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企画
愛と誠(派出須)
「…逸人」

満身創痍とまではいかないが、あちこち怪我した身体でぐったりとベッドに横たわる逸人を見て、涙が出そうになった。

「名前…ごめん、心配かけちゃったよね……」

部屋に私が入ったきたことに驚きもせず、静かににこりと微笑んで私に向かって手を伸ばしてくる。
思わず力が抜けて、するりと私の手から消毒液や包帯やポカリや絆創膏なんかが入っているビニール袋が音を立てて床に落ちた。
逸人が病魔と戦う際に怪我を負ったにも関わらず病院へ行くことを拒み家へ帰ったとアシタバくんから聞いて心臓が止まりそうになった。
しかも何の手当てもせずベッドに倒れこんでいるなんて。

「いつもいつも、怪我して帰ってきて私が何も感じないと思ってる?」

握ってもらうのを待っていた逸人の手を叩き、床に落ちたビニール袋から消毒液を取り出して脱脂綿にたっぷり含ませる。
何か言いたげな逸人を無視して、切り裂かれたような傷ひとつひとつに押し当てていった。

「泣かないで…名前」
「ないてないっ」
「ごめんね…」
「それ、さっきも聞いたっ」

出血が多く見えたのは白衣に血が滲んで広がっていた為で、傷はそう多くなかった。
打撲で動けなくなったんだろう。酷い箇所に冷湿布を貼る。ひび割れた身体であちこち湿布した姿は酷く痛々しい。
素人丸出しの手当ての間、逸人は勝手に流れる私の涙を親指で優しく拭い続けていた。
あらかた手当てが終わると、待っていたかのように後頭部が引き寄せられる。
唇を重ねようとしているのがわかって、ぐっと抵抗した。だって私は怒ってる。
間近に迫った逸人の瞳が細められ「大丈夫だから」と囁かれた。
何が。何が大丈夫なのかわからない。
こんなに怪我して。

「何があっても必ず名前のところへ戻るから…だから泣かないで…ね?」
「こんなボロボロになった姿で戻ってこられても嬉しくないもん」
「えっ…」
「病魔を倒した後、私のこと抱きしめるくらいの余力残しておいてくれなきゃ心配で心配でたまんない!」
「はは…、これでいい?」

私の言ってることは無茶苦茶なことだと自分でもわかってる。
けど逸人は笑いながらゆっくりと上半身を起こし、思いがけない力で私を抱きしめてきた。
私は床に膝で立ち、ベッドの上からがばりと抱きしめてくる逸人に両腕でしがみつく。

「…痛くても力抜いてあげない」
「いいよ…でも少しだけ腕を緩めてくれないかな?」
「イヤ」
「さっきから君にキスしたくてたまらないんだけど…」

ふるふると首を振り、うわっと逸人が驚くのにも構わず抱きついたままベッドに上り逸人に跨るような格好になった。
ぽんぽんとなだめる様に大きな手のひらで私の頭に触れてきた。ぶわっと更に涙が流れる。
髪の毛をかき分け、私の耳朶に直接「名前」と柔らかく名前を呼ばれ渋々顔を上げると、待ち焦がれたように唇が重なってきた。
なだめるように慈しむように、どこまでもしっとりとした落ち着いた口付けが続く。
それに焦れて舌先で逸人の唇を舐めて口をあけてと合図すると、逸人の舌ですんなり舌を絡め取られた。
息を上げて官能を揺さぶるキスを交しながら、逸人の手が私のブラウスのボタンを外していく。
上半身を乱された私の肌に躊躇うことなく触れてくる逸人に「無理してない?」と聞くと「してないよ」と返された。

「本当に?」
「しおらしいな…さっきまでの勢いはどこへ行った?」
「だって、っく、」

胸の突起をひび割れた指先で愛撫され、びくりとのけぞった。
跨っていた逸人の下半身が窮屈そうに存在を示していて、跨ったままそこでわざとぐりぐり刺激するように腰を振る。
それを受け、逸人の表情がわずかに変化してくるのをのぼせ上がった瞳で確認し、これからの展開を思って期待に胸を震わせた。

--------------

二人して何も考えず本能をさらけ出し、手で舌で体中を愛撫し合う。
さすがに体中怪我だらけの逸人を動かさないよう、私主体で進めているのだけれど。

「今日は名前が入れて」
「………ん」

私の唾液でてらてらと光る逸人のものに避妊具を被せ自身の濡れた箇所にあてがうと、ゆっくりと腰を落としていった。
ぐちりと私の中に入り込んでくるこの感覚に、身体と同じくらい心も歓喜に満ちる。

