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企画
心配で心配で(長編銀さん)
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アニメ再開ばんざい!それと銀さんの誕生日も盛大にお祝いするよ企画
「これからはちゃんと言うんだぜ」を先にお読みいただけたら嬉しいです。
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平和な依頼から危険な依頼まで、万事屋には大小様々な依頼が舞いこんで来る。
困ってる人を見捨てられない銀時は、依頼によっては大怪我といっていいくらい深い傷を負って帰ってくることもあり、
名前はその度に顔面蒼白になって、とにかく銀時を病院へ連れて行こうとする。

「銀さん、病院いこう」

玄関先で名前に向かって倒れこむように抱きついてきた銀時を抱きとめるなりそう言った名前に、
銀時は「いい、必要ねェよ」と名前から身体を離し、ブーツを脱ぐ為にどっかり玄関先へ座り込んだ。
銀時の背中も正面同様に土や血で汚れていて、それを見るだけでもどれだけ激しい戦いだったのかわかる。
名前は心配だった。内臓や、骨まで傷ついているのではないかと、一度不安になったら止まらなくなる。
銀時と一緒に帰ってきた神楽と新八をすがるように見つめるも、無駄ですよ、とばかりに小さく首を振られた。
きっと、二人も散々銀時に病院に行くよう言ったのだろう。

「いつもみてーに止血して包帯巻いときゃ治るって」

銀時はそう言って、病院へ行こうという名前の言葉を頑なに拒んだ。
余程の深手を負うかその場で意識を失くし病院へ運び込まれでもしない限り、あまり自らの足で病院へ行くことは無い。

「血がたくさん出てるし、縫ってもらった方が絶対にいいよ……」
「大丈夫だっつってんだろ。心配してくれんのは嬉しいけどよ、マジで平気だから。それよか名前に泣かれそうになるのが銀さん一番辛いんだよ」

一番傷が深い銀時の腕に清潔なタオルを当て、ぎゅっと押さえて止血しながら、名前はきゅっと唇を噛む。
白いタオルがみるみるうちに赤く染まっていく。目を逸らさず、その赤い色を見つめる。
これ以上流れないで、そう強く思いながら。

「でも、きちんと病院で手当てして欲しいな」
「病院行ったところで治るスピードは変わりゃしねーよ」
「そんなことないよ、ばい菌入ったら大変だし、それに病院だったら、レントゲンだとか、」
「しつけーぞ。ただでさえヘトヘトで帰ってきてるってのに、更に疲れる言い合いなんざしたくねーんだって。病院病院うるせーっつーの」
「………ごめんなさい」

目に涙をためた名前は、それきり口を閉ざした。
そんな名前の表情を見て、銀時は自分の言葉が名前を深く傷つけてしまったらしきことに気付く。

「あのー、名前ちゃん、今のはネ、
「新八くん、ごめんね私と交代してもらってもいいかな?」
「ぼ、僕ですか」
「うん」

銀時と目も合わさず、言いかけた言葉もさっくり無視し名前はタオルから手を離した。
懸命に目から涙が落ちそうになるのをぐっと堪え、震える声を絞り出す。

「あのね、包帯、足りなくなりそうだから買ってくるね」

銀時の止血をかわってくれた新八の頬のかすり傷に絆創膏を張り、そして比較的軽症で、しかも怪我をしてもすぐに治ってしまう神楽の頭を撫ぜると、
名前は「みんな、お風呂入って身体綺麗にしててね」と優しく笑った。
無理をしてる笑顔だと、すぐにわかる。

「おい名前ー、俺のこと無視すんな、話の途中だったでしょうが」
「私の心配は、銀さんを疲れさせるだけみたいだから……」

辛そうに俯き床に視線を落としながら、名前は小さな声で言う。

「んなこた言ってねーだろ!」
「さっき、しつこかったよね。ごめんなさい。銀さんに負担をかけるつもりはなかったの」

う、と銀時は名前の言葉に息を詰まらせた。
名前は銀時の態度に、自分なんかが踏み込んではいけない領域だったのだと萎縮してしまったようだ。
怪我をした銀時を心配する名前と、名前の心配を和らげようと傷が痛むにも関わらずひたすら大丈夫だと強がる銀時は、
互いに想いあってのことだということは誰よりわかっているというのに、
それを今日に限って銀時も名前も、上手くコントロールできなかった。

