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企画
愛妻家二人揃えば大爆発
※短編の土方夫婦の土方さん、年上女中さんと付き合ってる沖田さんもちょいと出てきます。




昼下がり。梅雨の合間の晴れた日に、銀時と新八と神楽はニコニコ顔で帰り道を歩いていた。
懐にたんまりと入った依頼料が三人の表情と足取りをいつも以上に弾ませている。

「銀ちゃん、こんなに金もらえるなんて思わなかったアルな!」
「おう、ずいぶんと景気良くくれたもんだぜ。今夜はパーっと豪華に行くか」
「いいですねー、名前さんも喜びますよ」
「肉! 肉がいいアル!」
「おい、オメーら外食してーか?」
「肉だったらどっちでもいいネ。でも名前の料理の方が絶対に美味しいアル」
「だよなー、俺も同意見だ。いっつも買い物ひとつに何十円の単位で頭悩ませてっからな、たまにゃ値段見ずに名前の欲しいモン買わせてやりてーよな」

妊娠中の為、一緒にくることができなかった名前の顔を思い浮かべた。
帰るなり、おかえりなさい! と、いつものようにほがらかに出迎えてくれる名前に、
ほい、と依頼料を差し出したら、と銀時は考える。
いつも以上に分厚い封筒に、あの柔らかな瞳が大きく見開かれ、そして次に花が開くような笑顔になるに違いない。
そんな名前の姿を想像していたら、銀時の鼻の下が知らず知らずに伸びていていたらしい。
新八に呆れ顔で「やらしいことでも想像してるんですか」と突っ込まれる。
そんな時、前方から声をかけられた。

「なんだ、万事屋じゃねーか」

このじめっとした蒸し暑い気温の中、かっちりと黒い隊服を着た真選組副長である土方十四郎が、
同じく真選組一番隊の沖田総悟と共に銀時達の前に立つ。

「あり、旦那じゃありやせんか、先日はどーも」

沖田は軽く銀時に挨拶すると、その横の神楽に視線を移し、ヘッと見下し挑発するような笑みを浮かべる。
それにムッとした神楽が沖田に飛び掛ろうとするのを新八が止めた。

「多串くんに沖田くんじゃないの。警察がこんな昼間っからブラブラ何してんの〜? 暇そうでうらやましいぜ」
「巡回中だ! つーか毎日暇そうなのはテメーの方だろうが!」
「顔近づけるのやめてくんない。うちの奥さん妊娠中だから俺を介して毒気浴びせたくないんでー。マヨの臭いで早産でもしたらどうしてくれるんですかー」
「意味わかんねーこと言ってんじゃねーよ。マヨネーズの匂いにそんな効果はねえ」

あ、なんか長くなりそう。と沖田と新八と神楽は二人の会話に眉間に皺を寄せながら思う。

「んなことよりオメーの白髪と天パが遺伝した時のことを心配してろ」
「前髪V字型で産まれてくるよりマシですゥー。それにな、俺の奥さんは“銀さんの髪の毛大好き”って言ってくれてっから。どんだけ俺に似ようが大丈夫なんだよ残念でした」
「俺だってな、毎日毎日“十四郎さん大好き”って言われてんだよ! 髪の毛だけ好かれてるテメーとは違ってな」
「髪の毛だけじゃねーよ“銀さん愛してる”って言ってくれてっから! 俺に超ゾッコンだから!」

次第に声が大きくなる銀時と土方の、とてもじゃないが妻が居る身とは思えない低次元の会話に、沖田と神楽と新八の三人の口から同時に同じ種類のため息が出た。

「ウゼェ」
「ウザいですよね」
「ウザいアル」

そして、目を見合わせて頷く。この三人の心がひとつになった瞬間だった。
愛され自慢に続き、今度は自分の妻がどれだけ可愛いかということで言い争っている銀時と土方の二人は、そのことに全く気付いていない。
沖田は無言でバズーカを構え照準を土方に、神楽は「よっ」と地面を蹴って飛び上がり、新八はぐっと拳を握る。

「俺の奥さんはなァ
「俺の女房はなァ

そこまで言った時、三人の攻撃が綺麗に二人に決まった。
バズーカから放たれる爆薬と神楽の飛び蹴り、そして新八に殴られる鈍い音。そのみっつが見事に重なる。
銀時と土方の二人は灰色の煙と共に仲良く後方へ吹き飛ばされていった。

「あー鬱陶しいモン見ちまった。帰って俺の奥さんに慰めてもらうとしやしょうかねィ」
「オメー結婚してねーだろコラァ」
「るせーチャイナ。もうすぐすんだよ黙ってろィ」
「せいぜいフラれないようにナ」
「はいはいそこまで。もう、今度は神楽ちゃん達が喧嘩してどうするの。ほら銀さん起こしてもう帰ろう。名前さんにご馳走つくってもらうんでしょ」

全くあっちもこっちも、と新八は苦笑いしながら膝を付き、銀時に肩を貸しその身体を立たせる。
そしてじゃあ僕達はこれで、と新八が沖田に一礼すると、
沖田も「じゃ」と手を上げて、おもむろに土方の襟をむんずと掴み、ずるずると引きずっていった。

「待て新八……まだ終わってねェ……俺達の……戦いは……」
「戦ってたんかい! ほらもう行きますよ。アンタ達の奥さん自慢は何時間経とうが決着なんてつきませんって」

新八はくすりと笑うと「名前さん待ってますよ」と銀時を支えている手でぽんと背中を叩いた。





■土方夫婦との絡みで、旦那達が奥様ノロケで喧嘩勃発!最後はウザさにキレた神楽ちゃん&沖田くんによる暴走

のリクエストで書かせていただきましたー!
銀さんと土方さんの会話は書いていたら止まらなくて、
どんどん増えてしまって削るのが大変でしたフへへ。
楽しいリクエスト、どうもありがとうございました!

2014 6/8 いがぐり

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