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企画
心の底から楽しいのです



夫婦で芝居をやりがら全国を回っているという男性から、自分達の代わりに銀時と名前の夫婦で芝居をしてくれないかと依頼が来たのは
ここのところまともな依頼がきておらず、食卓から肉と魚が消え、毎食のようにもやし料理が続いていた時のことだった。

依頼人は有名な小説家で、その芝居は童話や昔話などをアレンジし、随所にその作者らしい展開が詰め込まれているとファンの間では小説以上に人気らしい。
小説を書きながら妻と共に各地をまわり芝居をしてきたが、かぶき町へきてすぐ妻が盲腸に倒れてしまった。
かぶき町にくるのは数年ぶり、楽しみに待っていてくれたファンにどうしても芝居を届けたいと、そういうことで万事屋へ依頼してきたのだ。

妻の入院中ずっと付き添っていたいと、依頼人は話をまとめるなり思った以上に高額の依頼料を気前良くも前払いして足早に去って行った。
そこまではよかったが、その後、万事屋に運び込まれた芝居に使われる小道具や衣装や音響装置に銀時をはじめ、全員が目を丸くした。
芝居は金持ち夫婦の道楽でやっていることかと思ったが、かなり本格的に取り組んでいたらしい。

「あんだけ金持っててなんでプロの役者に頼まず俺達に依頼してきたんだ? まあ俺ァ金さえもらえりゃいいんだけどよ」
「ご夫婦でやってるって言ってらしたし、あくまで本当の夫婦がやるお芝居を見せるってことにこだわりがあったんじゃないかな」

わ、かわいい、と衣装のひとつを手に取り、名前が神楽の身体にあててはしゃぐ。

「銀さん、台本がめちゃくちゃあるんですけど、どれ演るんですか」
「好きなの選んでくれていいっつってたな、あのジジイ」
「何があるネ? 家なき子とか母を訪ねて三千年とかあるアルか!?」
「それ夫婦でやるお芝居じゃないよね神楽ちゃん。えーっと“白雪姫”“シンデレラ”“浦島太郎”“3年Z組銀髪先生”……なんだこのタイトル」

新八が台本を手に微妙な表情になる。
この子供の学芸会でやるようなラインナップを、見た所50代にもさしかかろうあの依頼人が演技してたのだろうかと思ったのだ。

「どれ選んでも悲惨なことになりそうだな。ちょっとぱっつぁん台本見せてくれ」
「はい銀さん。どれ読みます?」

なんでもいい、という銀時に、新八は浦島太郎の台本を渡す。
パラリと台本をめくる銀時の眉間にみるみるうちに皺が寄った。
一冊一冊はそれほど分厚くは無い。二人芝居だからだろう。

「なんじゃこりゃ、玉手箱を開けて老人になった浦島太郎が、浜辺にいた美しき乙女と恋に落ちるんだってよ。どんな小説かいてたらこんな展開思いつくんだよ」
「ないでしょその展開」
「ないよな。あっても金目当てだろ。狙いはジジイのハートじゃなく保険金だ」
「そうかな? 私、銀さんだったらいくらおじいちゃんになっても恋に落ちちゃうかも」

衣装に目を奪われていた名前が、いつの間にか銀時を見つめふわりと笑っていた。
でも、できれば一緒にゆっくり歳を重ねていきたいよねえ、と独り言のように続け、再び衣装に視線を落とす。

「歳の差があるからこその恋愛っつーのもアリか」
「アンタ名前さんがああ言ったからってコロッと意見変えてんじゃねーよ!」
「けどこれはセリフ多いからナシだな。もう日数ねーんだから短そうなヤツ頼むわ」
「じゃあこれはどうです?」

新八が次に渡したのはシンデレラだった。
銀時は黙って台本をパラパラと流し読みして新八にポイとその台本を返すと「名前ー」と神楽にシンデレラのティアラをつけて遊んでいた名前を呼ぶ。

「はーい、台本決まった?」
「『美しい姫、私とダンスを踊ってくれませんか?』」

王子というよりホストの浮かべるそれに近い笑顔だったが、どうやら銀時は台本にあった演技をしているらしい。
名前も急いで新八が持っている台本を覗き込み、銀時にあわせようとする。

「えと、『はい、王子様』」

差し出された銀時の手の上に、名前がそっと自分の手を乗せる。
神楽が頭からティアラを取り名前の頭に付けた。はにかんだ顔で銀時を見上げる透明で真っ直ぐな名前の瞳に、
「名前、お姫様みたいネ」「名前さんの王子様が目の前に居るからじゃない?」新八と神楽がそう小声で言葉を交わし微笑みあう。

