」
「アダル……いや、大人向けの服とか、趣味のおもちゃを売ってる店らしくてな」
「今思いっきりアダルトって言いかけましたよね」

ってことはこれって……、と、新八は上が閉じきれていない段ボールからはみ出ている赤い布地を見て眉をひそめた。
銀時は新八のうぶな反応に、ふっと瞳を和らげる。
けれど新八が顔を上げたときにはもう、普段の気だるい表情に戻っていた。

「けどな、笑えることに長谷川さんが店長任された次の日にその店閉店することになっちまったんだって。で、今日がその店の最後の日。閉店セールってやつ」
「長谷川さん、どんだけついてないんですか……」
「でさー、半額にしてくれるっつーから名前に色々買ってきた」

ほくほくとした顔で銀時がダンボール箱の中から取り出したのは、赤く柔らかそうなベロアの生地にふわふわとした白いファーの付いたサンタの衣装だった。
しかも、肩は丸出し、スカートは超ミニの物凄くセクシーな服である。

「……あんた、もしかしてこれ名前さんに着せる気ですか」
「そーだよ新八くん。なかなかいいだろー」
「布地少ッ、これじゃ風邪ひいちゃいますよ」
「そこら辺は問題ねぇよ。だって着せたらすぐ布団に引っぱり込むしィ」

このエロジジイ、と新八が軽蔑の眼差しを送るが、銀時は全く気にしていないようだ。
ダンボールの中から次々とピンクのふわふわの付いたイミテーションの手錠やボトルに入った粘度の高そうな液体など、
新八には刺激が強すぎるアダルトグッズの数々を取り出すと、
銀時は神楽に見つからないようウキウキとした様子で和室の押入れへしまいだす。
その背中を見ながら新八は「爛れてる……」と、自分はあんな大人にだけはなるものかと強く心に決めた。



「え? 私に?」
「そーそー、サンタの衣装なんだけどさー、名前が着たとこ銀さんに見せて」

神楽も定春も床に就いた夜。
二人の布団を敷いている名前の、その寝間着の合わせ目から見えそうで見えない胸元や、
女性らしい丸みを帯びた臀部にさりげなく視線を這わせながら、銀時が軽い調子で話題を切り出した。

「長谷川さんの店で見た時、名前にぜってー似合うって思ったんだよな」
「ありがとう、私に買ってきてくれたなんて嬉しい」
「閉店50%オフだったけどな」
「長谷川さん、せっかく就職できて店長にまでなれたのに残念だったね」

長谷川がアダルトショップの店長になったと聞いた時、銀時は新八や神楽や名前にそのことを知らせていなかった。
というか、知らせる前に閉店になったのである。

「また無職のマダオに逆戻りだもんな。まァ長谷川さんらしいっちゃーらしいけど。それよか名前、ホイ」

布団を整えた名前の前に、銀時がサンタの衣装を差し出した。
名前は嬉しそうに「ありがとう」と銀時からサンタ衣装を受け取る。
銀時が自分に買ってきてくれたことを心から純粋に喜んでいる笑顔だ。

「なあ、クリスマスにはちと早いけど、サイズあうか今着て見せて」

銀時はサンタの衣装を畳んだ状態で名前に渡したため、名前は普通の一般的なサンタの衣装だと思っていたのだろう。
可愛い笑顔で「今? わかった」と、すんなり頷いた。しかし、

「わっ」

広げてみて目をまん丸にする。
名前の想像では、パジャマのようなもこもこの、よくあるふくよかなサンタが着ているような、そんな衣装だと思っていたのだが、
今、自分が手で広げたのは、薄いベロアでできた、体のラインがハッキリと強調される、肩も腕も脚も惜しみなく出すようなデザインで、
誰が見てもアダルトな店で買ったとわかるようないかがわしいサンタの衣装に名前は目を白黒させる。

「かっわいーだろ、ミニスカセクシーサンタだぜ」
「こ、これ、短すぎないかなっ」
「普通普通」

銀時は、どうしようどうしよう、と衣装を裏返したり表を向けたりする名前の後ろへ周り、ぎゅっとその身体を抱しめた。
名前は首をひねって「本当にこれを?」と、あわあわしている。

「きっと似合わないよー」
「何言っちゃってんの、俺ァ名前が着たら超可愛いと思ったから買ってきたんだぜ」

名前の身体をくるりと反転させると、困った顔をした名前の額に楽しげに唇を落とす。
名前が自分のことで困ってる姿を見ると可愛くて仕方がない。
嗜虐心を刺激され、もっと困らせたくなってしまう。