「お、おう。心配も過ぎると重いだけだかんね。わかってもらえてよかったよ」

銀時は、焦るがままにぞんざいな言葉を投げやり気味に口にしてしまう。
名前が、よくない! なんてムキになって、怒ってくれないかと、そんな思いも少しは、いや、かなりあった。
そうしたら、今のは冗談、と謝って抱き寄せて愛してると何度も言いながら腕の中に閉じ込めようと。
けれど名前は銀時の思惑とは逆方向に、ムキになるどころかますます泣きそうな顔になって、しゅんと肩を落としてしまう。

「………いってきます」

喧嘩など滅多にしない、する前に終わってしまう二人なのに、
今日はどうしようもないくらいこんがらがってしまったようだ。

「銀ちゃん、名前、泣いてたアルよ。あーあ、どうするネ」
「ちょっと酷いんじゃないですか銀さん」
「……んだよオメーら、怪我してる俺に集中攻撃かよ。あんなこと銀さんが思ってるわけないでしょーが。ちょっと口がすべっちまっただけで」
「すべりすぎたネ。忘れたアルか、さっき銀ちゃんが言ってたこと、名前の前のバカ彼氏が言ってたことと同じネ。きっとすごく悲しい気持ちになったアル」
「は? 俺、そんなこと言ったか?」
「名前さん、この前の銀さんの誕生日に、前の彼氏と別れた原因を教えてくれたじゃないですか」

以前の名前は、銀時に言いたいこともぐっとこらえて我慢していたことを思い出す。
昔の彼氏と別れた時に言われたことが、ずっと名前の心の奥深くに傷になって残っていたらしい。

“疲れたって言われちゃって。私、色々とうるさかったみたい”
“銀さんに疲れたなんて思われたら嫌だから”

そう言って、名前は儚げに微笑んでいた。
そのことを今更ながら銀時は思い出すと、冷や汗を流しながら先ほどの自分の発言を後悔する。
ただでさえ血が流れ貧血になり白くなっていた顔にますます青みが差した。

「ヤベ……俺、名前のこともしかしてめっちゃくちゃ傷つけちまった?」
「もう銀さんと別れたほうがいいのかな、とか今頃考えてるかもしれないアル」
「やめて! 名前と別れるなんざ考えるだけで傷口と同じくらい心が痛い!」
「名前さんは銀さんと別れたりしないよ神楽ちゃん」
「だよねー! 新八くんわかってる!」
「でもあんなこと言われちゃ今度二度と銀さんには心を開いて接してくれなくなるかもね」
「名前ーーー! 俺が悪かったーーー!!! 病院でも歯医者でもどこでも行くから!!!! 名前ちゃんつきっきりで看病してーー!!!!!」

「本当?」

やわらかな声に、三人は同時にそちらを振り向いた。
そこには、お財布忘れちゃって、と両手をきゅっと握る名前が居た。
少しぎこちない笑顔を銀時へ向け、すぐに逸らすと同時に目尻に溢れていた涙が頬を伝う。
その涙から、名前がどれだけ銀時のことを心配し、大事に思っているかひしひしと伝わってくる。

「名前」

銀時は痛む身体をおしてよろりと立ち上がり、名前を抱しめた。

「私、銀さんにもしものことがあったらって思うと、すごく、すごくこわくて……」
「ああ、俺の為を思って言ってくれたんだよな、わかってる。さっきは悪かった、だからこれからも俺にうるさく病院行けっつって言って下さい!」
「うん、でも、わたしのこと嫌いになったりしない?」
「嫌うかよ」
「じゃあ病院、行ってくれるの?」
「次からな」
「………」