銀時は片手を名前の背に回し、違う手で名前の手をゆるく握ると格好だけダンスを踊っているようなポーズを取る。
神楽と新八は思わず目を見張った。二人が驚くほどサマになっていたからだ。
芝居の上手下手は置いておき、こうして微塵も照れることなく堂々と演技できるのは、銀時がかまっこ倶楽部で女装して歌ったり踊ったりしていたおかげでもあるが、
何より二人共、常日頃誰の前でもイチャイチャしているからというもあるだろう。
二人の世界に入ることなど、何よりも簡単なことだった。

「『貴女はどこの姫君ですか?』」
「『……いけない、12時の鐘が……』」

そう言って逃げようとする名前を、銀時が後ろから「逃がさねえよ」と抱しめる。
台本と違う行動をする銀時に、名前は思わず笑ってしまう。

「銀さん、これじゃあお話が進まないよ」
「いいのいいの、俺が王子だったらこのまま名前ちゃん捕まえて強引に嫁にしちゃうもんね」

新八は「これもナシだな」とシンデレラの台本を投げた。



結局、銀時たちが選んだのは“3年Z組銀髪先生”というよくある教師と生徒の恋愛ものの台本だった。
銀髪先生というのは依頼人の頭が白髪からきているものだろう。
白衣に眼鏡をかけ、口には煙草、とあったが万事屋には誰も煙草を吸うものはいないため、棒付きキャンディーを口に銜えた銀時に、
名前だけが「銀さんかっこいい!」とはしゃぐ。

「銀ちゃんの髪の色も白髪と同じような感じだからこの役にピッタリアルな!」
「でも銀さんはぴったりでも私が生徒役ってちょっと厳しいんじゃ……セーラー服着るんだから神楽ちゃんの方が」
「いやいやいやいや、依頼は夫婦で演技してくれってことだったし、ここは名前だって!」
「そうだったよね、じゃあ頑張る。恥ずかしいけど」

セーラー服着ても笑わないでね、と名前は銀時の腕に自分の腕を絡めるようにして銀時が持つ台本を覗き込んだ。

「『先生ごめんなさい、クラス委員の仕事なのに先生に手伝わせちゃって』」
「『俺が手伝いたかったんだ、気にするな』」
「『外、暗くなってきましたね』」
「『もう少しで終わるなら最後まで片付けよう。心配するな、暗くなっても俺が車で家まで送るから』」
「『い、いいんですか?』」

「本音を言うなら帰したくねーとこだけどな」
「銀さん、本番では台本にないこと言わないで下さいよ」

脱線する銀時に新八がすかさず突っ込む。
そんな二人をよそに名前は瞳を輝かせて台本を全部読んでしまうと、ほうっと甘い吐息をもらした。

「これ、とっても素敵なお話だよね。胸にきゅんときちゃうなあ」
「そうアルか? 猿カニ合戦の方が面白いネ」
「なんでいきなり猿カニ合戦んん!?」

銀時は何気なく台本の最後のページをめくり、そこにあったセリフに思わず笑みを浮かべる。
台本を閉じ、名前の頬に指を滑らせながら、銀時は口を開いた。

「俺と君とは生きてきた場所が違う。けれど、君に惹かれる心はどうしても止められなかった」

台本通りのセリフだが、銀時の瞳の中の光でセリフではなく本心からの言葉だとわかる。
名前の心臓がどくりと跳ねた。
台本を読んだ時以上に胸をときめかせつつ台本に目を落とす。
教師のセリフの後、生徒から教師に口付けでその想いを伝えると書いてあった。
銀時の袖を引き伸び上がると、銀時の頬に自分の唇を押し当てる。
キャンディーをくわえたまま嬉しそうに銀時が微笑み、名前を抱き寄せた。

「……間違えて舞台で名前って呼んじまわねーようにしねーとな」
「たくさん練習しようね、先生」
「なんかいいなソレ。名前ちゃん、今夜布団の中でも先生って呼んでみてくれる?」
「うん銀さん、練習頑張ろうね!」

銀時の下心が全く通じていない名前に、銀時は「おう」と頭をかきながら笑った。





■銀さんと夢主が本気でシンデレラとか白雪姫などなどを演じる
■3Zもので坂田先生と生徒の恋。恋愛に控え目な生徒との関係を、先生が徐々に進展させていくような感じ
■竜宮編でおじいちゃんとなってしまった銀さん

このリクエストで書かせていただきました。
かなり外れてしまっていてすみません!!
楽しくかかせていただきました。リクエストどうもありがとうございました!

2014 5/31 いがぐり



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