ああ、繋がっている。

一番奥深くまで飲み込むと、逸人の胸にしなだれかかる。
すぐに動かないのはゆるやかなセックスを楽しみたいから。
なのに逸人はくいと腰を動かし私に動くよう促してくる。
少し角度が変わるだけで声が漏れるほど気持ちが良い。

「名前、どうした?」

口元を少し意地悪くつり上げ、私の腰を掴み逸人が下から遠慮なく突き上げてくる。

「ん、ちょっと待って、ん、ぁ、逸人ッ、やあっ!」

ずんずんと最奥まで揺さぶられて、私の口から甘い悲鳴が切れ切れに上る。
それでも逸人は動きを止めてくれない。
同時に胸も弄られて、頭の中が真っ白く染まっていき、あと一歩で昇りつめるというギリギリのところで逸人の動きが止まった。

「…ぁ…いつ、ひと…」
「また泣いてる」

逸人が身体を繋げたまま上半身を起こし、私の頬に流れる涙を舐めとった。
肩をとんと押されてシーツへと倒され、足を大きく広げられる。
逸人のものを深く飲み込みもっともっとと疼いてるところを見られるだけで恥ずかしくてきゅっと目を閉じた。
だけど逸人はそんな私の羞恥心を更に煽るように「やらしいな」と低く囁いてくる。
反論する間もなく抽挿が開始され、目を閉じたまませり上がる快感に身を任せた。
だって本当に私はいやらしい女だから。
身体中ひび割れて、痣だらけで、切り傷から血が滲んでる状態の逸人に抱かれて悦んでる。
心配する一方で本当は病魔に立ち向かい人々を救う逸人を誇らしく思ってる。
自分の正義を貫く一方で、逸人がどうしても切り捨てられない愛情というものを私が一身に受けているのだから、怪我をしてきても動揺しないくらいの気持ちでいたい。
だけどそれができない。できないからこそ逸人は私のことが好きなんだと思う。

「何を考えてる?」

身体が繋がっている逸人は、いつもと言葉使いが若干違ってくる。
視線の色も普段のあたたかみよりも攻め気に染まり、いつも私はその変容に戸惑うのだ。

「ふ、ぁ、いつひとの…ことだけ、っ、ん、っく」
「もっと考えて。僕のことだけ、そうすればほら…」

“もっとよくしてやるから”

聞こえるか聞こえないかくらいの声が鼓膜をくすぐる。
逸人が私の上半身に覆いかぶさるような格好で、ぐっと密着してきた。
大きな動きはできないけれど、そのぶん細かな動きになってとろけるような快感が身体の芯を揺さぶる。
絶頂が近い。
逸人の荒い呼吸に余裕が無くなってきたのを感じ取り薄目を開ける。
切なげに眉を寄せた表情で私の名を呼ぶので私も喘ぎながら逸人の名前を呼び続けた。

「逸人、も、ダメ、あ、あ、あ、ん、………っ!」
「っは、……名前!」

同時に最高潮へと達した後、すぐにキスをする。
絶頂の波がひいて行くほんの短い間中、そして唇が離れると微笑みあうのだ。

「傷、開いてない?大丈夫?」
「そこまで酷い傷じゃないよ…」

素早く後始末を終えると、裸のままベッドへ横たわる。
逸人の傷をひとつひとつ指でなぞっていると、その指を絡め取られちゅっと手の甲にキスされた。
照れくさそうに嬉しそうに、柔らかく細められる逸人の瞳。

「あ、いつもの逸人だ」
「…?」

本人は普段の時と情事の時の言動の変化に気付いていないらしい。
そう。この変化を知っているのは私だけ。
こみ上げる愛しさに笑みが零れる。
きょとんとしている逸人に「こっちの話」と誤魔化してその胸に抱きついた。




♪愛と誠/ALI PROJECT


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cokko様リクエストで
いつもは優しいぽけぽけ逸人なのに、情事になるといつもの彼の中にちょっと意地悪がでてくるというか、積極的になってくる彼。
でした!!
ちょっと意地悪というより結構なSっぷりな感じになってしまいましたが大丈夫でしたでしょうか!?
ハデス先生のエロスな話は初めて書きましたが、とても楽しかったです!
cokko様、素敵なリクエストどうもありがとうございました!!

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あきゅろす。
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