眉を下げ、困ったような表情で見上げてくる名前の唇を銀時が奪う。
続いて、ちゅ、ちゅ、と小さな音をたてながら何度も唇を重ねた。
それはとても優しい優しい口付けで、先程までのわだかまりなど丸ごと綺麗に包み込み、跡形も無く消し去るようなものだった。
銀時は最後に名前の首元に顔を埋め強く名前を抱しめる。

「これからも俺達は時々怪我して帰ってくるだろうけどよ、名前の心配が鬱陶しいとか、そういうのは絶対ねーから」
「ん……」

銀時は血まみれの手で名前の頬に指を滑らせると、同じく血に濡れた顔で柔らかく笑った。




大喧嘩から数日後、名前の献身的な手当てと銀時の驚異的な回復力により、
銀時はもう普通の、いつものような自堕落な生活を送れるまでになっていた。

「名前ー、血ィ出ちまった」
「傷口、開いちゃった……!?」
「違う違う、別んとこ」

銀時は心配そうに駆け寄ってきた名前を腕の中に閉じ込めると、吐息がかかるくらいにまで顔を寄せる。
熱いまなざしで見つめてくる銀時の瞳から鼻、そして口元へ視線を移動させ「あ、」と名前は声を出した。

「唇が割れちゃったんだね」
「そーそー、なんかイテーって思ったら割れてたんだよね」

銀時のぽってりとした唇の、その中心あたりに赤い線が走っていた。
乾燥でそうなってしまったのだろう。痛いよね、と名前は心配そうに瞳を揺らし顔を傾ける。

「リップ塗ってあげようか?」
「男がんなモン塗れっかよ。それより銀さんは名前ちゃんに舐めてもらう方がいいなー」
「舐めるのはよくないよ。ちゃんと保湿しなきゃ」
「あ、そーなの?」

そう言いながら、銀時は名前の唇にひび割れた唇を押し付けた。
乾いた銀時の唇を、名前の柔らかな唇がしっとりと受け入れる。

「あーやっぱ名前やーらけー」
「銀さんの唇はかさかさだよ。うーん、リップぬるのは気が進まないなら蜂蜜はどうだろう?」
「蜂蜜だあ?」
「うん、唇がぷるぷるになるって聞くよ。でも舐めちゃだめだからね」
「ソレ、舐めるなっつー方が無理だろ」
「銀さん甘いもの好きだもんね」
「名前の唇も甘いぜ」
「ふふ、銀さんの唇もとっても甘いよ」

再び二人の唇が重なり合う。

「へー唇に味があるんだー私そんなのはじめて聞いたアル」
「なんだろうねこの空間、前にも増して暑苦しい」
「わん……」

銀時と名前の凄まじく甘ったるい公開ラブシーンに不幸にも居合わせてしまう羽目になった二人と一匹は、
冷めた視線を隠しもせず真っ直ぐ送ってみるものの、二人の世界でランランランな状態の銀時と名前には到底届きそうになかった。

「新八、定春の目が混沌としてるアル。絶対に銀ちゃんと名前のせいネ」
「やれやれ、雨降って地固まるっていっても固まりすぎだよねこれじゃ」
「銀ちゃんが昼寝してる隙にヤツの唇にタバスコ塗ってやりたい気分アル」
「神楽ちゃん、タバスコはやりすぎだよ。せめてワサビくらいにしておこう」
「わん!」
「定春も賛成してくれてるアルな」


数時間後、万事屋に響き渡った銀時の絶叫は、一階のスナックお登勢にまでしっかり届いたらしい。




■長編のヒロインちゃんと銀さんが、 周りも心配するくらい珍しくおっきなケンカして、でもその反動で仲直りも凄まじく激甘
■何の気なしに銀さんが言った言葉に傷ついて泣いちゃうヒロインと仲直りして甘々日常な長編銀さんカップル

のリクエストで書かせていただきました!
喧嘩にちゃんとなっているか不安ですが、凄まじく激甘という部分はしっかり書けたかなと!思います!たぶん!
素敵なリクエスト、どうもありがとうございました!!

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