「うう……」
「ほら、名前ちゃん前に俺のためにナース服着てくれたじゃん、だからこっちも着てくれよ。な、な、でないと長谷川さんも浮かばれねえ」

名前は銀時がよほど馬鹿なことを言い出さない限り、その頼みを拒むことは無い。
そのことは銀時もよく知っている。
手のひらを俯いている名前の頬に当てると、名前はゆっくり顔を上げ、相変わらず眉をハの字にしたままおずおずと銀時に視線を絡ませてくる。
それだけで銀時の心は今にもはちきれそうなほど愛しさと欲望で一杯になるのだが、
それを表情に出さず、余裕げな笑みまで浮かべて名前の返事を待つ。

「……銀さんが、喜んでくれるなら、……って言いたいんだけど……」
「喜ぶ! もう銀さんも銀さんのアソコも大喜び! 恥ずかしけりゃ銀さんが責任持って脱がせてやっから!」

銀時の勢いに名前は目を大きく見開き、瞬きを数回する。
唇を軽く噛み少し考え、ぽっと頬を染めると、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で
「ん、……わかった……」と、もじもじと恥じらいながら小さく頷いた。
銀時は心の中でガッツポーズを取る。



サンタ衣装を手に脱衣所に消えた名前が、再び銀時の前に現れるまですこし時間がかかった。
しかし銀時は痺れを切らすこともなく、にやついたまま布団の上にあぐらをかき名前を気長に待つ。

「銀さん、お待たせ」

襖がゆっくりと開いた。銀時はごくりと喉を鳴らす。
瞳に映った名前の姿に呼吸も思考も止まった。

買った場所が買った場所だ。いやらしい印象しかなかった大人向けのサンタの衣装だが、
名前が着ると、いやらしさは薄れ清純な女性の色気がこれでもかと倍増された。
淫靡な赤い色の布地と白い柔肌の対比、胸の谷間と身体の美しいライン。そして綺麗な脚。
何より、恥ずかしさに顔を真っ赤にしながらも自分の為にこの淫らな衣装を着てくれたということが、銀時の心と股間をノックアウトする。

「銀さん、どうしたの? やっぱり変かな? 思ってたのとイメージが違っちゃってた?」
「いや……」

名前を凝視したまま言葉を震わせる銀時に、どうしたのかと名前が顔を覗き込んでくる。

「銀さん?」
「名前……クソ、オメーさんよォ、ったく……めっ……ちゃくちゃかわいいじゃねーかァァァ!!!」
「キャ」

敷いたばかりの布団へ名前を押し倒すと、銀時は胸元に手を滑らせながら思い切り唇を奪う。
銀時も名前も、互いに吐息を荒くしながら、スイッチが入ったかのように夢中になって口付けに没頭した。
体重を全てかけないようにしながら、銀時は名前に覆いかぶさり甘い唇を吸い舐めてゆるく噛む。
ぴったりと重なる二人の身体。銀時の作務衣の前がはだけ、素の胸がサンタの衣装を身に着けた名前の胸と触れ合った。
上質とはいえない安っぽいベロアの生地越しに押し返してくる名前の柔らかで弾力のある胸が、銀時の素肌と欲望をゆるりと刺激する。

すべらかで柔らかい、極上の触り心地を求め、銀時は名前に絶えず口付けを送りながら肩に手を置き、腕へと滑らせた。
身体のラインをたどり、脚へと手を這わせる。

「っ、ぎんさん、脱がせてくれるんじゃ……」
「名前は丸裸よりサンタ衣装のが恥ずかしいんですかー?」
「その言い方は、ず、ずるい、っ!」
「その反応、たまんねーなオイ」
「……ふ、あっ、」

銀時がわざと低音で名前の耳に息を吹きかけるようにして「甘ぇ声」と小声で囁けば、
んん、と声を押し殺して真っ赤になった顔を両腕で隠す。

「夜は長ぇんだ、後でじっくり脱がせてやっから、まずはこのまま楽しもうぜ」

そう言って、銀時は名前の胸元のファーで自らの頬をくすぐるように顔を動かすと、
そのまま柔らかな胸に顔を埋めた。



■長編銀さんが「ナース服着れたならサンタもいけるだろ!!着てくれ!!」的な感じで迫る話

のリクエストで書かせていただきました!
すごく楽しかったです!楽しくて気がついたら結構な長さになってしまいましたエヘヘ。
ワクワクするようなリクエスト、どうもありがとうございました!!

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